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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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向けられたモノ、向けたモノ

−注意−

引き続き流血シーンが続きます


「おい、楽しそうだな!俺も混ぜろや!」

前を走っていたバルが、デカい声で言ってから速度を落とした。


少しして追い付いた俺達が目にした光景。


額からダラダラと血を滴らせ、片膝を付いたターナーさん。

ターナーさんを取り囲み嬲っている五人の男。

背後から喉元にダガーを突き付けられ、それでもなお叫ぶトゥーレ。

その横に立つ、血がこびり付いた巨大な斧を持つ男。

その前で肩を斬り裂かれ、蹲るコーツ。

壊れた屋台の壁に背を預け、ニヤニヤと笑う痩せぎすの男。


「リック!イヤ、イヤァァァ!リック、起きて、リック!」

彼女の視線の先には、リックだった「物」が転がっていた。

瞳はそれぞれ明後日を向き、泥と血で汚れた表情は、状況がわからないのか、キョトンとしているように見えた。


死んでいるのは一目瞭然だ。

その頭は体から少し離れた所に、転がっているのだから。


意味を成さない叫びに変わったトゥーレの足元で、コーツが四つん這いになり、起き上がろうと腕に力を込める。

その頭に男の巨大な斧が振り下ろされた。

咄嗟に礫弾を放ち、その男の頭部を四散させる。

飛び散る血と脳漿がトゥーレの顔を汚す。

「ヒィッ!」

と短い悲鳴を上げたトゥーレだったが、足元のコーツを見て比にならない叫びを上げた。


「イヤァァァ!コーツ、コーツゥゥゥ!イヤァ、イヤァァァ!」

男の手を離れた斧は、地面に斜めに突き立っていた。

コーツの頭を、耳から上で切り離して。

叫び続ける彼女の股間に滲みが拡がり、足元を濡らした。


ニヤけた顔のまま、壁に背中を預けた男が言う。

「あぁ?なかなかやるな、ガキ。

おう、そこのデカいの。

後ろの二人を殺してこっちに付けよ。

恩寵持ちのバルガスさんよ。

そしたら、この二人は生かしてやってもイイぜ。」

「寝言は寝て言え、カスが!

さっきも広場で言って来たけどよ、テメェ等がソイツ等を殺せば、俺達も雑魚共を心置きなくぶっ殺せるだろうが!

勘違いしてんじゃねえよ、阿呆!

