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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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見えない影

「無いとは言い切れないのがな。」

俺の発言にそう返したのはドルドーニュさんだ。


盗賊騎士は貴族が戦場以外での稼ぎを、盗賊として行っている者を指していう。

アイツの知識にも、高名無名を問わず実在の人物で何人かいる。

中には美化されて戯曲の題にされた者までいるらしいし、公爵という高い爵位を持つ者までいたという。

俺達の世界でも手口は似たようなもので、難癖を付けて決闘を申し込み、行為の合法化をしているとか。

正直迷惑な話だが、決闘を悪用しているのが質が悪い。

受けなきゃ受けないで、手配書を回して犯罪者扱いする事もあるらしい。

とりあえず攫ってから、身代金を要求する前に決闘状を公開するのは、アイツの知識でもある手口だけど。


「トーレス子爵自身は高潔な人物で通ってるが、子息達の評判がすこぶる悪い。」

「居城で悲鳴が聞こえない日は無い、とまで言われてますからね。」

マジでか、ヤバいな。

「国では取り締まれないの?」

アーネスの言葉にまたも俺以外の全員が渋い顔になる。

「あそこは小規模ながら金鉱があってな。

おいそれと手出し出来ないんだよ。

取り潰したら取り潰したで、貴族間での争いの火種になる。

バーレスト侯爵が後ろ盾に付いてるのも、国が手出し出来ない理由の一つだ。」

侯爵って。

どうすりゃいいんだよ、それ。

「バーレスト侯は武門の中でも一二を争う強硬派だからな。

しかもバーゼル伯と仲が悪い。

下手に俺達が手を出せば、内乱になりかねん。」

ドルドーニュさんの話を聞いて、頭が痛くなる。

無理じゃないの、そんなの。

「迂回するしかないんじゃないの?」

「知らん顔で返り討ちにするってのもあるけどな。

まだ憶測でしかないし、仮に本当だとしてそのドラ息子が出て来なきゃ意味がない。

手勢を集めてまたやるだろうからな。」

バルの話を聞く限り、詰んでるな、こりゃ。

「迂回するとなると、トーレス子爵領の手前で西に向かいオーソン男爵領から河を使う事になるか。

日数的に五日は遠回りになるぞ。」

「それなら、なんであの使者様はすんなり来れたのさ?

迂回したような日数なんて掛かってなかったでしょ?」

アーネス、鋭いな。

確かにそうだ。

「流石に国の旗印が付いた馬車には手を出さんだろう。

それにだ、仮に王城からの使者ともなれば、通達ぐらいは出される。

本当にやってるとしたら、わかってて手出ししなかったんだろ。」

「それならこちらも、先触れを出せばいいんじゃないの?

王様の命令で王都に向かってますって。」

「それはダメだろ。」

「えっ、ジェス、なんでさ。」

「バーゼル伯ってここまでの雰囲気から言って、国王陛下の派閥だろ?

そのバーゼル伯と仲が悪いバーレスト侯は多分、別の派閥なんだよ。

それか国王陛下の派閥の中で、競いあってるかのどっちか。

だから、俺達が王都に向かってるって知ったら、必ずちょっかいを掛けてくるさ、バーゼル伯に迷惑を掛けて足を引っ張る為に。」

アーネスがポカンとしてる。

そして他の皆はやけに感心した表情をしてる。

「その通りです、ジェス様、なかなかの読みです。

王太子殿下の正妃様はバーレスト侯の長女です。

しかし、王太子殿下のご長男で国王陛下の孫に当たられるカーソン殿下の正妃様は、ドナート子爵様の長女なのです。

次男のランツ殿下はバーレスト侯子息で家を継がれるナルザス子爵の長女を娶る事が、先頃公表されました。」

うわ、次期国王とその次の国王の正妃同士の親で争ってるのか。

ドロドロしてるんだろうな。

「なんとかバーゼル伯家を貶めて、次期国王のその次をすげ替えようって感じか。」

「その通りだ、ジェスター。

そんなところまで頭が回るとは大したものだ。」

あれ、ヤバい口に出してた。

「だとしたら、役目を横取りしたっていう使者様って、バーレスト侯かその手下の息が掛かってたんじゃないの。」

アーネス、マジか。

理解した上でその読みはなかなかだな。

「あ〜、ありそう過ぎて何も言えんな。

小銭目当ての小物だと思ってたけど、それはそれとして、利用されたのかもな。」

欲に目が眩んだヤツを焚き付けたのか。

ありそう。

「その辺りは伯爵様も掴むか、理解しておいででしょう。

だから、問題にならないように既に動かれているのではないでしょうか。」

あれ、これって既に俺達、権力争いに利用されてない。

猛烈に嫌なんだけど。


「て事はさ、迂回しても俺達、狙われるんじゃないの?

