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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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午前、面会ラッシュにて

「また、助けられちまったようだな。」

そう言いながら入って来たグーバさんの後ろには、彼と同年代の細身で小柄な女性と、その人のスカートの裾を掴み、その女性とそっくりな顔をした女の子がいた。

くりくりとした目と、ツインテールを三つ編みにした髪型の、なんとも可愛いらしい。


グーバさんの手には何か入った袋がある。

「主人を助けてくれて、本当にありがとうございます。

娘のクインと、妻のリファです。」

挨拶の後、頭を下げられて、慌てて頭を上げてもらった。

「気持ちは十分伝わりましたから、頭を上げて下さい。」

そう言うと笑顔を見せて顔を上げてくれた。

「お兄ちゃん達、ありがとう。」

少し恥ずかしそう言うと、クインちゃんはリファさんの足にしがみついた。


「はは、誰に似たんだか、照れ屋でね。

これ、よかったら食ってくれ。

ウチで取れたやつの干しマーメルだ。」

そう言うとクインちゃんに渡し、受け取ったクインちゃんは、怖ず怖ずといった感じでベッドに近付くと、俺達を交互に見てからアーネスに差し出した。

ちょっと俯いて小さな声で、

「食べて下さい。」

とか言われたから、恐縮する事も出来なかったのか、

「ありがとう。」

と言って受け取っていた。

「ありがとうございます。

後で食べますね。」

「どうやらすっかり良くなったみたいだが、怪我人のところに長居するわけにもいかんから、これで帰るよ。」

そう言って手を振りながら出て行った。

出際にクインちゃんが、振り返って小さな手を、小さく振ってくれた。

俺はけっしてそっちじゃないが、その子どもらしい仕草とはにかんだ表情は、めちゃめちゃ可愛かった。

俺達が手を振り返すと、笑顔で駆けて行った。

アーネスも優しい顔をしてる。


うん、癒やされた。


三人が出て行ってすぐ、

「あれさ、なんで下が、ビチャビチャだったんだろうな、リファ?」

というグーバさんの声が聞こえて来て、アーネスの顔はすぐに微妙な笑顔に変わったけど。


ほぼ入れ替わりで、私服姿のカインさんとガッシュさんがやって来た。

入って来るなり、二人して深々と頭を下げたので、やっぱり慌てて頭を上げてもらった。

「俺達は明け番でね。

他の皆も来たがってたんだけど、門番や川辺の警戒に出てるから、二人で代表して来たんだ。」

カインさんがそういうと、二人して濡れた地面を見てちょっと怪訝そうな顔をした。

「下が濡れてるじゃないか、ちょっと砂を持って来るよ。」

そう言ってガッシュさんが小走りで出て行った。

「君達の剣とナイフは研いでおいたよ、手入れされてたけど一応ね。

明日、帰る時に詰め所で受け取って。」

俺達がお礼を言うと、カインさんは首を振って、

「大した事じゃないさ。」

と言って頭を掻いた。

戻って来たガッシュさんが持って来た砂を撒くと、

「それじゃ。」

と言って二人揃って出て行った。


入れ違いでミネア姐さんが砂袋を持って入って来たけど、すでに撒かれた砂を見てバツの悪そうな顔をして、何も言わずに戻って行った。


なんとなく溜息を付いた後、水を飲んでいたら、

「は〜い、食事で〜す。

メニューは朝と一緒の麦粥で〜す。」

と棒読みで言いながら、アイギスさんが入って来た。


もう昼か。


「お姉さんがフウフウして食べさせてあげようか?」

と、めちゃめちゃ既視感がある、仕草と声色で言ってきた。

「じゃあ、あ〜ん。」

やっぱり既視感がある感じで照れるアーネスを横目に、からかい返すつもりでやったら本当にフウフウされたので、慌ててやめてもらった。

ニヤリと笑い、見下ろしながらフンと鼻を鳴らすと椅子にお盆を置いて、ズボンなのにカーテシーを決めて、スキップしなから出て行った。

マジで何なの、あの人。

てかカーテシーなんてするんだ、俺達の世界でも。


何か、疲れた。


食べ終えて水を飲んでいると、水袋が空になった。

アーネスも水を切らしたらしく、水袋を見詰めてしょんぼりしている。

そこに、大きなタライを転がしながら、アイギスさんが戻って来た。

「ん〜、どした?しょんぼりして。」

水が切れたと伝えると、

「はいはい、直ぐ持ってきま〜す。

あ、それとも、飲む?

アタシの。」

何、言ってんの?

「出るんだ、お乳。」

いや、お前も何言ってんの?

「え、そっち。

違う、違う、こっち。」

と言って下腹部を擦るアイギス。

もうさん付けなんかしないぞ。

いや本当に疲れるわ、マジで。


「そのタライは何ですかね。」

なんとか話の流れを変えたくて、気になってた事を聞いた。

「あっ?

