第二、第三の秘密 その二
イラついて思わず怒鳴ったが、前世?の俺にあたる人物はシレっと返してきた。
「イヤ、俺から才能とかそういった諸々が、神々を通じて渡った事さえ分かれば、最低限はお前が持ってる謎知識の秘密はわかるし、長年の疑問は解消するだろ。」
イラつきは収まらないが、もっともではある。
「それに神々の管理システムとか、上位神が存在するとかそんな情報は精神衛生上、無い方がいいかと思ってさ。」
やっぱりイラつきは収まらない。
そうなんだけども。
知りたくなかったと思うけども。
「てか、楽しみの部分はどこに行ったよ。」
「多分だけど、はぐらかされた。
直接関与する力はあるけど、成り行きを見守っているようだし、加護とかである程度のコントロールはしているっぽいけど、正確にはわからない。」
質問をした事で少し冷静になれた。
「正確にはねえ。
ある程度の推論はあるわけだ。」
「ああ。
いよいよヤバいとなったら、俺に持ち掛けた様な事で介入するけど、それも込みで成り行きを見守るのが楽しみなんじゃないかと思う。
良い方に転ぶのはわかっているけど、過程を楽しむみたいな。」
「万能でも、まして全能でも無いけど、全ての生き物の一生を観劇とか、ドキュメンタリー感覚で楽しんでくださってるわけね。」
嬉しくないな。
「まあ、少なくとも邪神ではないと思うよ。
良い方面てのは上限がないから手出しはしないけど、最悪には辿り着く可能性があって、そうならないように手助けしてくれるって事だからさ。」
なるほど、そもそもの「天秤」がアンバランスな訳か。
「とはいえ、誰かに覗き見られてるって状態は気分が悪い。」
「気にしてもしょうがないだろ。
お前の世界は神が身近な世界だろう?
だからと言って全員が清廉潔白って事も無いだろうし、割り切るか慣れろ。」
「まるっきり他人ってわけじゃないのに他人事だな。
悪徳の限りを尽くしてやろうか?」
ソイツは鼻で笑うと、からかうような口調で言ってきた。
「いや、根っこの部分が善人だってわかってるよ。
お前には無理だろ、そんなの。」
「何がわかるってんだよ。」
「見てたし。」
食い気味で言われた。
その言葉の意味が理解出来ない、っていうかしたくない。
「はっ?」
「見てたから、生まれた瞬間からどころか、お前のオカンの腹の中から、今の今まで、全部。」
「イヤイヤイヤ、おかしいだろ次の転生まで五年って話だろう、何で………。」
「時間軸のズレがあるから、全部見れたんだよ。
そっちの世界の中では十五年でも、直接そっちの世界の中に居たわけじゃないから、時間の流れがズレてるんだよ。」
時間軸のズレってそういう意味か。
「お前も覗き魔か。」
「酷い言い様だが、まあそうだな。
俺は神じゃないから、お前限定だがな。」
抉ってきやがる。
元俺のクセに。
別の人格らしいから他人か?
ややこしいな。
「なあ、聞いていいか。」
「何を。」
「何で俺と話したかったんだ?」
少し考え込んだ後、この会話の中では珍しく迷いながら言葉を口にしている様に感じた。
「動機の言語化って苦手な方だが、そうだな、幾つか理由はある。
一つは好奇心。
俺の才能とか、魂の本当に極々一部とはいえ、どんなヤツに分けられるのか見てみたかった。
話せば、よりどんなヤツかわかり易いしな。」
「なるほどな。
それで、他にもあるんだろ。」
「単純に心配だったんだよ、お前が。
どんなヤツかはわからないが、知らないハズの知識を、生まれる前の、母親の胎内から持って生まれるって、俺には想像すら出来ない事だから。
不安とか恐怖とか、そんなのに押し潰されたりしないかってな。」
「そうか。」
何の、どういう「そうか」はわからない。
ただどういう訳か、すんなり納得出来た自分がいた。
「知識はあっても、段階を踏まなきゃ実現出来ない技術ってのもあるし、俺の知識の中にはその前段階の知識が無いモノも山程ある。
時間ていうのは有限だ。
必要だと思える知識の取捨選択は時間がある時に、やれるだけでもやっておけよ。」
「ああ。」
なんとなくわかった。
コイツとの会話が終わりに近付いているのが。
「後な、俺には加護ってヤツは分からん。
細かい仕様とか効果とかはさっぱりだ。
そもそもなんて加護が与えられたのかも知らない。
だけどコレだけは俺でもわかる。
変に使命感とか義務感に縛られるな。
無責任は駄目だと思うけど、神だって楽しんでる部分もあるようだし、やりたいようにやれ。
後はそうだな、バランスっていうのは結構重要なキーワードだと思う。
善悪の関係とか、外的要因の有無とか、フィクションだから完全に当てには出来ないが、こっちの創作物の知識は参考に出来るだろ。」
「ああ。」
沈黙。
だが、コイツがまだそこにいるのはわかる。
「あっ。」
「お前、この状況で一番言っちゃ駄目なセリフだぞ、それ。」
「ああ、すまんな。
でもな、最後に一個だけ言っておこうと思って。」
「何を。」
「ありがとうな。
変な感じだし、理由は思い付かないけど、この短時間でお前で良かったと思った。
だから、ありがとう。」
「最後の最後に、一番返事に困る事を言うなよ。」
「じゃあな。
来世、楽しむわ。」
「待て待て待て。
今この状態、どうなってるんだよ、その説明くらいして行け。」
「それか、安心しろ。
精神だけこの境界っていうなんにもない、平行多次元の緩衝空間の様な所に連れて来てもらってるだけだ。
俺と別れたら、直ぐに目覚めるよ。
時間経過も十秒以下らしいし。」
「それも説明受けてなきゃ知らない話だよな。
そういう事は先に言っておけよ。」
ソイツが苦笑いしているように感じた。それなり長い話をした中で初めて感じた感覚だ。
「今度こそ、じゃあな。」
「ああ、兄弟。」
「辞めろよ、馬鹿。」
ちょっと照れたように言うと、ソイツの存在が目の前から消え失せた。
「どっちが馬鹿だ。
とんでもない不発弾、残して行きやがって。」
ちょっとだけ、寂しさを感じた。




