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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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そんな話の振り方ある?

一夜明け、朝食もモレッド侯に招かれた。

「おはよう諸君。良く眠れたかね。」

バルはともかく、俺とアーネスの顔を見ればわかるだろうにわざわざ言って来るあたり、からかい半分なんだろうか。

「なかなか寝付けませんでした。

今後の事もありますが、何より三人の顔がちらついて。」

アーネスが正直に話す。

こういうところでカッコつけないのは、ほんと見習わないとだな。

「対人戦闘が初めてともなれば、まあ無理もない。

慣れろとは言わないが、切り替える事も大事にしたまえ。」

これを言う為にわざと言ったのか。

変に勘ぐって悪かったかも。


「さて要望があった荷馬車は既に用意した。

村への馬車の引き取りも指示してあるので、今日位はゆっくりするといい。」

「ありがとうございます。」

俺とアーネスは頭を下げる。

「君達が頭を下げる事でもあるまい。

それに既にドルドーニュ殿から礼を言われたと、報告が来ておる。」

俺達は頭を上げて顔を見合わせると、自然と笑顔になった。

なんでだろ。

直ぐに表情を引き締めたアーネスは、侯爵に向き直り話しかけた。


「実は一つお願いがあるのですが聞いてもらえますか?」

「言ってみたまえ。」

「闇夜の牙の討伐依頼が協会に出てないか確認しに行くのですが、出ていた場合の手続きは侯爵閣下にお願いしたいのです。」

「なるほど、確認作業を待っておられんと言う事か。

ならば協会に委任状がある筈だから持って参れ。

必要な部分を埋めておいて、そのまま部屋に置いて行けば、私の許に来るようにしておこう。」

「お手数おかけします。」

アーネスが頭を下げるとモレッド侯がニヤリと笑った。

「なに、古い荷馬車と替えの車輪で褒美を済まそうとした位だ。

此位はお安い御用と言ったところだ。」

完全に読まれてるな、これ。


「そうか、街に下りるのか。

ならば用意が出来たら部屋で誰か呼ぶといい。

坂の下まで馬車を出そう。

単純に気を使っているのではなく、念の為だ。」

念の為ね。

この街でも襲撃の懸念を、完全には払拭出来ないって事なんだろうな。


協会の会員証とか、何か身分を証明出来る物があれば、通行料さえ払えば誰でも街に入れる。

手配された犯罪者でもない限り。

そもそも余程の、それこそ貴族殺しとか、重犯罪を犯さないと手配すらされない。

アイツの知識にあるような専任の捜査機関なんてものもない。

俺が知らないだけかもしれないけどアイツの知識にあるような、国同士の犯罪者の引き渡し協定とか聞いた事がない。


「質問してもいいですか?」

「何かね、答えられない事もあるが言ってみたまえ。」

せっかくだし、聞いてみよう。

「同盟関係にある国同士の協定で、犯罪者に関わる事柄ってあるんでしょうか。」

モレッド侯の顔が珍しく、少なくとも俺は初めて見る、怪訝そうな物になった。

「どういう事かね。」

「例えば、殺人等の大罪を犯した人物が、他国に逃げたりすると聞いた事があります。

そういった人達を逃亡先の国の貴族が保護する代わりに、汚れ仕事をさせているとかありそうだなって。」

「まあ、よくある話だ。

なるほどそういう事か。

