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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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蒼槍城 その三

「どうしたものかな~。」

手持ちが金貨八枚以上。

王都で買い物するとして、鎧、手甲と脛当ての加工、ダガー系のサブウェポンとかか。

俺達の世界にマジックバッグとかストレージ系の魔法とかあるのかな。

あれば欲しいけど、聞いた事ないし、あっても高そうだな。

いっそ、宿はやめて部屋を借りるとか。

でも、こっちに帰って来てからか。

王都でどうなるかわかんないしな。

つらつらと考え事をしていたら、アーネスが帰って来た。


「トイレ、ヤバかった。

何か臭くなかったし、むしろちょっといい匂いがした。

魔道具の手洗い桶とかあって、何回も試しちゃったよ。」

魔道具の手洗い桶?何だそれ。

「あれ、着替えたんだ。俺もそうしよ。」

そう言って着替えを取り出し、いそいそと着替え始めた。

着替え終わるのを待って、クラウディアさんを呼んでみよう。

「これで大丈夫かな。」

シャツは同じ。ズボンは暗い焦げ茶。

シンブルだから、派手さは皆無だけどみすぼらしくは見えないだろう。

「うん多分。」

そう言ってから、クラウディアさんを呼ぼう立ち上がった時、ノックがなった。

「クラウディアです。お飲み物と何か摘んでいただける物をと思いましてご用意致しました。」

すぐに開けるとカートに焼き菓子や、アイツの知識で言うカナッペのような物と、カップとティポット、ハニーポット、それと砂糖壷。

えっ砂糖壷!?


お茶はそれほど珍しくない。

アイツの知識で言う紅茶ではなく、所謂薬湯のようなもので、領内でよく飲むのは紅茶に見た目は似てるけど、より毒々しい赤い色のものだ。

赤くて小さなザッカの実を干したものと、ハクの葉を刻んで乾燥させた物を煮出して飲む。

ほんのり甘みと渋み、苦味を感じるけど好みで蜂蜜を垂らして飲む人もいる。


それに対して砂糖はお高い。

料理やお菓子に使われているけれど、一般家庭で砂糖単体買う事は滅多にない。

祝祭のお祝いとかの慶事の際に、近所の何軒かで出し合って買い、分け合って使う。

小分けで売っている物は、その分高いので大きめの物を買うのだと言う。


院では二年に一度、役所から一塊だけ与えられる。

アイツの知識で言う、赤糖のブロックだ。

熱を出した子に少し甘くしたホットミルクを出していたけれど、それに蜂蜜と一緒に削って使われていた。

小さい子も多いからそれなりに見た事がある。

俺は一度も飲んだ事はない。

何せ神に与えられた健康体だからな。

見る度に、ちょっとだけ羨ましかった。

それ以外では一度しかなかったけど、その二年分が余った時に、院の母さんが焼き菓子を焼いてくれた。

ほんのり甘くてホロホロ崩れて、美味しかったな。

まあ、高いのは知ってるけど、買った事がないので金額は知らない。

しかも、粉になったものや、精白された砂糖は見たこともない。

というか、蜂蜜を使った甘い物の方が多い。

他領では知らないけど、規模の違いはあってもバーゼル伯領内の各村で養蜂を行っている。

そんなに高くないから、小壷で銀貨一枚とかで売っている。

アイツの知識の黄色いクマが抱えているようなヤツだ。


俺が驚いているのを見て、怪訝な顔をするアーネス。

クラウディアさんは、涼しい顔でアーネスが座るテーブルに軽食なんかを並べていく。

最後にカップにお茶を注ぐと直立不動になった。

てか紅茶っぽいけど、マジか。

「どうぞ。

紅茶にはお好みで、蜂蜜や砂糖をお使い下さい。」

「えっ、砂糖?どこに。」

アーネスが驚いたように言う。

まあ、ブロックの物しか見てないからな、俺達。

綺麗に指を揃えて砂糖壷を手で示し、

「こちらの砂糖壷からどうぞ。」

と言った後、スッと蓋を開けた。

白い砂糖だ。

「あらかじめ、粉状に砕いてふるってあります。」

棒砂糖を砕いてあるのか。

アイツの知識では、棒砂糖をそのままテーブルに出して財を誇示するとかあるけど、俺達の世界では無い文化なのかもしれない。


気後れはあるけど、スプーンで一杯だけ使わせてもらう。

香ってくる匂いも、味もまんまアイツの知識の紅茶だった。

てかウマっ。

「何これ、ウマっ。」

俺の真似をして砂糖を入れたアーネスもその味に、思いっきり素が出てる。

それを見ていたクラウディアさんは、少し目元を緩めると、

「それではごゆっくりお寛ぎ下さい。

そのまま聞いて頂きたいのですが、時間が取れないとの事で、伯爵様とのお食事は明日の晩となりました。

今晩の食事はお客様用の食堂をご利用頂く予定でしたが、ガスリー様がお二方が気を使われると仰られまして、こちらにお持ちして、給仕をした後に、ご自由に召し上がって頂く事となりました。」

と言った。

ガスリーさんに感謝。

「会食が延びた事で、本来は明日の昼までにこちらを発って頂く予定でしたが、そちらも一日延びる事になります。

それに伴って、マローダ様がお越しになるのも、明後日の朝との事です。」

一旦言葉を区切ったクラウディアさんは、こちらの様子を窺うと話を続けた。

「明日はこちらで一日過ごして頂く事になりますが、何か必要な物は御座いませんか?

