表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/107

麓の村まで着いた時には日が沈み、空は僅かに赤みを残してはいるけど、もう夜と言った方が合っていた。


到着した村は山麓の村というので、寂れた村を想像していたけど、ムカデ騒ぎがあった南の村よりは、遥かに大きな村だった。

何件か軒を連ねる酒場からは喧騒が溢れ、領都の周りの村なら、家路に就いている時刻なのにそれなりに人通りがある。

なので馬車は、正直危ない。

厩へ預けるのに見習い達が引き馬で連れて行った。


「この村は、変わらず栄えていますね。」

歩きながらポツリと言ったディディの言葉に、俺は疑問を投げかけてみた。

「何でこんなに栄えてるの、この村?」

「林業が盛んで、多くの木こりが集まって来るからですね。

関連する人達を目当てにした宿や酒場、鍛冶屋、国内外の材木商の支店等も増え、ちょっとした街と言える規模になっているのです。

二年程前に仕事で訪れた時に、私に不埒な真似をした酔っぱらいを氷漬けにしたのが懐かしいです。」

何をしたらそんな目に遭わされるのか。

ディディは容赦ないな、やっぱり。

バルも、アーネスも、マローダさんも、ドルドーニュさんまでも引いた顔をしてる。

まあ、当然だけど。


「てかさ、周りの森ってあんまり深くないよね。そんなに切り倒しちゃって、直ぐに木が無くなっちゃうんじゃないの。」

確かにそうだ。

アーネスの疑問には頷ける。

「少し奥に入ったところに明日木とも呼ばれる、モウーダという常緑樹のかなり広い群生地があるのです。

非常に成長が早く十サラ程度の高さの木は、切り倒しても根さえ残せば、二年程で元の高さになると言われています。」

スゲェなその木。

アイツの知識にもそんな木ないぞ。

「問題もあるんだけどな。」

「問題?」

「モウーダはトレントに変異しやすいんだ。」

他の生き物を殺して養分にしている、植物系の魔物全般を一括りにトレントと呼んでいる。

物によっては木のくせに歩くらしい。

アイツの知識にもその魔物の事はある。

創作物の中の知識だが。


「モウーダは地中の魔力も養分として吸い上げているので、その分成長が早いのですが、その性質の所為で魔物化し易いと言われています。

成長が早いのに、木材としても硬く締まっているので、建材以外でも人気の木材で、トレントの物は特に杖の材質としては最高級品の一つです。」

「一部はわざとトレントになってから切ってるって話だしな、金になるから。」

「危なくないの?肉食みたいな感じでしょ?」

まあ、当たり前の疑問だよな、アーネスのそれ。

「危ないっちゃ、危ないけど、ここの木こりは強いからな。」

は?

どういう事よ。

「ヤツラ、ヤバいぜ。

木だろうが、魔物だろうが、斧で真っ二つ。

下手な傭兵や騎士、そこら辺の冒険者なら、やったらまず負けるな。」

そんなにか、スゲェな木こりさん。


話しながら歩いていると、宿屋の前でオルトスさんが手を振っているのが見えた。

結構デカくて立派な宿屋だ。

「旦那、取れましたぜ、四部屋。」

軽装で、ぱっと見騎士とは思えない格好のオルトスさんが、騎士とは思えない口調でドルドーニュさんに告げた。

「よし、他のヤツラを待ってから、女子供を部屋に案内してやれ。

その後は酒場なり娼館なりで好きにしてていいぞ。

小遣いは渡したろ。」

「ヘヘ、ありがてえこって。」

そんなやり取りを聞いて素直に感心した。

費用は渡してあるから、情報収集しろって事だよな、今のやり取り。

「俺も行ってくるわ、可愛いねえちゃんがいる酒場、あるかな?」

「好きだね~、旦那も。いい店知ってやすぜ。」

バルとそんなやり取りをするオルトスさんがヤバい。

昼はキリッとした雰囲気だったのに、ここまで下世話な空気を出せるんだな。


俺達は宿で食事の後は部屋に籠もった。

「なぁ、さっきの会話、あれ凄かっね。

会話もそうだけど、雰囲気まであんなに変えられるって、俺びっくりしちゃったよ。

わかってるディディも顔を顰めたりしてさ。」

アーネスも同じような事を思ったようだ。

ディディはどうだろ。

わかってても嫌な顔をする気がする。

「他領に討伐以外で出向く者はあれくらい出来ますよ。

カレンさんも今頃、お化粧して素敵な格好に着替えてどこかに出てるハズです。」

マローダさんがそんな事を言った。

それはちょっと見たかったな。

割と素朴な雰囲気の人だったけど、女の人は化粧で雰囲気変わるって言うもんな、アイツの知識では。


そんな話をしていると、ノックが鳴ってディディが部屋に来た。

「バルガス様が、今日は型の練習を休んでいいと仰っておりました。

今日の戦闘のイメージだけはしておくようにとも。」

それはありがたい。

正直、疲れた、色々と。

「私の方も今日はお休みでいいですよ、魔力操作の練習くらいは、床に付かれるまでされた方が良いですが。」

おお、ディディも優しいね。

鬼とか思った事は、心の中で謝っておこう。

「魔力操作の練習で何かいいやり方ある?」

アーネスが聞くと、顎に指を当てちょっと首を傾げた仕草をして、

「それでしたら、普段体外に漏れ出ている魔力を感じ取り、それを止める練習をされてはいかがでしょうか。」

と言った。

ん?