風呂だよ、風呂。」

急に口調を変えて雑に言ったアイギスは、転がして来たタライを寝かせると腕捲くりをして手を翳した。

「魔術でお湯を張るから、ちゃっちゃと脱いじゃって。」

そう言うと翳した掌からお湯を注ぎ始めた。


「ストップ、ストップ。」

「な〜に〜。」

面倒そうに言うと、魔術を止めてこちらを見るアイギス。

「詠唱して見せて下さい。」

話さなければ可愛い系の顔を、人に見せちゃいけない感じに歪め、

「もう感覚でやってるし、初歩の魔術の組み合わせとはいえ、二重詠唱だから面倒なんですけど。」

と、心底嫌そうに言った。

「そこをなんとか。」

「入浴中、ずっと見てていい?」

可愛いい感じで小首を傾げながら言ってくる。

アーネスは照れるどころか、顔を引きつらせてる。

だが俺は予想していたので、そこまでダメージはなかった。

折角のチャンスだ。

むしろその程度では退かない。

「じゃあ、それで。」

と俺が答えると、ニタァっと笑って、

「取引成立ね。」

と言い、タライに手を伸ばした。


「水よ、熱よ、集え、集まれ、せせらぎ、温もりあたえ、ささやかに、炎を以て、放水、加熱」

ほんのり湯気が立つお湯が出て来る。

「アーネストリー君の入浴も見せてくれるなら、解説してあげてもいいわよ?」

ニタニタしながらそう言ったアイギスは、鼻歌を歌い出した。

困り顔でアーネスが俺を見てきたが、ゆっくりと頷いてやると、「うえっ!?」と言って見た事がない顔になり、カクンと頭を垂れた。

「お、お願い、します。」

震える声でアーネスが答えると、アイギスのニヤニヤ顔はニンマリとした笑顔に変わった。


「宜しい。

この二重詠唱のコツは、放水から入る事よ。

想像するとわかるけど、火に水を掛けると消えちゃうでしょ?

だから水の入った鍋を火に掛けるイメージなのよ。

初歩の魔術とはいえ、相克関係にある魔法の二重詠唱だから、結構難しいの。

瞬時に沸騰させる事も出来るけど、それは土の魔術を加えた三重詠唱の方が簡単かもね。

まあ、慣れたら無詠唱の方がよっぽど簡単よ。」

急に真面目な顔をしてスラスラと説明してくれた。

凄いわかり易い。

ただの変態じゃないんだ。

「土魔術を加えるのは、焼石を水に入れるイメージですか?」

「あら、理解が速いじゃない。

そういう事ね。

さて、アンタ今、ちょっと失礼な事を考えたみたいだから、ちょっと注文付けるわよ。」

何をさせる気だ、コイツ。

「脱ぐ時は後ろ向きでね、脱いだらそのまま待ってて。

タオルを持ってくるわ。

あとサンダルも。

わたしが戻って来たら、前をタオルで隠しながら爪先からゆっくり湯に入るの。

で、前をどけてゆっくり浸かりなさい。

ちょっと狭いけど二人で入ってね。

片方が洗ってる時は片方は縁に腰掛けて。

その時は隠しちゃダメよ。

あっ、あと、向かい合ってね。」

コイツ、ちょっと本気で殴りたい。


「アイギス。」

入口からアイザックさんが覗いていた。

いつの間に。

「うえ〜、イイところだったのに、イイところだったのに〜。」

「タオルとサンダル、隠したのあなたでしょう?

ミネアさんに魔法を教えてもらっていたのを聞いて、企んだって事で合ってますかね?

処女の耳年増は見苦しいですよ。」

飛び付くようにアイザックさんの口を押さえようとするが、微妙に届いてない。

てかアイザックさんも凄い事を言うな。

アイザックさんがゴツい手で、アイギスの襟首をまるで汚い物に触れるように摘むと、そのまま引きずっていった。

「見るの〜、若い男子のチ◯コ、見るの〜、恥じらい顔、見るの〜。」

遠ざかる叫び声の内容は、聞くに耐えない。


殴りたい。

マジで、殴りたい。


しばらくポカンと口を開けてたアーネスは、我に帰ったのかポリポリと頭を掻いた。

疲れた。

早く湯に浸かりたい。


サンダルとタオル、まだですか?

私のお気に入りその2、アイギス。

脳内再生はちょっと幼くした千束です。

どうでもイイ?ハイその通りです。

その1?

話を伸ばしまくる困ったお人、その2。

我らが姐さんです。

それもどうでもイイ?

ハイ、すいません。


次回 田舎の香水、嗅ぎながら

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