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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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楽しい修練

三方を耐魔煉瓦の高い壁に囲まれた、練習場。

魔法の試射だけでなく、魔術師の戦闘訓練にも使われているらしい。


純粋な魔術師は近接戦で脆いイメージがあるが実際そうで、発動までの時間差との向き合い方が生死を分ける鍵だと、クラウディアさんは言った。

向き合い方って表現に、一瞬首を捻ったがラグを常に頭に置いて立ち回る思考力が大事なのだと言う。

「今、私とお二方のこの距離で、いかに強力な魔法が使えたとしても、発動までに一を数えると魔術師は死んでしまいます。

かと言って威力が低い魔法で牽制を繰り返しても、やはり倒せません。

兼ね合いが大事なのです。

更に言えばこの間合いに入られる事が無いように、立ち回る準備が重要なのです。」

座学が終わったかと思っていたが、ここに来ても先ずは説明からだった。

でも、面白いから退屈はしない。


「さて、説明はここまでにしましょう。奥の壁をご覧ください。

的が描いてありますね。

お二方の足下の線から奥の壁までちょうど五十サラです。

今日はあの的に魔法を打ち込むのが最終課題となります。」

えっと、俺達は着火と放水しか使えないと伝えましたよね。

いきなり難問過ぎません。

「ご安心を。

まずは私が手本を見せます。」

そう言うと、彼女の額の辺りから先が鋭く尖った氷が飛んで行き、奥の壁に当って砕けた。

おお、凄い。

アーネスは普通に声に出して驚いている。

「今のは氷の矢の魔法です。

ちょっと難易度が高めの魔法ですが、こちらを習得して頂く事から始めましょう。」


この魔法の肝は「火」の魔法の応用だと教えられた。

火の魔法は燃やすだけではなく、温度を操る魔法なのだとクラウディアさんは言う。

「あっ、加熱か。」

「その通り。

加熱の逆を行う事で、「冷却」の魔法になります。

冷却は分類としては水魔法ですが原理としては、火の魔法に近いでしょう。

真逆の効果なので水魔法なのです。」

なるほど。

アーネスの頭の上には大きく「?」が出てる。

「アーネス、沸かしたお湯を放っておいたらどうなる?」

「冷めて水に戻る。」

「そうそう。

温めるのが加熱。

冷めるのが冷却。

真逆だけど、温度の上げ下げの違いってだけっていう話だよ。」

「ああ、なるほどね。

やっとわかったわ。」

「いい説明ですね。

次があれば私も使わせて頂きましょう。」

やだ、褒められた。

普通に嬉しい。


クラウディアさんは魔法で地面に窪みを作り、そこに放水で水を溜めた。

更に加熱の魔法で一度沸かした後で、今度は冷却の魔法を詠唱して見せてくれて、凍らせた。

めちゃめちゃ速い。

「別の詠唱がありますが、この冷却の魔法を念頭におくと氷の矢の発動か速くなります。

ちょっと見ていて下さい。」

そう言うとまた別の詠唱をして、今度は同じような軌道で水の玉が飛んで行った。

「今のは水球の魔法です。

次は氷の矢を詠唱して見せます。」

そう言うとまた別の詠唱をして、氷の矢を飛ばした。さっきよりは詠唱している事を除いても、発動が少し遅い気がする。

「これは余興として見ていて下さい。

水球と冷却の二重詠唱をして見せましょう。」

そう言うと冷却と水球の二重詠唱をして、同じように氷の矢を飛ばした。

「このように、下位の魔法を組み合わせる事でより上位の魔法を再現する事も可能なのです。

ただ。」

「発動が遅い。」

「その通りです。

慣れればほぼ同じ位にはなるでしょうが。

さて次は氷の矢を放つ時に、冷却を念頭に置いてやって見せましょう。」

また詠唱して氷の矢を放ったけど、さっきより全然早い。

一番最初の無詠唱とほぼ同じだった。

「意識を置くだけで、発動時間に差が出るのです。」

めちゃめちゃ、面白いしわかりやすい。

アイツの知識の海軍元帥が言った、「言って聞かせ、やって見せ」ってやつか。


「説明が長くなりました。

アーネストリー様がソワソワされているので、実践してみましょうか。

まずは、加熱。

次に冷却。

水球。

水球と冷却の二重詠唱。

氷の矢の順で成功する度に次に進みましょう。

二重詠唱は余興のつもりでしたが、昨日のお二方の事を思うと出来ると思いましたので。」

笑顔を向けながら、クラウディアさんが言う。

うん、美人さんだ。

彼女がもう一つ地面に窪みを作ってくれたので、まだ試していなかった放水の魔法を使わせてもらった。

その後、二人して練習に取り掛かった。


俺もアーネスも水球まではよかったけど、二重詠唱で躓いた。

アーネスは魔力量が多いだけあって、加熱と冷却の速さは凄まじかった。

ただ、範囲が広くて危うく火傷しそうになったり、一緒に凍らされるところだった。

今はそのままでいいとクラウディアさんが言ったので、気を良くしたアーネスは続けてやった水球でもパワーを見せつけた。

ほぼ加減していないのか、人の頭サイズの水玉をギリギリ目視出来るかどうかの速さで放ち、奥の壁に当てていた。

クラウディアさんが見せた水球は、拳大でやや弧を描いていたのに対して、アーネスは速さもあってほぼ直線で飛んだ。

まあクラウディアさんは、実演の為にかなり制御していたんだと思うけど、鼻息が荒くなるアーネスはちょっと頂けないと思う。


俺はクラウディアさんの実演を真似た。

速度、大きさも出来るだけ忠実にやろうとしたが、壁に届かなかったり、途中で霧散してしまったりと、丁度ピッタリっていうのは、それなりに難しい。

