終わらぬ戦い
−注意−
今回も流血シーン多めです
m(_ _)m
なお、長くなったので予定のサブタイを変更して、分割にさせていただきました
m(_ _)m
槍が唸りを上げて、バルと口でやり合っていた賊に迫る。
横から槍持ちが、それをまるで柔らかく掬い上げるような動きで反らした。
「一手、所望する。
我が名はナヴァル、その腕前、見せてもらおう。」
名乗りを上げたソイツはバルと比べると頭一つ小さいが、体のゴツさは引けを取らないし、俺よりは断然デカい。
「死ねや、ガキィ!」
わざわざ叫んで大振りの振り下ろしを俺にしかけたヤツに、半歩踏み込んで突きを合わせた。
半身になって躱されはしたが、左に避けたので顔面を盾で裏拳のようにして殴り付ける。
弾かれたように大きくのけぞり、鼻血を飛び散らしながらたたらを踏んだ相手に追撃の突きを狙う。
刹那、別の一人が巻き込むような横薙ぎを右から放って来た。
小さく後ろへ躱し、反動を付けて空いた懐に肩から飛び込んで吹っ飛ばした。
「なかなかやるな、ガキの癖に。
俺も一緒に遊んでくれよ。」
そう言いながらバルが最初に突きを入れようとしたヤツが、袈裟懸けからの切り上げを放って来た。
一連の斬撃を躱せはしたが、三対一かよ。
真面目に笑えないな。
視界の端で吹っ飛ばしたヤツが、立ち上がろうと前に手を付いた。
そこに顎を目掛けて真下から、あえて尖らせていない礫弾を撃ち込んだ。
これ以上、捕らわれてる人達に血を見せて怯えさせたくない。
まともに喰らったソイツは白目を剥き、歯を何本か飛ばしながら、膝を付いたまま真後ろに倒れ込んだ。
直後、当たらないのはわかっていたけど、牽制で後に回り込もうとした鼻血のヤツに、回し蹴りを振る。
当然だが、背を向けて出来た隙に付け込まれないわけがない。
だけど今は「集中」してる。
まるで手に取るかのように、背後どころか広場全体が「見えて」いた。
死角から振り下ろされた剣を、見ないまま盾で外へ受け流す。
相手の体勢を微妙に崩せた。
その僅かな隙を突くように、振り向きざまに剣を振る。
誘いだったのか読まれていたのか。
小さな動きで掻い潜られ、返しの逆袈裟が飛んで来た。
咄嗟に脇を締め、腕を折り畳んで盾で受けた。
少しでも腕に伝わる衝撃を逃がすのに横っ飛びで距離を取ろうとしたが、連突きを見舞われて回避に専念する羽目になった。
クソ。
結構速い。
もう一人が俺の意識の端で再度、背後に回ろうとしているのは見えていた。
だが対処する余裕なんか無い。
その背後を取ろうとしていたヤツが、弾かれる様に急に真横に倒れた。
広場の入口の側に潜んでいたディディが、礫弾を正確な軌道でこめかみに命中させ、小さく穴を開けたからだ。
貫通させていないのは、やっぱり捕らわれた人達への配慮だろうか。
対象が一人に絞れて、ようやく反撃に出られた。
相手が途中から突き一辺倒だったのが、俺の救いになった。
タイミングを計って盾で受け流し、体重移動で軸足を前に入れ替える要領で踏み込み、顔面に肘を突き入れた。
カウンターで綺麗に、且つ痛烈に入り、大きくグラつかせた。
直ぐさま右肘の内側を斬り付け、返しで左の手首を斬り裂いた。
連続で肉を裂き、筋を断つ感触を剣伝いに感じた。
酷く不快になったが、剣を取り落とし耳障りな叫び声を上げるソイツの顔面に、渾身の横蹴りをめり込ませ黙らせた。
背後からディディがこちらに、後ろを確かめながら走って来るのを感じ取る。
「ジェス様、お怪我はありませんか?」
「俺は大丈夫。
バルも放っておいて大丈夫そうだから、まだ息があるヤツを拘束して。」
例の感覚で広場に集まって来たヤツラ二人と、アーネスが戦っているのはわかっていた。
その足元には既に二人、転がっている。
ディディがサポートで放った風切りによって首を斬られ、礫弾で頭を割られていた。
息は無い。
残りの二人を相手に、今は互角どころか押し気味に戦っていた。
バルはバルで、名乗りを上げたヤツの腹を僅か三合で貫き、今は広場への別の入口で、こちらは三人を相手に戦っている。
感覚でわかっていたけど、誰一人危なげ無く戦っていた。
状況を目でも確認するのに、辺りをぐるりと見渡す。
その時に、捕まっていた一人と目が合った。
怖がられているのか、サッと目を逸される。
一人だけじゃない。
目が合う人全員が俺から目を逸らした。
ショックはショックだが、今はそれどころじゃない。
考えないようにして、入口で戦っているアーネスの援護の為に礫弾の準備を始めた。
こちらから見て右手の相手に、アーネスが横薙ぎを放つ挙動を見せた。
