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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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会食

そうきたか。

いや、ありそうな話だし、チラリとも考えなかったとは言わんけど。

アーネスが困り顔で言う。

「お断りしたいです。」

「駄目じゃ。

三位の君達が辞退したら、参加した騎士達全員が受け取り辛かろうて。」

即答。

まあ、断われなくして来るよね。


「質問してもいいですか。」

バーゼル伯が目で促す。

「勲功第一と第二位はどなたで、何が褒美だったんですか。」

「言えん、と言いたいが、まあいいじゃろう。

第一は竜血のバーンズ。

メスはヤツが仕留めた。

報奨は普通に金子じゃな。

隣の領にある迷宮に挑む資金にすると言っておったわ。

次いでボルドー。

ヤツもまた金子じゃったが、それは全て、命を落とした部下達の家族へ、見舞金に上乗せするように言って来よった。

自分のだけでなくブルーノも含めたな。

君達の次がブルーノじゃ。

ブルーノも見舞金にと言っておった。」

あぁ、金か。

あって困らないもんな。

ボルドーさん、ブルーノさんの二人はいい使い方だし。

「では、クラウディアさんを。」

「はっ?ジェス、お前何言っちゃってんの。」

「北の舘での魔法の指導か。」

「はい。」

アーネスが俺とバーゼル伯との間で視線を、って言うか顔ごと行ったり来たりさせている。

忙しいな、お前は。

てか何を想像したのよ。

「構わんがよいのか、もっと上位の者に就けてやる事も可能じゃが。」

「今の俺達の実力から行けば、恐らくクラウディアさんにとっては役不足でしょう。

一週間かそこらで学べる事には限界があるので。

それに武術指導も了承頂いてますし。」

「直接、金を受け取るより良い買い物だな。

儂の腹は痛まず、君達は教師を無償で得られる。

しかも自分達の実力を測った上でか。

本当に楽しみな若者達だ。

そうは思わんかガスリーよ。」

「はい。仰る通りかと。」

顔を向ける先が三箇所に増えて、更に忙しそうだな、アーネス。

「よかろう。ガスリー、調整は任せた。」

「仰せのままに。」

「他に何かないのかね。

この際だ、腹を割って話そうではないか。」

そうだな。

もう多少は無茶を言っても怒られる事はない、かな?


