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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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拳王

三人の遺骨は、ディディが土魔法で創り出した飾りも何も無い小箱に、それぞれ遺髪と共に納められた。


俺達の世界では、遺髪は頭皮ごと削り取る。

皮の部分を炙って乾燥させ、腐ったりしないように、バラけてしまわないようにする。

汚れてしまわぬよう皮の袋に二重に入れられ、小箱に納められた後、虫が湧いたりしないよう、小箱の上から更に土魔法でしっかりと密封された。


俺達がそうするかはわからない。

けれどちゃんと故郷に送り届けてあげたい。

辺りに残る肉や髪が焼けた匂いを感じながら、そう強く思った。


「挨拶がまだじゃったな。

儂の名はジード・グルード、呼び名は好きにしてええ。」

二人の遺骨を小箱に納めた後で、ジードさんが柔らかな笑顔を浮かべ名乗ってくれた。

バルは鼻を鳴らしただけだったけど、それぞれに名乗った。

騎士さん達は、恐縮しきりな感じだったのが流石だなと思った。


ディディはなんだか、もじもじしながらの挨拶だった。

あれ、マジでやられちゃったのか?

年の差、酷くない?

ジードさんが一瞬ニヤリとしたのを見逃さなかった。

これ、もう獲物認定されてない?

今のこの状況で?

カレンさんも挨拶の後、ずっと目で追っている。

マジでモテるんだな。

なんだろう、この無駄な敗北感。

アーネスはアーネスでちょっとキラキラし始めた。

立ち直りが早くて羨ましい。

ただ単純に忘れたいだけなのかもしれないけれど。

こんな時は、この忘れられない質が恨めしい。


なんだかんだで日が傾き掛けた頃、駆け付けた騎士さん達も村の確認を終えたようだ。

その頃には俺達も今後の事で頭を悩ませていた。

荷馬車が使えないのが大きな問題だった。

それに馬に荷物を括り付けたり、馬車の屋根に荷物を載せたとしても、今度は馬が一頭余る。

トゥーレの状態次第では二頭。

マローダさんも馬には乗れるらしいけど、万が一また何か起きた時に外に居ては、事故になり兼ねない。

「爺さんが来てくれれば、馬は空かないけど、最悪、馬車に繋いで引いて行くしかないかもな。その馬に荷物を多く積む感じで。」

結局、バルの提案に全員が賛同した。

目覚めたトゥーレも含めて。


トゥーレは目覚めてから、自分を除け者にして三人を火葬にしたと、皆を激しく責めた。

カレンさんには特に強く当たったが、カレンさんが暴れようとする彼女を抱きしめ、何かを耳元で囁いた後で静かに涙を流しながら何度も頷いていた。

しばらくして、彼女は自分の涙を拭って全員に謝罪した。

「行き過ぎた言葉を吐いてすみませんでした。」

と言い、頭を下げた。

当然、誰も咎める事はなかった。

三人の遺髪と骨が納められた小箱を見せられても、そっと一撫でして、

「帰ろうね。」

と言葉を掛けただけで、その後はもう普通に振る舞っていた。

強い、そう思った。


結局、馬車の中に俺とアーネス、マローダさんの三人が乗る事になった。

結構空きスペースが出るから、中にも荷物を積むことにした。

それでも八人分の荷物を積むには難がある。

鞍を付けただけの馬にバルが乗り、トゥーレが御者を務める事にもなった。


それはトゥーレの提案だった。

予備の水や薪等はとりあえず、諦める事にした。

壊れた馬車は後方の車輪一つが、駄目になっていたがバルとアーネスと俺の三人が後ろを持ち上げて、馬に引かせて門まで運んだ。

この日はこちらの詰め所脇に置かせてもらい、翌日取りに戻る事に決めた。

モレッド侯領の領都まで行き、車輪だけを購入してまた戻る。

もし、予算が取れるなら荷馬車も買う事にしようとしたが、それにはバルから意見が出た。


「なあ、その辺は心配しなくていいんじゃねえか。」

「どういう事だ。」

バルの言葉にドルドーニュさんが質問を返した。

「俺達も派手に殺して回ったから、頭数に応じて報酬出るだろ?

普通。」

「いや、お前達はそれでいいかもしれんが、我々が受け取る訳にはいかん。」

「お前ら騎士の分はバーゼル伯を通じて受け取るように話を持って行けよ。

俺だって他所の貴族から直接貰えないって事位は分かるさ。

魔物の討伐とかもそうしてるんだろ?」

それにはドルドーニュさんも頷いた。

「それはそうだ。

だが心配無いとはどういう事だ?」

「だから。

俺等が貰う報酬もそれなりだろうよ。

そこで荷馬車をくれって言えばくれるだろう?

