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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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伯爵別邸へ その一

日が中天を過ぎた頃。

黒光りする高級な作りの馬車と、その後ろをそのまま一回り小さくしたような馬車が、前後を守護る四騎の騎士に伴われて街道を北へと進んで行く。

前方の車中には旅装に身を包んだ四人の男が、時折窓から吹き込む風に髪を揺らしていた。

俺、アーネス、マローダさん。

それと、朝のうちに引き合わされたバーゼル伯の食客、バルガス・バルドールさんだ。

丘を緩やかに下るその先に湖と、それを背にする目的地の村が見えて来た。


夕べ。

余りの旨さにあっという間に一瓶飲み尽くした俺達だったが、どうやらどちらも酒には強いらしく、ほろ酔い気分になったくらいだった。

クラウディアさんにも一緒にどうかと勧めてみたけど固辞された。

「私はとても弱いので、一口で寝てしまいます。味は好きなのですが。」

と言っていた。

アイツの知識のアルハラは良くない。

無理に勧めるのはやめておいた。


ちょっとはしゃぎ気味だったアーネスに、最後の一杯は譲ってやった。

「ジェスは優しいよな。」

と鼻を鳴らしながら言った後で、院での昔話を始めたので慌ててやめさせた。

「私は聞いてみたかったですよ。ジェスター様の小さかった頃のお話。」

そう言われたが、恥ずかしい事を言われでもしたらたまらん。

代わりに俺がアーネスと出会った頃の話をした。

小さい子のオムツを顔色一つ変えずに替えてやっていた事とか、ドブにハマって泣き出した子を、自分の服が汚れるのにも構わず背負ってやっていた事とか。

「お優しいのですね、アーネストリー様は。」

クラウディアさんにそう言われたアーネスはキョトンとしていた。

「普通でしょう?」

ちょっと美談っぽく話したから、クラウディアさんがそう言っても不思議じゃない。

でもその返しは普通とは言わないんだよ。

当たり前を当たり前にやれるのは、優しいヤツだけだ。

クラウディアさんも、感心したような顔をしていた。

てかクラウディアさん、本当に俺達の二個上なんだろうか。

丁寧な話し方もあって、めちゃめちゃお姉さん感がある。


ミリア姐さんは「姐さん」。

クラウディアさんは「お姉さん」。

頭の中とはいえ、引き合いに出してごめんなさい、姐さん。


「クラウディアさんて、年下の俺達にもとても丁寧な話し方をしてくれますけど、普段からそんな感じなんですか?」

アーネスの言葉にちょっと虚を衝かれたような顔をした後で、優しげな表情を浮かべて話してくれた。

「もちろん違います。

お客様として接しておりますのでこのような話し方をしておりますが、普段は休憩中にキンバリーやコリンナと軽口を叩いたりしています。

二人は、私をディディと呼んでますし、キンバリーの事はキミーと呼んでおります。

コリンナはコリンナのままですが。

お嫌でなければお二方も言葉を崩して頂いて、ディディとお呼び下さい。

魔法をお教えしている時は駄目ですよ。」

そう言ってはにかんだように笑顔をみせたクラウディアさんは、初めて年相応に見えた。

「じゃあ、俺達もアーネスとジェスで。

明日からもよろしくね、ディディ。」

とアーネスが言うと、少し照れたように、

「かしこまりました。アーネス様、ジェス様。」

と言ってくれた。

その後はすぐに寝たけど、クラウディアさんとちょっとだけ距離を縮められた気がして、いい気分で寝られた。 


明けて今朝。

身支度を整えて朝食を待っていると、昨日より少し早くクラウディアさんが朝食の準備をしてくれた。

彼女曰く、

「予定より早く出発して、昼過ぎには向こうに到着する予定です。

マローダ様もすでにお越しになられております。

こちらへは、お二方の朝食の後でお見えになられます。

ガスリー様と打ち合わせをされておりますので、慌てなくても大丈夫ですよ。」

との事だった。

そうは言われても急ぎめに食事をとる。

ほんのり温めた蜂蜜入りのミルクが、美味かったな。


食器が下げられて行くのとほぼ入れ違いで、マローダさんがやって来た。

旅装になっていて、動き易そうなフワリとしたズボンと、同じようにフワリとした麻のシャツが爽やかだ。

一見すると農家のおっちゃんにも見えなくない。

「朝食は済んだようですね。出発を前に少し説明を。失礼。」

そう言って、椅子に腰掛けた。

「この後、昼食を前に北の村にある伯爵様の別邸に向かいます。

二百五十サナ程距離がありますので、馬車をご用意いただきました。

三時間程で到着する予定です。

道中騎士団から一班が護衛に付きます。

同行者は私とクラウディアさん、ソルディーヌさん、それとお二人の武術指導として、先月よりこちらに食客として滞在されているバルガス様となります。」

ソルディーヌさんも行くのか。

てかバルガスとは、誰だ。

「他領の山間の村がグリフィンに襲われた時に一人で、それも槍一本で撃破された事もある、屈強な戦士で、王国内ではいずれ並ぶ者が無くなるとまで言われるているお方です。」

