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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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罠をも打ち砕くモノ

「バル、何人くらいかわからないの?」

俺の質問に緩く首を振り否定する。

「手元の明かりだけじゃどうにも。

屋内はそれなりに調べられたんだがな。

外には打ち捨てられた馬車や、何人かの死体も転がってたぜ。」

死体。

すでに一度はこの辺りで事を起こしているのか。

「戻って来る可能性もあるかもしれんな。」

「わからん。

死体の状態がかなり悪かったから、何日か経ってそうだ。

放って置かれた荷馬車は空だったしな。」

よく見ると全員少し汚れている。

「戦ったの?」

「いや?

ああ、馬車を壊して一緒に燃やして来たからだ、ちょっと汚れてんのは。」

埋葬してきたのか。

「あんな、あんなのないよ。許せない。」

アーネスの握った拳から、ポタリと血が滴った。

ディディも気付いたのか、駆け寄り手を開かせる。

強く握り込んでいた事に今になってアーネス本人も気付いたようだ。

リックも慌てて駆け寄ると治癒魔法をかけた。

「そんなに酷かったんだ、状態。」

「いや、アーネスがムカついてんのはまた別だ。

子供の死体もあって、それがちょっとな。

遊び半分って感じだった。

俺も詳しくは言いたかねえ。」

子供。

「奴隷にするのに攫ったんじゃないの?

こんな事、俺も言いたくないけど、お金になるんでしょ?」

「普通はな。

ガキを殺すって事は、本命の仕事がまだ後に控えてるって事だ、多分だがな。」

そういう。

アーネスが怒るのも無理はない。

行ってたのが俺でも、キレてたかもしれない。

「食欲が湧かないかもしれませんが、食事の用意が出来てます。」

ディディが気遣わし気に焚き火の方へ四人を誘う。

「食べる、食べるよ、ディディ。大盛りね。」

俺達は警戒を続け、四人に先に食べてもらった。

アーネスはガツガツ食べた。

ボロボロと泣きながら。


バルの提案で夜間の警戒を、これまでの三交代から二交代に変える事になった。

俺とアーネス、バル、ディディの馬車組が先に寝る。

残りの皆が二番手だ。

人数が偏る事になるが、車中で寝ようと思えば交代で寝られる。

御者を務めるバルの負担は増えるけど、とりあえずモレッド侯の所に辿り着くまでの、一日暫定での処置だ。

「連続で睡眠を取れない方が響く。

襲撃があったとしてもこの方がいい。

ドルドーニュ達も手が多ければ、寝てるヤツを起こし易いだろ。」

俺達の最高戦力、バルの提案には説得力があるような気がしないでもない。

「偏りは、むしろ戦闘能力の方だと思うが?

