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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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伯爵様との朝食

剣を贈る→この世界での騎士任官です

中国ではどちらかと言うと、死を賜る事を意味しがちですが(例外あり)、西洋では割とある文化です(例外、多数あり)

元々はドイツの成人の儀式がベースのようです(ダメ親父調べ)

使者様がお帰りになられてから、というか追い出されてから一夜が明けた。


流石に夕べはバタついていたけど、今はもうとっくに落ち着いている。

身支度を整えて、朝食の呼び出しを待っていると、この何日か決まって同じ時間に来ていた、ディディが来なかった。

ちょっと腹減ったと思い始めた位に、ディディがやって来た。

それほど遅くなかったけど、どうしたんだろう。

「おはようございます、ジェス様。

朝食のご用意が整いましたので、お呼びに上がりました。」

「おはようディディ。

いつもより遅めだね。

何かあった?」

「伯爵様がご一緒されるとのことで、少し調整させて頂きました。」

「えっ。」

思わず素で聞き返した。

彼女は笑顔を返したのみで、スルーして来た。


隣部屋のアーネスと一緒にディディに付いて行くと、何時もの朝食とは違う食堂に連れて行かれた。

時間に関して気にしていなかったのか、アーネスは特にディディに聞かず朝の挨拶をしただけだったので、ちょっと怪訝な顔をしている。

ディディがノックし、

「アーネストリー様、ジェスター様をお連れしました。」

と中に告げた。

「お通しして下さい。」

ガスリーさんの声でそう告げられ、ディディが俺達を中に通す。

後から来るかと思っていた伯爵様は、既に席に着いていた。

アーネスの顔がちょっと引き攣る。

昨日のアレを見てしまっているから仕方ないけど、分かり易いな、お前。


バルが伯爵様の左。

左!?

アーネスはソルディーヌさんに案内されて、伯爵様の右に座った。

俺はその隣。

バルより上座っておかしくない?