ガスリー様を通して伯爵様から仰せつかっておりますので、何なりとお申し付け下さい。」

あ〜、一日足止めか。

何をして時間を潰せばいいんだ。


「それでしたら、騎士団の訓練に一日参加させてもらう事って出来ますか?」

おお、アーネス。

いいアイデアだな。

「ここでは即答出来かねますので、朝までに確認させて頂きます。」

「もしくは、魔法の基礎的な本とかあればお借りしたいのですが。」

俺がそう聞いてみたが、アーネスはちょっと渋い顔だ。

あんまり苦手意識を持つなよ。

「それについても、即答は出来かねます。

書庫の利用は使用人にも、休日に限り許されておりますが、持ち出し出来る物とそうでない物、またお客人のご利用も可能かわかりませんので。」

紙はあっても、本自体は安くはない。

そこまで印刷技術が広まってないからだ。

院の母さんが持っていた英雄譚が書かれた本は、印刷物だったが、

「高いから破らないでね。」

と借りる時に釘を刺された。

飾りはないけど革張りでずっしりしていた。

焼ごてで背表紙にタイトルが入ってたけど、あれが普通の本なら高かろう。

クラウディアさんが言うのも頷ける。


「違う話になるんですけど、いいですか?」

「どうぞ。」

「今着てる服で問題ないですか。伯爵様に会うのに失礼だったりしませんか。」

俺の質問に、クラウディアさんは片眉をピクリと動かすと少し困った顔をした。

「伯爵様は寛大なお方ですので、今のお召し物でも特に問題無いでしょう。

ただ、失礼ながら申し上げますと上着をお召になる事をお勧めいたします。」

上着とな。

ピンと来ない。

「わかり易く説明すると、貴族の方々はどんなに暑い時でも、人前に出る時は上着をお召になられます。

またガスリー様と私達の違いは上着の有無です。

伯爵様に直接お会いしてご指示を受けたり、お世話する者は皆上着を着用しています。

もちろん伯爵様は私達にも普段からお声を掛けてくださいますし、何かと気に掛けてくださいます。

それでも使用人同士での上下関係はございますし、伯爵様に面会される方は皆様、上着を着用されておられます。

そういうマナーなのでございます。」

なるほど。

アイツの知識のビジネスマナーみたいな物か。

「でしたら、代金を支払うので、古着で構いませんから買って来てもらう事は出来ますか。

華美でなく落ち着いた感じの、今履いているズボンに合わせる感じで。」

「それでしたら、出入りの商人に持って来させましょう。

予算は如何ほどで?」

参った。

靴下くらいしか買ってないから相場がわからない。

ここは正直に言おう。

「服の相場がわかりません。

靴下以外は自分で買った事がなくて。

殆どがお下がりです。」

「お若いですものね。

今お召になられていらっしゃる、シャツとズボンに合わせるのですね。

それでしたら淡い砂色の物か、無難にズボンの色に合わせてみてはいかがですか。

古着でよろしいのでしたら、一着大銀貨二枚で少しお釣りが来るでしょう。

それか濃茶で革の物か、黒で布のベストでもいいかもしれません。

でもそれだと長袖のシャツが必要ですわね。」

ベストでもいいのか。

「革のベストとシャツだと、どれくらい掛かりますか?」

「一枚が安くなるので大銀貨三枚もあれば。

革製品の服もそれほど高くないですし。」

麻布は見るけど、綿の布は見てないな。

魔物の革もこの辺なら事欠かない。

そういうものか。

アイツの知識では皮革製品の方が高いんだが、技術的な感じで。

「どうする。」

アーネスに話を振ってみる。

「わからん、任せた。

あ〜でもベストの方がいいかな。

普段から使える感じのなら。」

まあ、レザージャケットみたいな革鎧ってのもあるし、冒険者でもベストを着てる人いるしな。

「じゃあ、冒険者っぽさを残しつつ、粗野な感じが無くて、実用出来そうな厚みのあるベストと、それに合わせるシャツはクラウディアさんにお任せで。」

そう言ってから、とりあえず俺が代金を支払った。

「お釣りはクラウディアさんに。手数料という事で。」

「いけません。

私共もお給金はしっかり頂いております。」

おっと。

チップのつもりだったけど良くないのか。

結構、強い口調で返された。

「お礼のつもりでしたが、気分を害されたのなら謝ります。

失礼しました。」

「いえ、貴族家では情報が漏れたり不正を防止する為に、少額でも受け取る事は堅く禁止されています。

どこの貴族家でも同じだとも教えてられております。

馴染みのない方には、時折おられますので気にしておりません。

高級宿と同じ感覚で口にされるのでしょう。

同じような職務内容ですから。」

なるほどね。

確かに。

「こちらは置いておきますので、お召し上がり下さい。

私は下がらせて頂き、商人と話して参ります。

この時間でしたら、まだ何人か邸内に残っておりますので。」

丁寧にお辞儀をして、クラウディアさんは出て行った。


さて、少しこの後について考えよう。

お読みくださって頂いている方、ありがとうございます

モチベにつながるので、ブックマークを是非お願いします

感想を、こうポチッと評価で表して頂けたら幸いです

「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


次回 修練(ある意味)

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