まぁ、理解はした。

それで行こう。

メリットの方が大きいだろう。」

ドルドーニュさんの言葉はもっともだ。

バルとディディが揃って休むのは、確かに不安だろう。

とはいえ特に何も問題が起きずに、モレッド侯の元に辿り着けるとは考え難い。

襲撃してきたのと、今回の盗賊なのか何なのかと、関係があるかはわからない。

どっちだろうと警戒は必要だった。

警戒の為にも休息は欠かせない。

集中が途切れる方が怖い。

緩んだ結果、誰かに何かあったら、そう思うと震えが来た。


一夜明け、移動を再開した馬車の中の空気は悪い。

怯えを隠せないマローダさん。

ディディの表情はいつもの様に冷静そうだけど、その雰囲気はピリついている。

目を閉じてはいるが、手を握ったり開いたりしながら何度も溜息を付くアーネス。

どうやら怒りが収まらないらしい。

バルも今日は話し掛けて来ない。

よく歌ってる鼻歌も無い。

俺はと言うと、少し怖気付いていた。

無関係の人間を殺せる、遊び半分で子供を害せる、その悪意に。

それを向けられたら。

そう思うと叫びたくなるような気分になった。

蒼槍城で鎧を選んでいた時にバルが言っていた、覚悟と心構え。

理解したつもりでいたが、俺は本当にその時になって戦えるのだろうか。

聞いただけだが、俺にも怒りはある。

でも言い知れぬ不安や、怯え、動揺。

そう言ったモノの方が遥かに大きい。

向けられた刃に、俺は刃を返せるのだろうか。


日の出と共に行動し始めた俺達は一時間も掛からずに、モレッド侯領の領境を越えた。

御者台の小窓を覗くとなだらかに続く下り坂の先に、村の防壁が遠く霞んで見える。

「バル!急いで!早く、急いで!」

突然、アーネスが叫ぶように、半ば腰を浮かしながら叫ぶ様に言った。

「アーネス、何だ、どうした!」

「村に急いで、早く!」

アーネスのその言葉に、もう一度小窓を覗いた。

目を凝らすと薄く煙が立ち昇っている。

バルも気付いたようだ。

「何だ?火事か?」

「違うよ、襲われてる!村が襲われてる!」

「クソ、朝駆けか!?おい、停まれ!」

「何で!?急いでよ、バル!」

「馬鹿野郎!こっちには非戦闘員のマローダ殿がいるんだ!

いいからお前は少し落ち着け!」

護衛の騎士さん達も直ぐに集まってくる。

「何だ、どうした!」

「あれを見ろ、多分村が襲撃されている。

マローダ殿は荷馬車に、見習い達とカレンは残って護衛だ。」

バルが指差した先を見て、ドルドーニュさんは首を振る。

「待て、認められん。

護衛対象を危険にさらす訳にいかん。」

「なら救援にはお前らだけで行くか?

知ってて看過したとなると、伯爵とモレッド侯の関係に響くんじゃねえのか?

それでもいいなら、俺達はここに残るぜ。」

「グッ、しかしいいのか?

二人も一緒で?

実績や実力は有っても、ほぼ新人なんだろう?」

「止められても行くよ、俺は。」

窓を開け放ちアーネスが真剣な表情と声で告げた。

「………、わかった、ならば急ごう。

カレン、馬を空けてクラウディアに渡せ。

マローダ殿は荷馬車に。」

「馬は俺に回せ。

いいか、まず俺が単騎で突っ込む。

その後、馬車に合わせてお前達が来てくれ。

俺が半分は引き付けておくから………。」

「バル、その作戦はダメだ。」

全員が一斉に窓の外から、バルの言葉を遮った俺を見る。

「向こうは恐らく、俺達を狙ったのと同じヤツラのハズだ。

ならバルが単騎で突っ込んでも後続が来るのがわかっているから、逆に待ち伏せされるよ。

行くなら全員で行った方がいい。

マローダさんも一緒に。」

「マローダ殿も?何故だ!?」

「マローダさんの護衛に騎士一人、見習い一人。

十人くらいこっちに回されて人質にでもされたら?」

全員が、返事に詰まる。

「作戦はちゃんと考えた。

マローダさんは荷馬車に伏せて隠れてて。

バルはそのまま馬車を操って、俺、アーネス、ディディが馬車から魔法を撃ちまくる。

皆さんは馬車を守りながら、撃つ相手を指示して下さい。

ディディはまだしも、俺達は同士打ちが怖い。

ある程度減らしたら、騎士と見習い全員で門を確保して下さい。

こちら側の門に多く人を裂いて。

逃げてくるなら多分こっちだから。

でも一人も逃がしたくない。

賊は大体五十人くらいでしょ?」

「何だ、どこから出て来た数字だ、それは。」

ドルドーニュさんが焦ったように聞いて来る。

「あれをやってるのが、闇夜の牙とトーレス卿の所の盗賊なら、合わせたらそれぐらいでしょ?」

「あっ。」

ドルドーニュさんが納得した顔になった。

「そうとわかれば、急ぐぞ。

カイトシールドを出せ!

いいか、少し策の修正をするぞ。

荷台に二人だ。

突入時に弩で援護しろ。

上体を起こすなよ。

村に入り次第、横付けして荷馬車で門を塞げ。

その後でマローダ殿を守って警備隊の詰め所に逃げ込め。

普通なら詰め所から門は見えるハズだ。

そこから逃げて来たヤツを狙い撃て、無理はするなよ!