「フフ、どうやら魔法では俺の勝ちのようだ。」

とか言い出したアーネスは放置して練習する事、数回。

やっとクラウディアさんの大きさと軌道をコピー出来た。

「これは随分、制御に力を入れていますね。

まさかここまで寄せられるとは。」

と関心したようにクラウディアさんが言った事で、ようやくアーネスも俺がやっていた事に気付いたようだ。

「そう言う事かよ。

じゃあさ、ちょっと全開でやって見せてよ。」

アーネスがそんな事を言ったので、やってみる事にした。

さて、どんな感じにするか。

「よし。」

出来るだけ小さく、出来るだけ速く。

速さで崩れないように、形を維持して。

練習で慣れてきたので、更に無詠唱で。

イメージが固まったタイミングで、魔法を発動させる。

子指の先位の大きさの水球が、発射と同時にシュンと音を立てて、目では追えない速さで飛び、壁に当ると、パンッと小さく穴を開けてその周りに蜘蛛の巣状のヒビが掌サイズで走った。

「は?」

「これは素晴らしい。

殺傷力は脅威ですね。

しかも無詠唱ですか。

制御、発動時間、どれも一流と言えますよ。」

やり過ぎたかな。

「スゲェ、スゲェよ、ジェス。

なんだよ今の、ヤベェ。

負けてらんないな。」

コイツには勝てん。

キラッキラで盛り上がるアーネスに素直に感心した。

俺なら、嫉妬しそうだ。


「ヨシ、二重詠唱行ってみよう。」

そう言って始めたアーネスだったけど、凍らなかったり、届かなかったり、手元で破裂したりとかなり苦労していた。

何故、破裂する。


俺も同じような失敗した。

流石に手元で破裂はしなかったけど、速度がなかなか出せなかった。

「苦労していますね。

コツはまず凍らせる。

これを意識して見て下さい。

その後は水球を飛ばすのと同じ感覚ですよ。」

なるほど、水球を作る、飛ばすの二段階でやっているのか。

そこに凍らせるって工程を挟む感じね。

おっ、出来た。

「いいですね。良く出来ています。

さっきのようにアーネストリー様に助言を差し上げて下さい。」

う〜ん。

どう言えば伝わるか。

「アーネス、一回だけ水球をやってみて。

その時に、水玉を作る、飛ばすって感じでキッチリ二段階でやる感覚で。」

「わかった、やってみる。」

ちょっと悔しそうに言って、アーネスは水球を発動させた。

「作る、飛ばす、作る、飛ばす。よし。」

慣れてきたのか、拳二個分位大きさの水球が飛んで行く。

「いいよ、いいよ。

氷の矢は、作る、凍らせる、飛ばすの三段階。

それと詠唱の言葉の意味を、一節づつしっかり想像しながらやってみろよ。

お前、パワーは桁外れだから、飛ばすのは力技って感じでもいいと思うぜ。」

「わかった、やってみる。

でもさ、「凍てつく」ってどんな感じかわかんないんだよなぁ。

言葉の意味はわかっても想像出来ないって感じでさ。」

今度は悔しさは感じない。

普通に悩んでいるようだ。

「そうだなあ、この辺で凍てつくような寒さって、感じるような事って無いからな。

あっ。」

「何だよジェス。何か思い付いたか。」

これなら行けるかな。

「お前さ、ちょっと後ろ向けよ。」

「なに?ほら。」

サッと詠唱して小さな氷の矢を何個か作って、アーネスの背中に首筋から放り込んでやった。

「う、イィ〜。」

見ていたクラウディアさんが吹き出す。

「な、何すんだよっ、ジェス!

つ、冷てえ、取って取って、早く、取れって!」

クスクス笑うクラウディアを無視して、シャツの上から押さえ付ける。

「バカ、おま、何しやがる!マジでやめて、やめて~。」

グネグネするアーネスを見て笑いそうになったが、コレはアーネスのイメージの為だから頑張って堪えた。

「ほらゴリゴリ、ゴリゴリ。」

「うぅわ、バカ、ゴリゴリじゃねえって、冷てえ!

覚えてろ、うわ、冷た!

助けて下さい、お願い、助けて、笑ってないで助けて、冷たい、冷たいって!

助けて、クラウディアさ〜ん。」

ちょっと可哀想になって来たので、裾をめくって氷を落としてやった。

あら真っ赤。

冷たそう。

「お前、後で絶対仕返ししてやるからな!」

「わかったろ、凍てつくって感じ。」

「あァん、んん?

ああ、そういう事ね。

ってか、やり方考えろよな。

クラウディアさんも止めて下さいよ。」

話を振られたクラウディアさんは、一つ咳払いをして澄ました顔で答える。

「ジェスター様はお優しいほうですよ。

私がアーネストリー様と同じ事を師匠である母に言った時は、桶で氷水を頭から何杯もかけられました。」

それはもう、拷問なのでは。

想像したくもない。

凄いスパルタだったんだな、クラウディアさんのお母さん。

どうやらアーネスは、話を聞いて想像してしまったらしい。

肩を縮こまらせてブルブルしている。

クラウディアさんなりの、アシストだったのかもしれない。

やけに実感がこもっていたけど。

「さて、想像が消えないうちにやってみろよ。」

何か言いたげな表情をしてジトっと見ていたが、溜息を吐いてから詠唱を始めた。


俺の助言の賜物か、クラウディアさんの話のおかげか、アーネスは二重詠唱を成功させ、キラキラした笑顔でガッツポーズを決めた。

最後まてお読みくださった方々、ありがとうございます

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「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


次回 これもまた修練

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