表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/107

モレッド侯

紅月城。

その小高い岩山の上に建てられた城は、満月の次の日の月灯りに照らされた様子が最も美しい、と言われている。

そう教えてくれたのはジードさんだった。


「石組みに使われた物が、全体に赤っぽい事から紅月城と名付けられたのじゃ。

屋根が赤いのは、実は名付けられてから改修されたのじゃよ。」

そう言っているが、教えている相手は俺ではなくディディだ。

「はい、存じております。

一度だけですがこちらの城下まで来た事があります。

その折に同行しておりました母が教えてくれました。」

ちょっと頬を染めたディディがそう答える。

ジードさんはモレッド侯領都の門を潜るまで、バルと轡を並べて真剣な表情で何やら話していた。

市街地に入ると列を下がり、俺とアーネスの、って言うかディディとカレンさんの間にすっぽり挟まった。

でだ、俺達には目もくれず、女性二人に街を案内し始めた。

いや、俺達も街の情報が入るからいいけども。


わかってないのか何なのか、アーネスはキラキラしながらジードさんの話に頷いている。

人の恋路を邪魔すると馬に蹴られて死ぬって、アイツの知識にあるから放っておく。

けどさ。

二人同時に粉を掛けて、何故に二人ともポッてなんのよ、ポッて。


白髪頭をビチっと撫で付け、生え際の一房だけ黒い。

後ろは結んで尻尾のように背中に垂れている。

口髭や顎髭も綺麗に整えられていて、目尻の皺さえもなんかカッコ良く見える涼しげな目許。

その顔に染みなんて無い。

当然、覗いている袖口の肌にも老人特有の皺なんて無く張りがある。


ジードさんが幾つかは知らない。

だけど何故この年齢差で、ここまでモテる?

コレが大人の色気ってヤツか?

そうなのか?


ちょっと混乱しながら振り返ると、一人だけ構ってもらえてないからか、トゥーレが少し膨れてた。

何でよ!?

何これ!?

戦争なの?

戦争が起きちゃったりするのか!?

女同士の!?