ディディは一礼して下がって行った。

行かないで欲しかった。

かなり本気で。


席に着くと、伯爵様が含み笑いを噛み殺しながら、意味ありげにこちらを見てきた。

「おはよう二人とも、なかなかいい朝じゃな。」

そう言うと、息子のユージンさんに仕事を譲る気が無いのか、ガスリーさんが伯爵様の給仕を始めた。

てかユージンさんはいない。

到着した後、会ってないな、そう言えば。

ソルディーヌさんが俺達に給仕をしてくれた。

アーネス、俺、バルの順だ。

イヤ、だからおかしいって。


パンを千切り一口食べた後、伯爵様が話し出した。

「夕べは、大変だったな。ゆっくり寝られたかね。」

イヤ、他人事のように言わないで下さい、閣下。

俺達が答えられずにいると、バルが面白そうに口を開いた。

「使者に逆らって、王都行きを断ったんだってな。

度胸あんな、お前ら。」

「それはもう、キッパリと断りよった。

流石に儂もせなんだが吹き出すかと思ったわい。

中々おらんぞ、儂にそんな思いをさせる者なぞ。」

二人して、からかって来る。

言い返せないじゃないか、特にアーネスが。


「済んだ事は、まあ、いいじゃろう。

本題じゃ。

なんじゃ、二人とも食事の手が止まっておるぞ。

食べながら聞くといい。」

「はい。」

二人揃って返事をしたけど、味なんてわからないよ。

野菜が入ったオムレツと、よく冷えた牛乳。

白パンに厚切りのベーコン。

美味そうなのに、美味そうなのに。


「手筈は夕べのうちに整えた。

午前の内に出発してもらう。

バルガスがおるなら問題なかろうが、騎士を一班付ける。

御者と護衛としてな。

それとクラウディアも世話係として付ける故、使ってやってくれ給え。」

「ソルディーヌちゃんとはお別れかぁ、寂しくなるな。」

今じゃないよ、バル。

この場で粉を掛けられるとか、胆力半端ないな。


「王都では一日は王城の、恐らくは迎賓館に宿泊する事になるが、王都に到着した日と謁見の後は当家の王都別邸を使うと良い。

すでに子爵には話を通してある。」

うあぁ、もう既に嫌なんですが。

「何日でも滞在して構わん。

王都で観光するも、見聞を広めるも、そのまま仕官するも良しじゃ。

王都の学院に入るという手もあるかの。」

バルがずっとニヤニヤしてやがる。

クソ、俺達で楽しみやがって。


「王都で仕事を受けるのも悪くはないが、討伐系の仕事は無いじゃろうな。

陛下の直轄領は既に狩り尽くされておる。」

あれ、王都の協会には駆け出しは少ないって話じゃなかったっけ。

「顔に出ておるぞ。

どうやら頭が切り替わったようじゃな。

君が考えておる通り、あそこには駆け出しは少ない。

物も溢れておるから採取の仕事も殆ど無い。

あそこの協会には、仕官を望む中堅や、難易度が高い、他の地域からの依頼が目的の者ばかり集まっておるのじゃ。」

ああ、そう言う事か。

てかそこまではっきり顔に出てたのか、俺。


「おっかねえよな、伯爵様。

ビシビシ内面読んで来やがる。」

そう言う同意を求めるなよ。

はいとも、いいえとも答えられないだろうが。

「若手が答えに窮しているではないか、やめてやれ。

儂は逆に内面丸出しで、どうやって生き残って来たのか知りたいわい。

盗賊なぞの人間も相手にしてきたろうに。

よいか、こういった部分は見習ってはいかんぞ。

武術の腕だけを盗むのじゃ。」

何かこの二人、ちょっと親しげだな。


「お二人は元々お知り合いですか?」

「ああ、儂が王都に詰めておった頃、此奴の父と知己を得た。

なかなかやり手でな。

今は離れてはおるが、子爵を通じて何かと融通し合う仲じゃ。

今では王都でも十指には入る大店でな、バルドール商会と言えば少なくとも貴族で知らん者はおるまい。

此奴のまだおむつが取れぬ頃も知っておるよ。

此奴の父に請われて、此奴に名付けたのも儂じゃ。」

めちゃめちゃ知り合い、って言うか名付け親じゃねえか。

はえ〜。

「この話題、長くなるからやめておけ。」

「何を言う。

だがまあ実際、儂もあまり時間がない。

この後、領都に戻らねばならんのでな。

話を戻すが、順調に旅が運んで十二日。

天候次第では何日か遅れよう。

使役魔禽を何羽かとその世話をする為に、騎士見習いも付ける。

良い旅にするのじゃぞ。」

ありがたい話だ。

昨日は冷や冷やしたが。


「あの。」

「何かね、アーネストリー君。」

「昨日の使者様って、何か問題になったりは………。」

「せぬ。

と言うか、させん。

それに、もう手は打ってある。

あやつはもう役人ですらない。

小金で職を棒に振るなど、ふん、愚かな事よ。」

アーネスの言葉を遮って伯爵様が言う。

それに対して呆れ顔でバルが話した。

「何だよ、こいつ等の旅費でもせしめようとしてたのか。」

「そうじゃ。

セコいと言ってしまえばそれまでじゃが、陛下のお声掛かりで出た金じゃ。

それなりの額にはなろうな。

何故ばれぬと思ったのか、情けない。」

「なるほどなあ。

使者が泊まる宿ともなれば、村は別としても、何処かの街なら一番の宿を取るだろうしな。

道中の食い扶持もそれなりだろうしさ。

冒険者程度なら半年は働かない位の金にはなるか。

ヤツラにしてみれば、小遣い稼ぎ位の感覚かもしれんけど。」

「だとしても、国から出た金に手を付ける等、言語道断じゃ。

何らかの罪は免れまい。

何処かの貴族が手を引いていたとしても、切られるじゃろうな。」

そもそも、ここまで来る間に幾らかは手を付けてたんだろう。

振る舞いを報告するって言ってたもんな。

あのコーンズって騎士。

伯爵にコーンズ卿って呼ばれてたから、低位の貴族出身か、貴族そのものなのかもしれない。

それにしても、伯爵様の足をちょっとでも引っ張りたい貴族もいるんだろうな。

ヤダヤダ。

憶測の域を出ないけど、貴族が絡んでるなら下手したら消されるんじゃないの、あの人。


「ところでお主は家に戻るのか。

ヤンガス殿によろしく伝えてくれ。」

「ああ、わかった。

兄貴に二人目が生まれたらしくてさ、顔を見に行くんだ。」

「なんと。

儂は聞いておらんぞ。

あやつめ、気を使わせないように黙っておったな。

どっちじゃ、男の子か、女の子か?」

「いや、俺も見るのを楽しみにして、どっちか聞いてないんだよ。

悪いね、伯爵様。」

「それでは何を贈るか困るではないか。」

ただのおじいちゃんだよ。

これはいいものを見た。

「ジェスター君、君に何か良い案はないかね。」

うえっ、何で俺に聞くよ。

なんて答えよう。

うん。


「それでしたら、淡い緑や黄色のお包みを何枚か贈られてはいかがですか?

あって困らないですし、場所も取りません。

伯爵様からの贈り物となれば、大事に使うでしょうし、なんなら代々使ってくれるかもしれませんよ。」

「何故淡い色か。

派手な方が良いではないか。」

「淡い色の物なら男女どちらにでも使えますし、なるべくなら普段から使ってもらいたくありませんか?

でしたら尚更、淡い色の物の方が使い易いと思います。

端に金糸や銀糸で刺繍を入れるとかなら、まだ使い易いでしょうね。」

「うむ、そこまで考えての提案か。

その案、使わせてもらおう。ガスリー、手配を頼むぞ。」

「かしこまりました。」

「お前、スゲェな。よくそんなのポンと出るわ。」

やめて、マジで。

アイツの知識を拾っただけだから。

「なかなか、頭が回りよるじゃろう。

だがこれでまた貸しを作ってしまったわい。」

また面倒な事を言い出したよ、伯爵様が。

「そう迷惑そうな顔をするでない。

借りならまだしも、儂に貸しを付けられる者などそうはおらんのじゃぞ。

もっと胸を張らんか。」

「ならさ、こいつ等、ダガーを買おうとしてるんだよ。

伯爵、余ってるだろ。

良いのを一本ずつやれば?」

おい、それはちょっと恐れ多いよ。

「なんだよ、その顔。

剣を贈られるよりはマシだろう?

褒美としては手頃じゃねえか。」

「確かにそれは良い。

子爵宛の文と一緒に持たせて、王都まで届けようではないか。

儂の手から渡されるよりは気も楽じゃろうしの。」

まあ、うん。

それならいいか。

イヤ、いいのか?

銘が入ったヤツとか来ないよな。

そんなのビビるぞ、俺は。


「さて少し長くなった、三人はゆっくり食べてくれ。

儂は出立の準備があるので先に失礼させてもらおう。

見送りはせんので、達者でな。

また必ず会おうではないか。」

そう言うと席を立ち、ガスリーさんを伴って退出して行った。

見れば完食している。いつの間に。

「伯爵様はあんだけ話して、食うのも速いんだよな。

やっぱりまだまだ現役だなぁ。」

少し呆れを含んだ口調でバルが言ったけど、まあ、暫くは現場は無いとしても政務には励むんだろうな。

何となく、元気で頑張って欲しいとか、そう思った。


さて、食べたら王都だ。

最後までお読みくださった方々、ありがとうございます

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「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


次回 王都への路

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