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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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面会

昼下がり。

俺達は馬車に揺られ、領都に向かっていた。


少し早めの昼食を取ってから出発したので、窓から吹き込む緩やかで温かな風に、眠気を誘われていた。

てか柔らかい座席と背もたれのおかげで尻が傷まないのも、手伝ってるだろう。

伯爵が用意してくれた馬車の乗り心地は二度乗った馬車と、はっきり言って別物だ。

隣に座る姐さんとアーネスは、軽く寝息を立てて、俺にもたれている。

半開きのアーネスの口からは、だらし無く涎が垂れていた。


昨日はあれから、入れ代り立ち代り人が来た。

その最初がグレンさんとマイラさん、そして伯爵執事のガスリーさんの三人。

「無茶しやがって、馬鹿野郎共が。」

グレンさんの第一声がそれだった。

マイラさんは疲れた顔をしていて、力無い感じで微笑んでいた。

「峠は越したようだし、一日様子見て、明日には帰れ。いいな。」

そう言うと伸びをしながら出て行った。

「後で絶対、絞める。」

小さく呟いたマイラさんのすんごい顔を見てしまった。

ヤバい、めちゃくちゃ怖い。

「え〜、支部長が大事な事を言わないで行っちゃったので、私が代わりに通達します。

今回の討伐参加、お疲れ様でした。

あなた達は指名依頼に入ってないので、これで今回の依頼は完了になります。

報酬はまだ計算が終わってないのでここでは申し上げられませんが、明日の出発までには算出して、一部は支払われる事になります。

確定している参加報酬と、討伐報酬は明日の出発前に、警備隊の詰め所に取りに来て下さい。

最後に。

あなた達が無事で、本当に、良かっ、た。」

最後に少し泣いてしまったマイラさんは、ミネア姐さんにしばらく背中を撫でられていた。


「マイラは年明けまで、アントンと付き合ってたんだよ。

ちょっと引きずってる感じだったけど、最近いい顔で吹っ切れたなんて言ってたんだケドね。

死なれたらやっぱり辛いだろうね。」

落ち着いたマイラさんが出て行った後で、姐さんがそう言っていた。

俺には経験が無いことだから、想像さえ出来ないけれど、それでも強い人だとなんとなく思った。


「祝祭の日以来ですね。あの時は名乗りませんでしたので改めまして、ガスリーと申します。

本日はバーゼル伯爵の命を受け、参上いたしました。」

間を計っていたのか、一歩前に出てそう言ったガスリーさんは、右手を胸に当て、左手を体側に付けた綺麗なお辞儀をした。

「領都に戻られましたら、領北部のバーゼル伯爵の別邸でご静養頂きます。

まあ有り体に言えば軟禁です。」

顔を上げたガスリーさんは良い笑顔でそう言った。

見ればアーネスはポカンと口を開けてるし、姐さんはガスリーさんを二度見した後、怪訝そうに見詰めている。


「悪いようにはしませんよ。

マローダ殿も同行して謁見の際のマナー等をお教えするとの事です。

何か希望があれば可能な限り、ご用意させていただきます。

では私はこれで。

明日の正午、警備隊の詰め所でお待ちしてます。」

またも綺麗なお辞儀を見せて退出して行った。


「何だあ、今の爺さん。」

「バーゼル伯の執事長のガスリーさんですよ。

この二人が無茶をしたので、身柄を押さえに来たのでしょう。」

「はあっ!?

何で捕まるんだよ、コイツら。」

「違いますよ。

非常に良い加護を授かったお二人が、王城に招かれる事になったんですが、無茶して死なれたら困るのと、すっぽかされないように動いたんでしょうね。

現にアーネストリー君は、ついさっきまで忘れていたようですし。」

「はあっ?

普通忘れるかい、そんな重要な事。

ていうかそんなに凄い加護だったのかい、アンタ達?

あれかい、恩寵系かい?」

「アーネスが勇者で、俺が七大神の祝福です。

あんまり広めないで下さいね。」

「はぁ〜、それ本当かい!?

こりゃあ、魂消た。」

姐さんはパシっとイイ音を立て、額に手をやるとびっくり眼で俺達を交互に見た。

ですよね。

俺達もビビりました。

最も俺はそれ以上に、秘密を抱えちゃったんですけどね、ハハ。

心の中で呟いて、俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。


まだ、

「ほえぇ」

とか言ってる姐さんの後ろから、今度はアイザックさんが話し掛けてきた。

「さてお二方、出てもらいましょう。

呪式包帯を交換するので。

それともミネアも見て行きますか?