うぇ、化け物じゃなくの。

ムカデの時に来てほしかったよね。

「そんなに強い人がいるなら、何故今回のムカデ討伐に参加されなかったのですか?」

ちょっと憤慨したようにアーネスが言う。

そうだそうだ。

もっと言ってやれ。

「騎士団の派遣が決まった際に、それを聞かれて食客の自分が出張って面子を潰すわけにはいかないと、固辞されたようです。」

ああ、そういう理由か。

まあ、納得出来なくはないか。

「体面など気にせず出ていればと、犠牲が出た事を聞いて謝罪されたと聞いてます。」

聞く限りでは、どうやら悪い人ではなさそうだな。

「話を戻しますよ。

到着した後は少し遅めの昼食を取っていただき、その後はゆっくり休んで下さい。

明日から魔法並びに武術の指導を受けていただきます。

ここまでで質問は。」

特にない。

アーネスも首を振っている。

「この後、バルガス様とお会いいただき、彼に騎士団の武具庫よりお二人に合う練習用の革鎧を見ていただきます。

ついでに木剣や、盾なども選んで行く事になってます。」

俺達のは駄目になっちゃったからな。


マローダさんが飾り紐を引いて人を呼ぶ。

やって来たのはキンバリーさんだった。

「お呼びですか?ご用向き、承ります。」

そう言った彼女は、今日はサイドポニーにしてる。

若草色のシャツと深緑のスカートがよく似合っていた。

エプロンはお揃いなのだろうが、隅に可愛らしい小鳥の刺繍が入っている。

いや、やっぱりおかしいって。

どう見てもクラウディアさんの年上には見えない。

どうなってるの、この人。


バルガスさんのところへと、マローダさんが案内を頼むと笑顔で、

「かしこまりました。

こちらへどうぞ。

お荷物はそのままで。

帯剣されて構いませんよ。」

と言って、俺達が剣帯を付けるのを待ってから、先に立って歩き出した。

基本、邸内では剣を部屋に置いていた。

最初に預かられなかったので、帯剣していても何も言われなかったと思うけど、気分的にそうしていた。

寝る時は流石に枕元に置いたけど、少なくともここの使用人の誰かが、俺達をどうこうするとは思えなかったし。


歩きながら、

「クラウディアの事をディディって呼ぶようになったんですってね。

私の事はキミーって呼んでくださらないのに。」

と言って頬を膨れさせていた。

正直、扱いに困る。

「キミー、年上の女性を初対面で、いきなり愛称で呼ぶのに抵抗があっただけで、他に他意はないですよ。」

アーネスが上手くフォローしてくれた。

やれば出来る男だ。

うん。

「わかりました。

そういう事にしておきます。」

まだ何か言いたそうだったが、その後は普通に案内してくれた。


邸内を抜け、正門から左手の城壁とつながった建物に入るとホールのベンチで、やたら厳つい、癖が強い暗い茶髪の男性が待っていた。

遠目にもデカかったけど、立ち上がって近付いて来ると威圧感が凄い。

今まで会った人の中で、一番高身長の人はアイザックさんだが引けを取らない位デカい。

半袖シャツの腕も、胸もパンパン。

足元はフワリとしたズボンを履いているが、太ももはパツパツだ。

一言で言えばゴツい。

もしくは厳つい。

「やあ、俺はバルガス、バルガス・バルドール。

よろしくな。

俺が指導する冒険者ってのは、お前達だな。

俺も冒険者だ。

ランクは五。

まだ上がったばっかだけどな。

お前達は期待のルーキーなんだってな。

とりあえず気楽にやろうぜ。」

そう言ってニカッと笑った。

意外と砕けた感じだ。

あと、若い。

多分、十は離れてないと思う。

「アーネストリー・トルレイシアです。ご指導よろしくお願いします。」

「ジェスター・トルレイシアです。よろしくお願いします。」

俺達も順に挨拶をする。

「バルガス殿、後はお任せしても?」

マローダさんがそう問うと、