下手したらバルも伯爵様の息が掛かった一人として見られてそうだし。

昔から仲がいいんでしょ、バルのお父さんと伯爵様って。」

アーネスも気付いたか。

それなんだよな、怖いのは。

俺達も将来的にバーゼル伯の手駒になるとか思われたら、狙われちゃうよね、多分。

まとめて将来の脅威になりそうな芽を摘んでおこう、とか考えられたら本気でヤバい。

「思ってたより、困難な任務になりそうだな。

クラウディアと、バルガス殿がいてくれるのが、かなり心強い。」

もしかすると、これも想定してディディって同行させられてるのか?

「そうは言われましても、毒等を用いられたら、私では対処出来ませんよ。

投与される前ならまだしも、もらってしまった後では、治癒魔法が使えない私ではどうにも。」

「街は却って危険かもな。

伯爵の息が掛かった領の街や宿ならともかく、そうじゃないならおちおち寝てられんぞ。

それが本当なら。」

「どこかで、腕の立つ治癒術師を雇うとか出来ないの?

もしくは教会に助けてもらうとか。」

それは難しいだろうな。

腕の立つ治癒術師は現場に出ない事が多いって、ミラさんも言ってたし。


「迂回するなら一人当てがないわけじゃないけど、あの爺さん、偏屈だからなあ。」

おや、バルに当てがあるようだ。

でもバルに偏屈って言われるとか、どんな人だろう。

「一応当たってみては。その人に。」

ディディは前向きに考えているようだ。

「名前くらい聞いた事ないか、好色の聖者とか色欲の破戒僧って言われてる、ジード・グルードって。」

二つ名の時点で既にヤバいな。

「ジード老か!バルガス殿は知り合いなのか。」

ドルドーニュさんがビビってる。

有名なんだな。

あぁ、でも二つ名が二つあるってだけで相当なんだろうな。

俺達が知らないだけで。


「騎士の間なら拳王の二つ名の方が有名か。

ああ、去年立ち合いを申し込んで負けた、盛大に。」

三つ目、あったよ。

しかもバルが負けたって。

どんだけ強いんだよ、その人。

「徒手でやり合ったら、綺麗に顎先に掌底を入れられて、気絶させられた。

何度かやったけど、徒手では全部負けた。

いい勝負にすらならんかったよ。

武器有りでやっても勝ちはしたが、一本は取られたしな。

徒手なら誰も勝てねえんじゃねえか、あのジジイ。」

ヤバっ、怖っ。

妖怪か何かか、それ。

イヤ、妖怪は俺達の世界にはいないけどさ。


「私も拳王の二つ名は聞いた覚えがありますが、他の二つは初耳ですね。

何故そのような。」

ディディも知ってはいるのか。

てか確かに気になるけど。

「あの爺さん、やたらモテるんだよ。

でもって、来るもの拒まずだからさ、ガツガツ行くのよ。

もうこうさ、ガツガツな。

武器有りでの立ち合いの条件が『儂が一本でも取れたら、娼館に一週間籠もらせてくれ』だったしよ。

あれで教会に所属してるってんだから、呆れたもんだぜ。」

突っ込みどころが多すぎて、手が付けられないじゃないよ、その人。

そりゃ破戒僧とも言われるわ。

ディディの目付き、凍りつきそうなくらい冷たくなってるし。

「やめておきましょう、お二人の教育にも悪過ぎます。」

いや、どう転んでもそうはならないよ、俺達は。

「そうか?

反面教師には丁度良くないか?