理解出来なさ過ぎて、寧ろなんだか可笑しくなって来た。


「ん?何?なんか笑ってない?ジェスター君?」

小刻みに揺れて笑いを堪えていたのに気付いたのか、カレンさんが怪訝そうに聞いてきた。

必死になって笑いを押し殺し、

「何でもないです。

本当に、何でもないんです。」

と答えたが、アーネスもディディも怪訝そうな顔をしていた。

一人、ジードさんだけは俺しか見ていないとわかっているのか、目を合わせるとニヤリとした。

何だ、その悪っそうな顔は。


バーゼル伯の領都より栄えた雰囲気の街並みで、全体的に建物も少し背が高い。

日が落ち、すっかり暗くなったとはいえ、通りに人が多い。

バルとドルドーニュさんが先導していなかったら、何人か撥ねてるんじゃないの、今の状況。

「あの人が多いんで、前、前を見て、怖いですよ。」

慌てた風にそう言うと、皆して首を傾げながらも前を向いてくれた。


通った門の方から見ると岩山の崖の上に建っているように見えた紅月城は、反対に回ると丘の上に建つ城だった。

こちら側は城壁が二重になっていて、手前の城壁に設けられた大きな城門まで、ウネウネと曲がる道が続いていた。

緩やかな斜面に斜めに建てられているようで、こちら側から見た石組みの方が見た目でわかる位には高くなっている。

その石組みの上の城壁は青み掛かった白い塗壁で、月灯りに照らされ、まるでぼんやりと浮き上がるように見えた。

屋根はオレンジに近い赤で、アイツの知識で言うならバーミリオンが一番近い色かもしれない。

何本も塔が立ち、その屋根も全て同じ色だが先端には金色の飾りがあしらわれていて、それも月灯りに映えていた。

遠目にもわかるが開門され、その両脇に篝火が炊かれている。

そこに向かってゆっくりと、俺達は坂道を登って行った。


到着するとドルドーニュさんが誰何に答え、馬車ではない事を更に問われたが、ジードさんがいた事で事情を察せられて問題無く通された。

馬を預かられ、内心ちょっと名残り惜しくはあったが、カレンさんの背中から離れた。

女性の後ろに乗せられてるっていう恥ずかしさは、街に入った時点で諦めていたけど。

モレッド侯麾下の騎士に先導される形で、俺とアーネス、バルとジードさんは城内に通された。

マローダさんも一緒かと思ったけど、ドルドーニュさん達と一緒に別の騎士に先導されて、何処かに案内されて行った。

不安になりかけたけど、ここでモレッド侯が何か仕掛けて来るとは思えない。

実は敵だったとかなら、村の時点で騎士団に囲まれていただろうから。


蒼槍城とは違い、ここは城壁と一体になった城館になっていた。

そして、いかにもな感じの煌びやかな回廊を通り、豪奢な造りのドアの前まで来たところで、案内役の騎士さんが足を止めた。

「こちらでモレッド侯がお待ちになられております。

お休み頂く部屋へは、面談の後で別の使用人が案内いたしますので。

では。」

案内してくれた騎士さんはそう言うと、ノックをして中へと告げた。

「バルガス・バルドール殿、ジード・グルード殿、並びにアーネストリー・トルレイシア殿、ジェスター・トルレイシア殿、お連れいたしました。」

「通せ。」

内から開かれたドアを、案内してくれた騎士さんに一礼の後に手で示され、俺達だけが通る。

左右に控えていた真っ白なエプロン姿の女性達に、一人づつ案内される。


室内は一言で言えば豪華。

クリスタルが輝くシャンデリア、金色の燭台、長いテーブルと上に敷かれた真っ白なクロス。

その縁は細かなレースになっている。

ジードさんは左に、バルに続く形で右に案内され、椅子を引かれてちょっと恐縮しながら座る。

場の雰囲気に当てられて、少し緊張していた。


「よく来てくれた。

私が当家の主、適当にジジイとでも呼んでくれ給え。」

皮肉っぽく口元を歪めた笑顔のその人は、多分だけどバーゼル伯より幾分歳上。

柔らかそうな金色の髪に、前髪の一房がメッシュのように白髪になっている。

それをフワリと左右分け、口元や言葉とは裏腹に鋭い目つきをしていた。

細身で目元の印象からか、雰囲気がなんだか全体に鋭い。


「変わらないですね、モレッド侯。」

「そうか?その方が来た去年よりは老けたぞ。」

「いやそっちじゃ無くて。

若いヤツらがビビってるんで、侯のその言い方に。」

バルと侯のやりとりは、むしろこっちの緊張が増すからやめて欲しい。


「それは済まないね。

改めて私が当家の主、カーリアン・キュイド・モレッドだ。

まあ、くつろぎ給え。」

貴族がフルネームを名乗るのは珍しいと聞いている。

余程の上客か、さっさと帰らせたい相手かのどちらかだと言うが。

さて、これはどっちだ?


バルに目配せされたアーネスが、ちょっと慌てたように名乗る。

「アーネストリー・トルレイシアです。」

「アーネストリーか、良い名だ。

そして緊張しているようだが良い目をしている。

そちらは?」

「ジェスター・トルレイシアと言います。」

「ほう、君は彼程には緊張はしておらぬのだな。

まあ良い。

食事をしながら話そうではないか。」

モレッド侯の言葉の後で、タイミングを計っていたのかのように、次々と食事が運ばれて来た。

どれも盛り付けからして美味そうだ。

気になるのはモレッド侯の前に用意されない事だけど。

「私は今減量中でね、さあ食べてくれ。」

細身なのにダイエットしてるのか。

「そう言う冗談はこの二人に通じんぞ、モレッド侯。」

ジードさんの言葉の後も皮肉そうな笑みを崩さず、テーブルを指で二度トントンと叩くと、モレッド侯にも食事が出された。

いや、わからん。

貴族の冗談、本当にわからない。

アーネスもほぼ素になってあんぐりしてる。

「お主達も、早く慣れた方がよいぞ。」

そう言ったジードさんと、バルが料理に手を付けたのを見て、俺達もナイフに手を伸ばした。


「食べながら聞いてくれ。

二人の事はハロルドから聞いている。

通達は出しておく故、我領内の通行は自由にして構わない。」

ハロルドって誰だ?

話の流れ的にバーゼル伯の事か?

「それと、今日は随分と大変だったようだ。

まだ詳しい報告が上がって来ておらんが、領の代表として礼を言う。」

話を区切ったモレッド侯は全員の顔を見回して、何やら頷いた。

「褒美は何がいい。地位か、領地かね。」

アーネスがむせる。

吹き出しこそしなかったが、涙目になっていた。


「だから、そういう冗談は無しで。」

バルはさらりと流している。

「相変わらずつまらん男よの。

して実際、何が良いのだ。」

「古いのでいいから、荷馬車を。

あと、村に置いて来た馬車の車輪。」

「ふむ、そう言う腹か。

いいだろう。

まあ、理解はした。

しかしな、わかって言ったのだろうが、下の物にも示しが付かんし、領民にも聞こえが悪い。

それとは別に金子を取らす。」

深く溜息を吐いたバルにヒヤリとしたが、モレッド侯の表情は変わらない。

「わかった。

それなら七三にしてくれ。

三は三等分にして俺達に。」

「いいだろう。

しかし随分と謙虚ではないか、その方らしくもない。」

ナイフを置き、頭を一頻り掻いてから、また溜息を吐いた。

「アイツらに犠牲が出たからな。

そのうちの一人でまだ見習いだったヤツは、目の前で殺られたよ。

ヤツらが受け取る時に、金額が多いとか言ったら、モレッド侯からの見舞い金って事にしてくれ。」

「それは出来んな。

他人の名を語って見舞いを出すなど、語られた方も迷惑よ。

それにそれでは私からの見舞いが出せんではないか。」

確かにモレッド侯の言う通りだ。

「どうせ格好付けるなら、堂々と格好付けた方がいい。

その方が見ている側も気持ちがいいものだ。」

「わかった、取り分はそのままでいい。

見舞い金代わりに取り分を多くした事は俺から伝える。

お前達もそれでいいか?」

「元々無いハズのお金の話だから、どうでもいいよ。

それに勝手に使い込まれたとかなら腹も立つかもだけど、見舞い金って使い方なら、文句を言ったこっちが悪者みたいでやだよ。」

そう言ってニカッと笑うアーネスに、バルも少し目を細めた。

俺もヤレヤレといった感じで首を振る。

モレッド侯も目を細めてはいたけど、何やら含みがありそうだ。

不思議と嫌な感じはしなかった。

漠然とだが、そんな気がした。

今回の次回予告から確定していない時は(予定)を付ける事にしました

感の良い方は直ぐに気付いたと思いますが、只今絶讃ストック切れです

(^_^;)


最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます

モチベにつながるので、ブックマークを是非お願いします

感想を、こうポチッと評価やイイネで表して頂けたら幸いです


「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


次回 紅月城の一夜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