結構いい体してますよ、二人共。」

今度はアイザックさんを二度見して肩を竦めると、鼻を鳴らして立ち上がった。

「ガキのナニを見てどうすんだい。もうちょっと大人になってからの方が、アタシ的にはイイね。」

そう言って振り向くと、アイザックさんの胸を軽く拳で叩いて、手を振りながら出て行った。

姐さん、その耳は見逃しませんよ。

マローダさんも軽く一礼してゆったりとした足取りで出て行った。


「さて、やりますか。」

そう言うとアーネスの頭に手を当て、巻いてある模様入りの包帯を、丁寧に巻取りながら外していった。

てか呪式包帯って言うんだこれ。

「何か特別な効果とかあるんですかね、この包帯。」

俺がそう聞くと、手を止めずに少し早口で教えてくれた。

「肉体の抵抗力を上げ、元々宿る自然の回復力を高め、精神の抵抗力を抑えるんです。

魔術が掛かり易くするのにね。

元は捕虜のごうも、尋問用だったのが、治療用にも転用されるようになったんです。」

拷問って言いかけたよね、この人。


「さっきアイギスが『強引にグイッと』とか言ってでしょう?

実はあれは、かなり本質を突く言葉でね。

加護が強力なあなた達には魔術が効きにくいのです。

応急処置の際、魔力を多めに込めて、無理矢理魔法を掛けたのです。

回復魔術のような状態良化を目的とした魔術も少し効きが悪かったですし、睡眠魔術は意識を失っているのにも関わらず、抵抗されてしまいました。

昏睡状態ではなく、あくまで睡眠状態でいてくれなくては、回復効果を見込めないのでね。」

アイザックさんは話しながら、全て巻取り終えると、アーネスの体をあちこち軽く押したり、指先でトントンと叩いたりした。

アーネスの体にはあっちこっちに赤インクのようなもので、印なのか丸が書かれていた。

「触れたり、叩いたりしても痛みを感じないようですね。

触れられている感覚はあるんですよね?

何も感じない場所とかありませんか。」

聞かれたアーネスは少し首を傾げてから、首を振った。


俺も同じように包帯を外され、やっぱりあちこちに印が付いていて、触診され、同じ質問された。

痛みも無感覚になっている箇所もなかったので、そう答えた。

「宜しい。

枕元のベッド脇にあなた達の荷物が置いてありますから、普通に着替えていいですよ。

それともアイギスを呼んで、彼女に着替えをさせましょうか。」

アーネスは顔を赤らめて俯き、俺は苦笑いを浮かべるしか出来なかった。

早口だけど声に抑揚があまり無いから、本気なのか冗談か、ちょっと本気でわからない。


それぞれの荷物から衣類を詰めた鞄を取り、下着を付けたところで、アイギスさんが入って来て大きな声を出した。

「あぁ、終わってる。お楽しみを逃したぁ。」

何を言ってるんですかね、この人。

両手にお盆を持ち、その上には湯気が立つ器が乗っていた。

「はい、食事。

草むらの中で丸焼きになった、ゆり根を崩して入れてあるから、美味しいよ~。

栄養もバッチリだ〜。」

何故か棒読みでそう言ってベッドの端にお盆を置くと、

「お姉さんがフウフウして食べさせてあげようか?」

と上目遣いで交互に見ながら言ってきた。

「あっ、いや、その、じ、自分で食べます、はい。」

お前もなんだ、初心か。

「何だ、つまらん。」

急に口調を変えてそう言うと、スッと無表情になってスタスタと出て行った。

本当に何なのよ、あの人。

「私もこれで。

水はあなた達の水袋が一つづつ無事でしたので入れてあります。

毎朝入れ替えてますからそちらをどうぞ。

必ず一人はすぐそこで仕事をしているので、何かあれば声を掛けて。」

そう言って、アイザックさんはノソリと出て行った。


顔を見合わせて溜息を吐いた。

同時に腹が鳴る。

ひっくり返さないようにゆっくりお盆を取ると、向かい合ってベッドに腰掛け食べ始めた。

殆ど粒が残ってない、かなり緩い麦粥で、薄く塩味が付いただけの素朴な味が、やたらと染みるようだ。

合間合間で水を飲みながら、あっという間に完食すると、小さな丸椅子にお盆を置き、シャツを着てから何故か一連の動きが合っていたアーネスと、同時にベッドに転がった。

本日から3日連続投稿です!!

最後、25日は1か月記念のSSも投稿いたします

それではまた明日


次回 ミネア姐さんの魔法講座 その一

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