漏れてるのか、普段魔力って。

「魔力は体調が万全の状態でなくても、少しづつ漏れています。

ほんの僅かなので、魔力を感じ取る練習と操作の練習、両方が出来ます。

慣れると疲労回復にも僅かですが効果があります。

ただあまり長時間続けると魔力酔いを起こすので注意が必要ですが、寝るまでの間位なら大丈夫ですよ。」

なるほどね。

やってみよう。

「明日は起こしに参りますので、ごゆっくり。

ではお休みなさいませ。」

そう言ってディディは部屋に戻って行った。

「私も下の食堂で一杯やって来ます。先に休んで下さい。」

マローダさんも出て行った。

それじゃ、早速ディディに言われた練習でもやりますか。

色々酷い目にあったけど、今日はぐっすり眠れそうだ。


翌朝、ディディが来る前に目が覚めた。

体が軽い。

昨日、ディディが教えてくれた練習の効果かもしれないな。

アーネスもガバって起きた。

どうやらコイツも体調が良さそうだ。

バルは腹を掻きながら寝てる。

マローダさんは、あれ、もういない。

早いな。

窓を開けると朝の空気と一緒に、鳥の鳴き声が入ってきて気持ちのいい朝だ。


なんとなく剣を持って外に出る。

アーネスも付いて来た。

木々に囲まれた村の空気は、この季節にしては少しだけ涼しい。

短時間だが集中的に型の練習をして、二人とも汗を流した。


うん、いいな、朝練。

終わってから、アイツの知識のシャドーボクシングをふと思い浮かべた。

今度やってみよう。

部屋に戻るとバルも既に身支度を整えていて、ディディと話をしていた。

旅の間の修行についてらしいけど、話し終わりしか聞けなかったので内容はわからない。

これ以上キツくするって話じゃなきゃいいけど。


「おう、お疲れ。

ここから見てだけど、大分様になって来たな、型の練習。

明日から左でやれや。

先に言っておくけど、しばらくは利き手の反対でやって、そのうちまた声を掛けるから、それからは一日置きに交互にやるようにな。」

バルはそう言うと、大アクビをしてからニカッと笑った。

まあ、よくわからないけど、バルは理由のない指示はしないと思う。

従っておこう。


「なんで、そんな事するの?

嫌だって言ってるわけじゃないよ。

単純になんでかなぁって思っただけ。」

アーネスが素直に質問する。

俺も見習うべきなんだろうな。

「何かで利き腕を失った時の為さ。

片腕を失ったから死にましたじゃ、戦士として情けねえだろ?」

うわ、めちゃめちゃ現実的な理由だった。

だけど確かにそりゃそうだ。

「持ち替えてのフェイントとかにも使えるしな。」

それもありそう。

「二刀流とか?」

「ありゃ、短剣でやるもんだよ、少なくとも片方は。

右と左で微妙に筋肉の付き方も違うし、筋肉の持久力も違う。

両手でバサバサって、俺もやろうと思えば出来るけど、長時間の戦闘には向かないし、標的が増える分、集中力も倍以上に必要になるからな。

一対一ならまだしも、思ったより手数が増えないんだよ、アレ。

流派によっちゃ、多対一を想定してかなり練習するんだけどな。」

「へぇ、そうなんだ。」

バルの言葉にキラキラになるアーネス。

俺も感心してしまう。

この口振りなら試した事あるんだろうな。


「バルはさ、誰かに師事して武術を学んだの?」

気になってた事を聞いてみた。

「ああ、祝祭の二年ちょっと前から、王都の道場に通ったんだ。

一応、指導する免許は取れたぜ。

三年くらい通ったか。

加護がわかってからかなり伸びたんだ。

お前達も飲み込み早いから、直ぐに強くなれると思うぜ。

まだまだ体力が足りてないけどな。」

最後はニヤリとして言われた。

こりゃあ、まだまだ走らされるな。

しかし免許ね。

師範代って事か。


朝食の時、夕べの情報のすり合わせが行われた。

「この近辺では盗賊の噂は聞きませんでしたが、やはりトーレス子爵領の先の峠で盗賊の噂がありますね。」

オルトスさんの言葉にドルドーニュさんが頷く。

「俺も聞いたがどうやら闇夜の牙じゃなさそうだ。

聞いた規模が小さい。

ただ装備が整っているって話もあって、そこが気になる。」

「ああ、それは俺も聞いた。

結構噂になってるって事は、いるんだろうな。」

バルも聞いたらしい。

「紋章付けて行った方が安全なんじゃないの。

いくら盗賊でも貴族に喧嘩売る?」

アーネスが小声で発言した。

俺もチラッと思ったけど、全員首を振った。

「いや、隣接した領ならまだしも、幾つか領を挟むと逆に狙われ易い。」

「金目の物を持ってるって、目印付けてるのと一緒だからな。

隣接してなきゃ、怒らせてもすぐに騎士団を差し向けるってのも無理だしな、貴族間でのあれこれあってよ。」

ドルドーニュさんに続けてバルが説明してくれた。

言われてみればその通りだ。

「どうする。

聞いた規模なら殺られる事はないが、リスクはある。

出来れば犠牲を出すのは避けたいところだ。」

それはそう。

「こいつ等に経験を積ませたくもあるんだがな。

問題はそこより、小規模な盗賊の装備が整ってるてとこだよ。

どこにそんな金があるんだ?

食い詰めてるから盗賊やってるんじゃないんかい。」

まさかね。


「なんだ、ジェス。何か思いついたのか。」

顔に出てたのかバルにそう聞かれた。

言い難いな。

本職の騎士さん達の前で。

仕草で促され、仕方なく話す事にした、

「それって、盗賊騎士とかってやつじゃないの?」

ほらね。

皆の顔が一斉に渋くなったよ。

最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます

モチベにつながるので、ブックマークを是非お願いします

感想を、こうポチッと評価やイイネで表して頂けたら幸いです


「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


次回 見えない影

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