「南の村を拡張するおつもりはないのですか。」

「なっ、お前。流石に失礼じゃ。」

アーネスが青褪めているが、とりあえず流す。

伯爵様は。

小揺るぎもしないか。

「今だからこそよな。

じゃが金はまだしも、人の問題がある。

そしてそれが解決しても、資材の調達が難題じゃ。

特に木材、次いで鉄。

北部の他領との境の、そう高くない山を裸にしても足りなくて、頭を悩ませておる。」

これは既に何らかの計画はしていそうだな。

山を裸にするって事は、ちょっとの拡張じゃないだろう。

「人手は、壁際から優先して募集を掛けたら、集まり易いのでは。」

「足りんな。

あそこは若い男手が少ない。

単純に人足を揃えるなら犯罪奴隷を使う手もあるにはあるが、村の住人が良い顔をすまい。」

「そちらは木を切り出したり運ぶのに回して、他の村の小作農に安く農地を与える、として数を絞って募集するのはいかがでしょうか。」

「どの程度が妥当かね?」

「他の八つの村から、多くて二家族ずつ。

南の村からも数家族。

さほど領内の人の広がりに詳しくない俺が考えうる人数ですが。

土地代は税金に上乗せする形で、十年単位で無償で貸付けるのが良いのではないでしょうか。

恩義を感じて鍬を持つ手にも力が入るでしょう。」

「だが、小作農を失った地主は面白くない。」

「税の減免で不満はある程度は抑えられるでしょう。地主達が人手を確保するまでの間で構わないと考えます。」

「何を作付けする。」

「サガナッシュ(サトウキビ)が良いと考えます。

二つの高級品を得られるからです。」

「砂糖はまだしも、もう一つは何じゃ。」

「紙です。」

「紙じゃと。どういう事だ。」

「絞り滓を使うのです。

砂糖を作る時の燃料でもいいかもしれませんが、いっそ砕いて紙にしたほうが、収入は上がるでしょう。

技術が無ければ材料として売ればいいですし。」

「ふむ、それはなかなか良い考えじゃ。

資材の調達も幾分楽に出来そうじゃな。

なかなか面白い事を考えよる。

君は博識じゃな。

どこでそのような知識を得た。」

あ。

やられた。

ていうかやっちまった感がある。

さて、どう答えた物か。

今回もクラウディアさんの時と同じで、アイツの知識だとは言えない。


「俺は、院に入るまで、北東の村で暮らしていました。

父に続いて母も亡くなり、祖父母も俺が生まれる前に亡くなっていたので、院に送られたのです。

小作農の子にも友達がいましたし、その暮らし向きも知っています。

その子の父親がよく言っていたのです。

『いつか自分の畑を持って腹一杯食わせてやる。こ〜んなでっかい家でな』って。

砂糖の原料は母が亡くなる前に話していました。

甘い草を絞って砂糖を作っていると。

紙は木や布のボロが材料なのは、割と誰でも知っていますが、筋が多い草でも作れると父が言っておりました。

父は猟師でしたが本を読むのが好きな人だったので。

すでに聞き及んでおられると思いますが、俺は忘れることが出来ないので、これらの事も覚えておりました。」

父の話はほぼ嘘だが、全体に無さそうな話ではないだろう。

行けるか?

「それを組み合わせたという事か。

思っていた以上に頭が回るようじゃな。

知っている事を活用するのは、存外難しいもの。

それをこのように自らの考えに落とし込んで、活用出来る者はそう多くない。

どうやら政務の才もあるようじゃな、君は。」

よし、乗り切った。

乗り切ったよな?

「参考にさせて貰おう。ガスリー、実現出来そうか。」

「サガナッシュの苗さえ手に入れば、おそらくは。

国でも砂糖の増産を進めております故、そう難事ではないでしょう。

農地を増やすのが目的となれば、防壁用の木材の目処さえ立てば、早い時期から進められるかと。」

「うむ。

木材は他領にも当てがある。

後は調整だな。

検討に入ろうではないか。」

「かしこまりました。」

伯爵様が検討に入っちゃったよ。

ほぼ決定って事だよな、これ。


「褒美はどうしたら良いかのう。」

ん。

「発案者の一人として、報奨金を出すのがよろしいかと。

官職に就けるのは本人が嫌がりそうですし、周りの反発も大きいでしょう。

実際に計画が動き出してからで、構わないかと。」

んん?

「相分かった。

しかしこの領内でじっとしておるかのう。

此度の件でも、王城に登る事をそっち退けで無茶をしよった。

計画が動いた時に居らなんだ、なんて事になりそうじゃ。」

「冒険者を続けておられたら、そこはどうとでも。

指名依頼で村の護衛等の名目で呼び戻せばよいかと。」

んんん!?