ちなみにお前みたいなタイプが一番好みらしいぞ。

普段冷たいのが、ベッドで甘えて来るのがいいらしい。」

うわあ、ヤバいよ、本当にその人。

それをサラッと言っちゃうバルも大概だけど。

アーネスなんか赤くなって、下を向いちゃったし。

ディディはディディで溜息吐いて、眉間を揉んでるし。


「そんなタイプに見られてたんですか、私。」

えっ、そっち?

そこなの、クラウディアさん!?

「これでも尽くすタイプですよ、私は。」

いや、まだ続く?

この話題!?

「尽くした事なんかあんのかよ、クラウディア。」

あっ、固まった。

図星なんかい。

「おい、話を戻さないか?

結局、どうする、迂回か、突っ切るか?」

「択を取ろうぜ、突っ切るのは?」

固まってるディディは別として、誰も手を上げない。

そりゃそうか。

「決まりだな。」

こうして俺達は迂回する事に決めた。

とりあえず途中までは予定の道を行き、情報を集めつつ迂回路の選定をする事になった。


とは言え、俺達の世界ではそもそも選択出来る道は少ない。

各領から王都に向かう街道は大体整備されているが、それ以外は大半が未整備だと言うし、未整備の道を馬車で行くのは、通常の倍近く掛かる。

他に脱輪や最悪横転の危険がある。

しかも魔物にも警戒が必要になるし、人里離れると狙い易くもなる。

実質、朝の話に出た二択になるので、情報集めは襲撃者の情報を集める事になるだろう。

王都まで辿り着けば少しは安心出来るけど、道中を怯えながら過ごす事になるとは思ってなかった。

伯爵様が気付かないわけがないので、俺達ならなんとかなると考えたのだろうか。

気付いて迂回する事も折込み済って感じなのか。

だとしたら、伯爵様もお人が悪い。

先に言っておいてよ。

見上げた空に伯爵様の黒い笑顔が見えた気がした。


出発の準備を終えて村を後にした俺達は、また走る羽目になった。

ディディからの魔法は無くなった。

代わりに杖を脇に置き、武装している。

即応出来るようにだ。

俺達は警戒要員の一人として、交代で走る事になった。

今日は俺、アーネス、バル、俺の順だ。

一人が御者台に移って馬を空け、バルが乗ることを提案したが却下された。

バカデカくて重いバルが乗ると、馬がバテ易くなるからだそうだ。

休憩を増やしたら意味がなくなる、って理由も足された。

仕方ないか。

村からしばらくは、なだらかな丘陵地帯になっていた。

林とも言えないような、木がポツポツと生えている場所や、バーゼル伯領のように丘一面が草原になっていたりするが、緩いとはいえ登りが続くと正直キツかった。


午前の休憩を前に下りになって少しは楽が出来るかと思ったが、甘かった。

楽なのは最初だけで、疲れより足の痛みが酷くなった。

アイツの知識によると、上りより筋肉の負担は弱くなっても、着地の時の足への衝撃が強くなるらしい。

実際、足首と膝、踵が悲鳴を上げ出した。

平坦な場所に差し掛かった時、休憩を告げられて、その時にはもう半泣きだった。


「半分弱は下りだろ?思ったより上りがキツかったの?」

とアーネスが聞いて来たが、這いつくばって走ればわかるとだけ答えておいた。

「上りは筋肉にクルけど、下りは関節や筋、骨にクルんだよ。

コイツが言ったように走ればわかるさ。」

とバルがニヤニヤしながら言っていた。

「俺だって登りも下りもあるんだ。

一緒だろ、一緒。」

そう何だけどさ。

何かが違う気がする。

こう誤魔化されてるような。

そのニヤついた笑顔のせいでそう思うのかもしれないけど。

「上りは筋力、下りは耐久力。

どっちも必要だろ?

休んでていいぜ、治癒魔法でも掛けてもらってな。」

見かねた見習い君が、苦笑いで治癒魔法を掛けてくれた。

うん、君は優しいね。

やっと名前が出たジード

ヤバい二つ名てんこ盛り

現状、師匠ポジのバルを倒す腕前って

書いておいて、登場時に捌ききれるか今から不安です(汗)

どうでもイイですが、爺様の癖はダメ親父と一緒です

本当にどうでもイイですね~


最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます

モチベにつながるので、ブックマークを是非お願いします

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「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


次回 姿無き襲撃

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