「ああ、任された。」

笑顔でそう言って、手を振った。

「私は準備が残ってますので、これで。

荷物は運んでもらっています。

終わりましたら馬車寄せまでお越し下さい。」

そう言ってマローダさんは、キンバリーさんと一緒に戻って行った。


「さて、行くか。」

バルガスさんの掛け声で、俺達は武具庫に移動した。

「お前達、幾つだ?成人前か?」

歩きながらのバルガスさんの質問に、アーネスが答える。

「いえ、俺達は先日祝祭を終えました。バルガスさんは。」

「俺は二十四だ。

成人してから登録したから、今年で九年目だな。

ランクは?

無色って事はないか。

デカいムカデとやったって聞いたし。」

「薄桃に上がったばかりです。」

「その年で三なら上等じゃねえか。

依頼の破棄をせずコツコツやってたって事だろ。

俺はちょっとズルしたからな。」

「えっ、ズルなんて出来るものなんですか。

会員証を誤魔化すとか無理なんじゃ。」

驚いて聞くと、ちょっと困った顔をして両手を上げた。

「そうじゃなくて、俺は最初から採取を受けながら、遭遇戦狙いで動いたんだ。

そこそこの商家の次男で、装備はすぐに揃えられたからさ。」

そういう。

でもいきなりそれって凄いな。

「凄い。

そんな事、考えもしませんでした。

アーネスはともかく、俺はビビりなんで。」

「ハハっ、いいんじゃないか?

そういうヤツの方が長生きするって言うし。

おっ、ここだ。」

ズボンから鍵を取り出し、開けると手招きされて中に入った。


武具庫の中は警備隊の物と雰囲気こそ一緒だったけど、置いてある量が段違いだった。

「木剣は握りと重さを確かめて選んでくれ。

今回は円盾を持って行くけどそれは、実戦用のでいい。

先にアーネストリー、鎧を合わせてくれ。」

ん。

何か、練習用とは思えない、かなり実用的な革鎧から選んでるけど。

「あの、バルガスさん。

これって正規のやつなのでは?」

「ああ、一応は許可をもらってる。

貸与でな。

騎士団の物だから悪くないけど、お前達は王都に行くんだろう。

そっちで買えばもっと良いのを買えるしな。

結構稼いだって聞いたぜ。」

それならいいのか。

「てか、硬っ苦しいな。

お前らさ、もうバルって呼べよ。

さん付けもいらん。

何日か一緒にいて、その後は俺も王都に向かうから、同行させてもらうんだわ。

ずっとその調子じゃ、息苦しいわ。

それと冒険者ならあまり敬語を使うな。

安く見られるし、特に現場では敬語で話し掛けられたヤツが、先に狙われ易くなる。

理由はわかるだろ。」

指揮官として見られるって事か。

対人戦で。

キンバリー、クラウディアは

海外の標準的な愛称を使ってます

ジェスとアーネスは、まあ適当なんですけどね


今回、2話目以来の登場となる勇者パーティの1人、バルの登場です。

本来、もっと先での登場を予定してたのに、何か勝手に出てきた感じです


一応、筋や枠を考えていますが、ほぼ脳内垂れ流しなのでこんな事も起きちゃいます

後から、肉を盛ったり細部の変更をしたりしてる感じです

直近ではアイギスの風呂の下りとか、姐さんの魔法講座がそれですね


どうでもイイ?仰る通りでございます


最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます

モチベにつながるので、ブックマークを是非お願いします

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「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


次回 伯爵別邸へ その二

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