ターナー、こいつ等を頼む。」

「任された。」

不思議と落ち着いていた。

さっきまでの躊躇いは無い。

気になるのは監視はなかったハズなのに、何故こうもドンピシャのタイミングで村を襲ったのか………。


慌てて空を見上げる。

やっぱりいた。

「ディディ、あれ狙える?」

「何です、ジェス様、どれです?あれは、魔禽?」

空から監視されてた。

多分間違いない。

かなり高空に一羽、ゆったりと旋回してる。

「戦場の眼ですか、面倒な。

距離が問題です。」

「何?ジェス、何か問題?」

多少焦れているのか空を見上げる俺達を、アーネスは怪訝な顔をして見てくる。

「使役魔禽で監視されてたんだ、多分な。あれだよ。」

「高いね。どうにか出来るの?」

「距離がね。」

「俺がやる?制御はジェスがやってよ。」

何を言ってんだ?

「同調。

ジェス、上手いでしょ?」

は?

「全力でブッ放すからさ、途中で魔法が離散しないように同調して制御してよ、ジェスが。」

出来るのか、そんな事?

「それは面白いですね。

では私が魔法を構築するので、ジェス様は魔力の受け渡しをお願いします。」

は?

何、言い出すのよ、ディディまで。

「いいね、いいね!三人なら間違いないね!」

おい。

アーネスのアホ程ある魔力を受け入れて、ディディの魔力に合わせて同調させて、受け渡すって事?

無理だろ、イヤ、無理だって!

「行きますよ。」

始めないで、待って、待って!?

アーネスが俺の首の後ろをおもむろに掴む。

待てって!?

止める間も無く、同調を一応はしているようだけど微妙に波調が違う、とんでもない量の魔力が流れ込んでくる。

直後にハンマーで殴られでもしたような衝撃を喰らった。

膝を付きながら咄嗟にディディの手首を握り、同調させて送り出す。

ディディは恍惚としたように微笑むと、頭上に数えられない程の氷の矢が一瞬にして出現した。

しかもドンドン増えて行く。

「おいっ、お前ら!何を!?」

ドルドーニュさんが気付いて声を掛けて来たのと同時に、目で追うのが不可能な速度で、それぞれがキュンという甲高い音を立て一斉に撃ち放たれた。

魔禽が旋回している範囲を埋め尽くし、なお余る勢いで撃ち出された氷の矢が、飛んでいた何かを欠片も残さずに打ち砕いた。

「やったね。」

両手の拳を握りアーネスが喜んだ。

同時に魔力の流入が止まり、俺を襲った衝撃も収まる。

「馬鹿野郎!絶対気付かれただろうが!」

「いいじゃねぇか、景気付けにはよ!よし、行くぞ!」

ドルドーニュさんの怒声をバルが笑い飛ばす。

それに感化されたのか、マローダさんとドルドーニュさんを除く全員が、少し笑顔を浮かべた。

衝撃からまだ立ち直ってない俺は、ディディとアーネスに引き摺られる様にして、馬車に運び込まれ、ドアが閉まると同時に、全員が一斉に駆け出した。


アーネス、後で覚えてろよ。

今回はちょっと短めです


理由はアーネスの暴走に、いつもはいい子のディディが乗っかったからです(汗)

そのため、冒頭に用意していた一くだりに繋がらなくなってしまいました

(´;ω;`)


これは、

「カメラを止めるな!」

ってヤツに近いかも、違うかも(汗)


まぁ、演者が勝手し始めた方が書いてて楽しいのはそうなんですけどねぇ

筋が、予定がっていうね


まあダメ親父の腕が悪いって事で一つ

えっ?もっと精進しろ?

ご尤も

m(_ _)m


最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます

モチベにつながるので、ブックマークをこうポチッと

色々こうポチッと評価やイイネで表して頂けたら幸いです

もちろん感想も嬉しいです


次回 惨劇の村

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