人質取って悦に入ってる所悪いんだけどよ、追い詰められてるのは、テメェ等なんだよ、馬鹿が!」


バルが言い終える前に、アーネスが動いた。

「ウォォォォア!」

叫びながら一瞬にして距離を詰め、ターナーさんを囲む輪の中に飛び込む。

一振りで正面の男の首を斬り裂き、返しで隣の男の武器を持った右手を、手首から斬り落とした。


アーネスが動くのとほぼ同時。


呆気にとられた顔でトゥーレにダガーを突き付けているヤツの眉間を、俺は正確に礫弾で射抜いた。

飛び散るものがトゥーレの顔をまた少し汚し、男が手にしていたダガーが彼女の頬に小さな傷を作った。

俺は魔術を放つと同時にアーネスの隣へと飛び込む。

アーネスの背中に剣を振り下ろそうとしていたヤツの両腕を、まとめて薙ぎ払い、加減無く蹴り飛ばした。


俺の意識の端で、解放されたトゥーレはズルズルと這うように切断されたコーツの頭に近付き、胸元に抱きかかえた。

そのまま、ぎこちない動きで今度はリックの首に四つん這いで向かう。


間を置かずバルも敵の中に飛び込み、槍を振るう。

アーネスに手首を落とされたヤツの喉を一突きで貫き、返す手で別のヤツの頭を飛ばした。


「派手に殺すじゃねえか。

お前らもまとめて死ねよ。」

ニヤけたままの男が言いながら、特大の火球を放った。

アーネスは見もせずに倍のサイズの水球を放つ。

「何人殺した?何人殺せば気が済む?」

底冷えする様な、絞り出したその声は怒りで震えながら、冷たく、重く、暗い。

俺はアーネスのそんな声は聞いた事が無い。


男が放った火球を相殺してもなお衰えない水球は、屋台に男をめり込ませる。

元々壊れ掛けの屋台は、バラバラに砕け崩れ落ちた。


俺はその男の息がある事にただ驚いた。

そいつは崩れた屋台の破片の中から体を起こし、立とうともがいている。

剣に付いた血を一振りして払い、ダラリと下げたまま、アーネスは男に足を向けた。

苦痛と恐怖に顔を歪め、尻を付いたまま後退る男は、瓦礫の上でアーネスに向け次々に火球を放つ。

アーネスは避ける素振りすら見せなかった。

もろに直撃を受け、全身が炎に包まれる。

思わずギョッとしたが、アーネスの足は止まらない。


「これがどうした。

リックの痛みはこんなもんじゃない。

コーツの痛みはこんなもんじゃない。

殺された村の人達の痛みだって、こんなもんじゃない!」

アーネスの叫びにも似た怒号と同時に、その身を包んでいた炎が霧散した。


「化け物か!来るな、来るな!クガァ?!」

アーネスが剣を振り上げ、駆け出そうと足に力を込めた瞬間。

恐怖から叫びを上げた男の体を槍が貫き、地面に縫い付けた。

アーネスの肩越しから、バルが無造作に投げた槍だった。

「そんなカス、お前が止めを刺す価値も無い。」

バルが肩を掴み後ろに引くと、アーネスはヨロヨロと尻餅をつき、そのままガックリと首を垂れた。


バルは、口から血の泡を吹き、力無く槍を抜こうとする男に足を掛けると、おもむろに引き抜いた。

直後にゴボリと血を吐いた男は、もう動く事は無かった。

俺に両腕を落とされ、足元で呻きながらグネグネとしていたヤツの喉を、戻ったバルが見もせずに踏み付け、ゴキリと音を響かせ砕いた。


直後。


門を塞いでいた、俺達の荷馬車が吹き飛び、粉々に砕けた。

俺は咄嗟に二人の欠片を抱いて蹲るトゥーレに駆け寄った。

飛び散る破片から、背中と盾で彼女を守る。

バネ仕掛けのようにアーネスが立ち上がり、剣を構える。

その表情は無だった。


「そこのヤツら、武器を捨てろ!これはいったい何事か!」

そう怒鳴ったのは先頭の大男だ。

騎乗したまま駆け込んで来た鎧姿の男達。

その手には、抜き身の剣がある。

俺達を見るなり、切っ先を向けてきた。

複数の蹄の音が広場の方からも響いて来る。

すぐにそちらからも同じ鎧の男達が現れ、馬上から睨み付けてきた。

恐らくモレッド侯麾下の騎士。

合わせて十五騎。


ジリジリとした睨み合い。

そこに門から徒歩で、やけにダンディと言うか、イケオジと言うか、イケジジと言うか。

とにかくやたらとカッコイイ顔の老人が現れた。

「久しいの、バル。

何やっておるんじゃ、こんなとこで?」

身構えていたバルがおもむろに槍を捨てた。

「遅えよ、爺さん。」

「馬を潰す勢いで来たんじゃよ、これでも。」

両手を上げて言葉を返したバルの顔はうんざりしている。

それに応じた老人の顔も同じようなうんざり顔だ。

その二人を、大男が忙しなく交互に見る。


「ジード殿、知り合いか?」

「ヤレヤレ、お主も一度は仕合ったじゃろうが。

ボロカスにされとったがのう。

バルガスじゃよ。」

「何?バルガス殿だと!?」

慌てたようにバルを見たその人は、驚いた表情になるとすぐに今度は怒りを露にして、再び切っ先をバルに向けた。


「バルガス殿、これはどういう事か!

何故、貴殿が我等の領でこのような無法を働くか!」

呆れた顔のバルは上げた手をヒラヒラさせると、

「変わんねえな、ポールよ。

周りをよく見ろよ。

俺達はここが襲われてるのに気付いて、助けに入ったんだっつうの。

返り血でわかれ。」

と溜息を吐きながらいった。

「むっ。

そうだったのか、これは失礼した。」

「ポール殿、ここは儂に任せて、村の中に残った賊を始末なされ。

一班だけ残してくれればそれでええ。」

「了解した。

一班、ここに残りジード殿を手伝って怪我人の手当と周囲の警戒を。

二班は村長の家の方から広場へ、理解したら行け!

三班は私と共に逆から回るぞ、続け!」

「その一班じゃないわい。

まあええ。

どれお嬢さん、その子達を離しておやり。

あんまりきつく抱きしめると、その子達も苦しいじゃろうて。」

俺のすぐ横に来て、トゥーレの肩に手を置いたジードさんは声も表情も優しげに、そう声を掛けた。


まるでイヤイヤをする幼い子供のように首を振ったトゥーレを、血で汚れるのも構わずにジードさんはそっと抱きしめた。

抱きしめられた彼女から淡く光が放たれると、クタリと力が抜けてジードさんの胸に、体を預けるようにして意識を失った。


「彼女に何をしたんです?」

アーネスが静かにも聞こえる声音で問い掛け、剣を向けた。

「安心せい、眠らせただけじゃ。

このままにしておけんじゃろう?

彼女も、この子らも。」

そう言ってから近くの騎士に目配せすると、そっと彼女を渡す。

意識を失ってなお離さないトゥーレから、ジードさんはコーツとリックの一部を引き取った。

彼女を抱いた騎士は半ば崩れ掛けた詰め所に向かい、中へと消えていった。


「どうするかね?ここに埋葬するか?

それとも荼毘に付して遺骨を連れ帰るか。」

「爺さん、それはコイツ等の護衛のヤツに聞いてくれ。

俺達が決めていい事じゃねえ。」

無表情のまま、バルはぶっきらぼうに答えた。

「そうじゃな、そうするとしよう。」

そう言うとジードさんは、転がされたままの二人の遺体に近寄って傷口を合わせ、こちらには聞こえないほど小声で何かの詠唱をした。

少し期待してしまったが、息を吹き返す事は無く、切り離された体が元に戻っただけだった。

アーネスが膝から崩れる。

同時に声を上げて泣き始めた。


馬鹿野郎。

俺だって泣きたい。

リックとは短い間だったけど、魔法を教えてもらったり、一緒にテントを張ったり、料理をしたり………。

コーツの声は最後まで聞けなかった。

でも、呼び捨てにしていいと、頷いてくれた時の事は覚えてるんだ。

覚えて………。

クソが。

先に泣かれたら、泣けねえじゃないか。


おもむろに袖を引き千切り、剣に付いた血を拭い取る。

剣を鞘に納めると、泣き続けるアーネスの頭を後ろから抱えた。

「ジェスっ。

俺、強くなるよ。

もう誰も死なせない位、強くなる。

強く、ウゥ、ウワァァァァァ!ウワァァァァァ!」

アーネスは俺にしがみつき、声の限りに泣いた。

余りにも、聞いているだけでも辛いその声を聞いて、ようやく俺も涙が溢れた。

最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます

モチベにつながるので、ブックマークを是非お願いします

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「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


次回 立ち昇る煙に祈りを

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