普通は。」

「それでいいのか?」

「よくねえよ。

だから旅の終わりでバーゼル伯かウォルコット卿に買い取ってもらって、精算すんだよ。

こないだの宿で払った金の事もあるしな。」

「なるほど、それは確かに良い考えだと思う。

ここでは確約出来んがな。」

「んなこたあ、わかってるよ。

こいつ等の報酬も含めて荷馬車の補填をすんだから、嫌とは流石に言わないだろう?」

「確かに。」

なるほどね。

俺達の機嫌を損ねてバーゼル伯の敵対陣営に付かれても困るという事か。

まあ、その程度の事で故郷に反旗を翻すほど短気でも、短慮でもないけどな、俺達。


「それに、闇夜の牙ともなればそれなりの金になりそうだからな。」

「それもわからん。

討伐依頼が何処かから出ているなら、協会が払うだろうが、下手したら出ていない可能性もあるぞ。

対象を絞れてなかったからな。」

ああ、「闇夜の牙を討て」という依頼自体が無い可能性もあるのか。

所在や被害がはっきりしてなくて、一部でそう呼ばれているだけって事もあるのかもしれない。

「下手をすれば、モレッド侯から幾ばくかの金子が出て、後は名誉のみって事もあるかもしれんぞ。」

ドルドーニュさんの話にバルが顔を顰める。

「モレッド侯の領都にも協会はあるでしょ?

着いたら確認してみれば?」

アーネスが当たり前の提案をする。

ただ俺もそこを考えてなかった。

言われてみれば、確かにそうだよな。


「確認作業とかで時間が取られるぞ。

そんなに悠長には出来ないぜ。」

「いや、依頼の有無だけは確認しようよ。

報酬の受け取りは王都でも出来るでしょ?

ならそれだけしておいて、モレッド侯の方から報告を入れる形にしてもらえばいいじゃない。」

なるほどね。

それならこっちで時間を取られる事もない。

ただ。

「あんまり貴族の手を煩わせると、お前らの縛りがますますキツくなるけどいいのかよ。」

それなんだよな。

アーネスは理解してないのかキョトンとしている。


「なんだよ、わかってなかったのかよ。」

「いや、今回は五分以上でこっちが恩を売れるんじゃないの?」

「はぁっ?」

「はっ?」

俺とバルが今度は驚く番だった。

「こっちは犠牲を出してまで、盗賊の襲撃から村を守ったんだから、向こうは頭を下げる側でしょ。

それに金とかじゃなくて手持ちの中から荷馬車を貰うんだから、それほど向こうも痛手じゃないし、何なら古いヤツでいいって言えば済むでしょ?

村の被害が大きいからってこっちが遠慮した形にしたら、ますます恩を売れるしさ?

その代わり協会の手続きをやって貰う事にすれば、別にこっちは何も痛まないでしょ?」

アーネス、マジか。

悪どいとまでは言わないけど、なかなか上手い手だ。


「アーネストリーの言う通りだな。

それなら特に問題無く話が済みそうだ。」

「貴族は面子を重く見るから、それで済むとは思えないけどな。」

「向こうが勝手に積荷まで用意してくれる分には、もらっておこうよ。

それをこっちが恩と感じるかどうかは別の話じゃない。」

それはちょっと辛辣だな。

でもまあ、それもそうなんだよな。


「なかなか利発そうな若者じゃな。

話は終わったのかのう?」

いつの間にかバルの後にジードさんがいて、こちらに声を掛けて来た。

全く、それこそ声を掛けられるまで、そこにいる事に気付かなかった。

「驚かすなよ、爺さん。」

「なんの事やら。

それよりそろそろ出んと日が暮れてしまうぞい。

モレッド侯と会うんじゃろう?」

「ああ、もう準備は出来てる。爺さんは残るのか?」

「いや、儂もそろそろ領都に戻るぞ。

出発の前に声を掛けておこうとしただけじゃ。」

「ジードさん、王都まで一緒に来てもらえませんか?」

アーネスが突然、頭を下げてそう言った。

「そうさのう、取り敢えずお主達が出立するまで考えさせておくれ。

断る口実じゃないぞ?

儂にも色々あるんじゃよ、色々とな。」

「どうせ女の事だろ。」

「無粋な事を言うでないわ。

そんなんじゃから兄貴に惚れた女を持って行かれるんじゃ。」

「ちょ、何でそんな事知ってんだよ。」

「ハッハッハッ。

そっちに関して儂は鼻が効くからのう。

何、冗談じゃよ。

ちょっとお主の親父殿と酒を飲む機会があっただけじゃ。」

「クソ親父、余計な事を言いやがって。」

バルが頭をワシワシと掻き、それを笑いながらジードさんは見ていた。

ふうん、そんな事あったんだ、バルにも。

そんなやり取りを、ていうかジードさんを見て、女性陣はうっとりしている。

うっとりする要素、今の会話にあったか?

なんだ、コレ。


俺達の馬の練習なんてこの状況で言ってられる訳もない。

モレッド侯領都に向かうため、俺はカレンさんの後ろ、アーネスがディディの後ろに乗り、出発した。

後ろから抱き付くようにして乗っているので、アーネスは顔真っ赤。

俺もちょっとドキドキした。

「汗臭いと思うけどごめんね。」

そう言って苦笑いを浮かべるカレンさんだったけど、そんな事は気にならないほどに緊張した。


バルとドルドーニュさんの後ろには、別の馬が繋いである。

常歩で、カポカポと蹄の音を立てて街道を進む。

バルと馬首を並べるジードさんは時折、馬上で会話をしていたが、何を話しているかは聞こえなかった。

どちらも真剣な表情なので真面目な話だと思う。

日も落ちて暗くなった頃、ようやくモレッド侯領都の門に辿り着いた。


酷く長い一日だった。

でもまだモレッド侯の城に入ってからも何かあったりしそうで、ちょっとだけ憂鬱になった。

最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます

モチベにつながるので、ブックマークを是非お願いします

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「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


次回 モレッド侯

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