「まあ、なるようになるじゃろうな。

さて、アーネストリー君が困った顔で腹を空かせておる。

運ばせろ。」

「はい。」


俺の困惑とアーネスの混乱を華麗に無視して、ガスリーさんがパンパンと手を打った。

美味しそうな料理がテーブルに並んだが、ちょっとそれどころじゃ。

「さて食事にしよう。今日のメニューは何じゃ。」

「本日は、タロウオックスの干しハイダ煮込み、それと大振りの良い川魚が入りましたので、香草と共に蒸し焼きにしたものをご用意いたしました。」

「ふむ、味付けは庶民風にしておろうな。」

「はい、お二方には貴族風は可哀想でしたので。」

「ならば良い。儂も楽しみじゃ。」

伯爵様が料理を口に運ぶ。

一切れがデカい。

歳の割に健啖家のようだ。

「うむ、これは良い。

さあ、君達も食べたまえ。

冷めてはもったいない。」

まだ困惑が抜けていなかったが、俺達も料理を頂いた。

タロウオックスの煮込み、ウマっ。

干した果物を一緒に煮込んであるけど、始めての味だ。

ハイダって果物を知らないけど、美味いなこれ。

酸味、塩味、甘味が口の中に広がって、果物の香りが鼻に抜ける。

肉もトロトロで、直ぐに口の中で崩れていく。

アーネスを見たら、頬張ったまま驚いてる。

モグモグしながら、こっちを見んな。

わかったから。


魚もヤバい。

バターと香草の香りが、匂いの時点でもう美味い。

ほんのりピンクの身は柔らかくてしっとりしている。

アイツの知識のニジマスに近い、そして美味い。

バターと塩と香草のシンプルな味付けが、むしろいい。

濃い煮込みの後なのに、物足りない感じが全然しない。

凄いな、コレ。


「お二方は酒はもう飲まれますか?

良ければ当家自慢のミードをご用意しますが。」

ガスリーさんに勧められては断われない。

いただきます。

「儂も貰おう。

そうじゃな、とろりとするまで冷やした物を。

君達も試してみるか?」

「えっ、あ、はい。」

アーネスが答えると、ガスリーさんがマイヨールさんに目配せをした。

下がったマイヨールさんは直ぐに、カートを押して戻ってくる。

銀色に輝く、複雑な装飾で飾られたアイスペールに、碧く色付けされたガラス瓶が二本刺さっている。

「氷はいらんよ。」

バーゼル伯の言葉に、

「心得ております。」

とガスリーさんが短く答えた。

ガスリーさんが小さな銀のカップで、匂いを嗅いだ後に一口含んで確認する。

頷いてからソルディーヌさんを促すと、俺達に脚の付いた、細くて薄いグラスで出してくれた。

「先代様が王家に献上した際、「草海の雫」と銘を賜りました当家自慢の一品でございます。

お楽しみ下さい。」

注がれた酒の冷たさで薄くグラスに水滴が浮く。

ちょっと手が震えたけど、グラスを手にして飲んでみた。

ウマっ。

何コレ。

ウマっ。

バーゼル伯も俺達の表情を見て自慢気だ。

この前、姐さんと飲んだのも美味かったけど、これはちょっと別物だ。

完全に表現する言葉が思い付かない。

自然に溜息が出るほど美味いって、こんな経験初めてだ。

「さて、今後の予定はクラウディアを魔法の指導に付ける事と、武術指南を付ける事はさっきの話で出ておった。

北の館に滞在する事も聞いておろう。

君達はそこで王城からの使者を待つ事となる。

既に使者が出立したと、使役魔禽で連絡が来ておる。そう長い期間にはならんじゃろう。

どうやら酒も気に入ったようじゃな。

君達はゆっくり食べてくれ。

儂はまだ執務が残っておるでな。

先に失礼する。

マイヨール、ソルディーヌ後は任せたぞ。」

俺達が感動しているうちに、いつの間にか食べ終わっていたバーゼル伯がそう言って立ち上がった。

「楽しかったです伯爵様。ごちそうさまでした。」

「ありがとうございました。」

「よいよい。

儂もよい息抜きになった。

ジェスターからは良い知恵をもらったしの。

ではな。」

そう言ってガスリーさんを伴い退出する伯爵を見送って、俺達は食事を続けた。

「余ったこちらは後程、クラウディアに部屋まで持たせます。

他のミードに比べ酒精がやや強いので、口当たりが良くとも飲み過ぎにはご注意を。」

マイヨールさんが最後にそう言ってくれた。

気疲れもありはしたが、楽しい夕食で大満足だった。


しかし発案者の報奨金だと。

嬉しいは嬉しいけど、それはそれでちょっと気が重い。

やっぱり、やっちゃったかも。

犯罪奴隷は重労働を課せられた、懲役囚をイメージしていただければ幸いです

m(_ _)m


最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます

モチベにつながるので、ブックマークを是非お願いします

感想を、こうポチッと評価やイイネで表して頂けたら幸いです

「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


次回 伯爵別邸へ その一

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