他国の犯罪者を発見した場合、互いに引き渡す協定を結ぶ事でそれを防ぐと言うのだな。

なるほどな、面白い考えだ。

だが、情報の共有がそもそも難しいぞ。」

「そうでしょうか。」

「何か良い案がありそうだな。」

「共有しなくてもいいじゃないですか。

何か問題を起こした身元不明者は魔法で自白させた後、他国の人間とわかったら帰してしまえば。

もう強制的に。」

「そういう取り決めをしておいて、掛かった費用は相手国に請求する訳か。」

「それを匿った者は国内の犯罪者を匿うより、更に重い罰を与え、掛かった費用を徴収するようにすれば、更に効果が出るでしょうね。」

「二重に金を取るのか、辛辣だな。

だが国も多少は潤い、他国とも互いに信を得られ、汚れ仕事する者を減らせる訳だ。

だがそれをしておるのは大抵金と力を持つ者だ、反発も大きいだろう。」

「させればいいじゃないですか。

悪事を働いていると自白するのと同義ですよ。」

モレッド侯がニヤリと笑う。

「私に言うという事は、そうしろと言っておるのだな。

そして今後増える可能性がある、追手に対する対策の一つと言う事か。

だが、それほど効果は期待出来る物ではないぞ。」

この話を振るのに、これほど適任の人もいないと思ったからこうして話した。

だって文人派の筆頭なんだから。


「直ぐに効果無くても、先々の事を考えると、自分にとっても国にとっても、いい方向に向かいそうだなって思っただけです。」

「国同士が関わる問題だから、直ぐに発効出来る協定でもないが。」

「内紛を抱えている国から始めるといいでしょうね。」

「飛び付きそうな国が幾つか浮かぶな。」

またもニヤリと笑うモレッド侯だったが、俺としてはモレッド侯が言うように、単純に追手の人数を抑えたいだけだ。

正直、国の未来なんて二の次だからな。

少なくとも俺は。


「ハロルドから聞いていたが、政務の才にも長けておるようだな。

余り悪辣な事ばかり考えるなよ。

そんな事を思い付いた時は、まず真っ先に私に教えてくれ給え。」

変わらずニヤリとした笑顔のままモレッド侯はそう言うと、お茶のおかわりをしてこの話はどうやら終わりにしたようだ。


呆気に取られた表情で聞いていたバルと、ただお茶を啜っていたアーネスは、同時に俺を見て来た。

「ジェス、今の話だけど犯罪者ってそもそも調べてくれないじゃない。

何か、う〜ん、領とか国の治安とか、税金絡みの話じゃないと。」

それはそう。


「そんなに効果ある?」

「やり方次第じゃないかな。」

「どういう事さ。」

「いざこざに警備隊が対応する事はあるだろ?

酒場での大きな喧嘩とかさ。」

「たまにあるね、そう言うの。」

「領民同士のいざこざは別にして、流れ者とかには魔法で自白させるようにするだけで、多少効果は出るんじゃないかな。

訓練された騎士とかは、そもそも問題を起こさないように指導されてるハズだから、間者に対する対策としてはそれほどでも、金で雇われただけの荒くれとかには良さそうだろ。」

「ああ、それはそうかも。」

「細かい運用まで考えておったのか。

多少力がある貴族家ならば、直ぐに出来る内容だな。」

「怖いのは虚偽の密告なんですけどね、悪意ある物も、そうでない物も。

増え過ぎると警備隊の仕事を圧迫する事になるでしょうし。」

「逆手に取る事も出来るから、悪い事ばかりでもない。」

ああ、バーゼル伯と同じかそれ以上に怖い人だな、このモレッド侯という人は。


「お前さ、今のってほとんど思い付きで喋ってたよな?