それと同時に放つ。
読み通りに、ソイツは後ろに距離を取った。
こめかみから反対側まで射抜いて、向こう側の道に脳漿を撒き散らした。
もう、
今更だ。
アーネスの動きに釣られて、もう一人が雑に振り下ろす。
薙ぎ払いを放つ挙動をしながら、クルリと逆手に持ち替えそれを受けると、鳩尾に横蹴りを決め、前のめりになったソイツの後頭部に、盾を叩き付けて昏倒させた。
ほぼ同時にバルも最後の一人を、槍の石突で地面に叩き伏せた。
這い蹲り呻くソイツの頭を、そのまま潰す勢いで踏み付け黙らせていた。
とりあえずここは片付いたけど、この後はどうするべきか。
この人達をこのままにしておくわけにもいかない。
かと言って連れて行くのは論外だ。
アーネスとバルがこちらと合流すると同時に、広場に面して建っていた小さな教会のドアが開いた。
警戒して武器を向けたが、ドアの隙間から顔を出したのは高齢の男性だった。
服装からいって、おそらくこの教会の神官だろう。
「彼女達を中へ、さっ、早く。」
手招きする神官さん導かれるように一人、また一人とヨロヨロ立ち上がり、教会へと向かって行った。
「クラウディア、中で彼女達を守ってやってくれ。
俺は二人を連れて、戦闘が続いている場所に向かう。」
返り血塗れのバルは女性達には近付かず、ディディにそう声を掛けた。
ディディは頷き返すと、女性達の最後尾から教会の中に入って行った。
全員が中に入りドアが閉まるのを待って、バルは無言のまま走り出した。
俺達も続いて走る。
向かう先はどうやら村の北側に行くようだ。
俺達が村に入ったのは東側の門。
途中、ドルドーニュさん達と分かれてからは、少し南周りに広場へ向かった。
「ドルドーニュさん達の加勢に行くの?」
アーネスの問には答えず、走りながら時々目を閉じている。
「こっちだ。」
そう言うとバルは右の小道に入って行った。
小道に入って直ぐ、家はまばらになる。
左手には牧場があって、牛や羊が不安や恐怖を感じているのかしきりに鳴き声を上げていた。
道の先には少し大きな建物が見えている。牧場主か村長の家かもしれない。
だがその建物は全体が炎に包まれていた。
金目の物を奪ってから火を放ったのか?
やる事が非道過ぎるだろ。
向こうから何やら楽しげな笑い声を上げながら、四人組の男達が歩いてくる。
村がこの状況で笑っているって事は、賊の仲間だろう。
直ぐに向こうもこちらに気付いた。
手にしていたずだ袋を地面に放ると、無言で武器を抜いた。
先頭を走るバルは頭上で槍を回しながら、分断するように四人組の中央に飛び込み、左手の二人に連続で突きを放った。
賊の二人は手にした武器でそれを必死でいなし、距離を取る。
俺達は走りながら、残りの二人に礫弾を放つ。
一切の加減無しに放った礫弾を、その二人は小さな動きで躱し、こちらに向かって来る。
一瞬、驚いた。
だが俺もアーネスも即座に切り替え、二人同時に今度は道を埋め尽くす勢いで、迫るソイツ等に無数の風切りを放つ。
咄嗟に足を止め、闇雲にも見える動きでその二人は剣を振った。
だが、流石に全てを払える訳が無い。
利き手を切り裂かれたヤツの眉間に、アーネスが剣を突き刺した。
太ももを切り裂かれ膝を付いたヤツは、俺が喉笛を掻き斬った。
バルを相手にしていた内の一人は首に突きを喰らい、頭がもげ掛けていた。
もう一人は全身血塗れで仰向けに倒れていたが、息はあるようで命乞いをしている。
バルは無視するように石突で膝を砕くと、そのまま顎を払い、汚い叫びを上げるソイツの意識を刈り取った。
「多分こいつが今回の頭だ。
幹部にしてやるとかほざきやがったからな。
全体の頭かどうかは知らん。」
バルを鞍替えさせ、俺達を殺せばそりゃ相手方もニンマリだろうが、バルが乗るはずがない。
「東門に行く。」
再び走り出したバルの後を追い、俺達も走る。
直後。
何か、背中がゾクリとした。
何だ?
嫌な感じがする。
隣を走るアーネスが音を立て、歯を食い縛った。
アーネスもこの嫌な感じを受けているのか?
「バル、急ごう、なんか変だ。
嫌な感じがする。」
「先に行くぞ、気を付けろよ。」
バルがペース上げた。
あんなにデカいのに嘘のように速い。
少しずつ離れて行く背中を必死で追ったが、全力疾走を長く続けられるわけもなく、直ぐに引き離された。
嫌な予感が抜けない。
それは俺もだ。
漠然とした不安を抱え、それでも足を止めずに門を目指した。
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