この前の盗賊騎士の話とかもそうだったが、よくそんなのポンと出んな。」

呆れ顔のバルは頭をワシワシしながらそう言った。

アイツの知識を「閲覧」に近い形で引っ張ってこれるのは、強みだよな。

まあ自分の事なんだけど。

「私には知っている事を話しているように聞こえたがね。」

妖しげな感じで、目を細めて見てくるモレッド侯が恐ろしい。

この短い時間である程度、見透かされているような気までする。

流石にアイツの知識の事までは、知りようがないけれど。


この後は普通の雑談に近い感じで、食後のお茶を終えた。

明後日には乗る予定の川を利用した船の話になると、アーネスの顔がキラキラになったりしたけど、それはまあ何時もの事なので、苦笑いにはなったけどスルーしておいた。

聞くとこの国最大最長の川、リーザ川には馬車も乗り込める規模の帆船が行き来していると言う。

遡上する時は左右の漕ぎ手に依って人力も使い川を上るのだとか。

アーネスがキラキラになるのも仕方ない話だ。

実際、俺も少しワクワクしていたから。


その後、俺達は用意された馬車に揺られ街に出た。

ディディも一緒だった。

何なら一番準備に時間をかけていたのは、彼女だったりした。

あえて何も言うまい。


昨夜も見た街並みは、やっぱり活気がある。

ただ少しなんて言うか、ヒソヒソと固まって話す人が多いように見えた。

「一晩経って、村の話が広まってるな。」

バルの呟きで納得した。

流言飛語を流すとかするヤツが出ないといいけど。


そんな街の雰囲気を感じながら、取り敢えず協会を目指した。

着いて中に入ると、昼前という時間もあって閑散としていた。

それでも何人かいるのは、休日に依頼の張り出しを見に来た人だろう。

俺達が声を掛けた受け付けの男性職員さんは、バルの事を知っていた。

「去年、何度かいらしてましたね。

ようこそバルガスさま、今日は何か受けて行かれるので?」

そう聞いて来られて、バルは首を振った。

「部屋を貸してくれ。

支部長がいるならついでに呼んで欲しい。」

そう言った後、俺達には適当に時間を潰すように告げて、その職員さんと二階に上がって行った。


「適当って言われても困るよね。

取り敢えず何か買い食いでもする?」

アーネスがそんな事を言い出して、俺達は街の大きな通りに出てみる事にした。

夕べも思ったが、全体にバーゼル伯領より背の高い建物が多い。

使われている色も多いように思う。

侯爵領でこんな感じなら、王都はどんな街並みなんだろう。


それほどお腹は空いていないので、果汁水を売っている屋台で飲み物を買い、噴水がある広場を見つけたのでそこのベンチに腰掛けて飲んだ。

「これ、前にバーゼル伯に飲ませてもらったミーナ水だ。

ちょっと微温いけど美味しいね。」

笑顔でそんな事を言うアーネスに釣られて、ディディも笑顔になっている。


「ジードさんって徒手格闘の達人なんでしょ?

武器とか使ったりしないのかな?」

唐突にそんな事を言い出したアーネスに、ディディはちょっと頬を染めて教えてくれた。

「ジード様は刃が付いていない武器にも長けていると聞き及んでおります。

中でも棒術は屈指の腕とか。

他にも両手に短い棒状の武器を持って戦う事もあると聞いています。」


両手に短い棒状の武器?

なんだろう。

アイツの知識の(サイ)とかだろうか。

両手で行うナイフコンバットに近い感じだけど、動きが多彩で攻防に優れているイメージがある。

アイツの国の徒手格闘の流派で使われているらしいけど、突く、打つ、払うに蹴りを絡めたり、防御の型も多彩でバランスがいい武器って感じだ。

流石に同じ物ではなさそうだけど。


「でもジードさんがモテるのもなんとなくわかるよ。雰囲気が、もうカッコいいよね。」

だからどうした急に。

「ディディもジードさんの事、イイと思ってるんでしょ?」

おいおい、突っ込むっていうか、それはもう突撃って感じだぞ。

ディディは耳まで真っ赤になってる。


「でもさ~、俺はディディとジェスって、凄くお似合いだと思ってたから残念だよ〜。」


ん?

今なんて?

エピソード終わりに唐突にぶっ込んで来たアーネス(笑)

もちろんキャラの暴走です


今回はジェスも暴走してくれて、話が進みませんでした(汗)

協定の話はカットしてやろうかと思いましたが、モレッド侯の人物像を強めてくれた側面もあるので、残す事にした次第であります(滝汗)


最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます

モチベにつながるので、ブックマークを是非お願いします

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「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


次回 恩返しは飯で返す、ちょっとだけ

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