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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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第二、第三の秘密 その一

その時、俺は笑っていた。

父と、母と、手を繋いで。

その時、俺は勉強していた。

大勢の学生の一人として。

その時、俺は恋をしていた。

相手の些細な事で焦がれたり、嘆いたり、喜んだり。

その時、俺は浮かれていた。

想い人が受け入れてくれたから。

恋人になれたから。

その時、俺は死を迎えていた。

友人や家族、恋人に囲まれて。

何処にでもいる、早死にではあるけれど、ごく普通の青年として。


ふと気付くと、そこには何もなかった。

暗いとか明るいとかではなく、なにも見えず、なにも感じない。

強いていうなら、水中にいるような感覚。

だが息苦しさはない。

目が開いている感覚はあった。

けれどもなにも認識出来ていなかった。


混乱しかけた時、唐突に目の前に誰かが現れた。

「はっ?」

とか思っていたら、ソイツが話しかけてきた。

「お前は俺で、だがお前自身だ。」

「何だそれ哲学か?」

混乱しつつも口に出たのは、苛立ちを含んだ言葉だった。

「理解出来なくていい。

ただお前にやるよ、知識と健康を。」

「はっ?」

「短い人生だったけど、知識欲が旺盛で、人よりちょっと記憶力も良かった。

無駄知識も多いけど、そっちなら役立つ事もあるだろうし、実際計算とかは使えてただろ。」

「イヤ、だから何言ってんの。」

「輪廻転生ってわかるか?俺の知識があるお前ならわかるはずだ。」

「言葉の意味はわかる。」

「俺は転生して、一部はお前になる。」

「はっ?」

「だから、完全に同一という訳ではない。

記憶や性格は引き継がれない。

行なわれるのは知識と才能の譲渡、それと俺が望んでも得られなかった健康な体が与えられるらしい。」

疑問が増える。

与えられる?

誰に?

「てかなんで最後が疑問形なんだよ?」

そう口にした時に気付いたが、そこに誰かがいる事は認識しているのに姿形がわからない。

てか今ってどんな状況で何が起きてるんだ。

「俺が説明を受けてお前に伝えているから「らしい」と言っただけで、別に疑問形じゃないさ。

詳しく説明してもイイが、今言った事より重要な事はそんなにないかな。」

「イヤ、そこは詳しく。」


曰く、ソイツは若くして死んだらしい。

最後の言葉は、「ゴメンな、でも見送りは笑って」だったとか。

その言葉に、その場の全員が涙を流しながらも笑顔を作ってくれたそうだ。


で、気付くと神を名乗るヤツ等に囲まれていたらしい。

推定神々曰く、得を積んだわけではないが、人として転生するチャンスがある。

知識と才能の一部の譲渡を行う事で、ゼロから、新たな、でも少しだけ、今回よりも不幸が少ない人生を歩める。

知識と才能の譲渡で魂の一部も入り込むから、少しだけ得を積みやすくなり、新たな人生で魂が減った弊害は無いように補助もする。


この時点で深夜の通販番組とか思っていたらしい。

いや、知識はあるけど、それを俺に言われても。


続きがあった。

断る事も出来る。

その場合は完全にランダムな転生になるので、人として転生するかの保証は無い。


「クーリングオフの説明に入ったかと思ったよ。」

「クーリングオフて、アンタ、今の俺には使えない知識のトップランカーじゃねえか。」


推定神々からの説明は更に続く。

譲渡先は平行三次元の別の星の住人で、自分の転生先で出会う事は無いし、基本出来ない。

地球の神からの管理から外れる事になる、譲渡先の魂の一部は、自分達が責任を持って保護する。


「そんな事を言われて混乱もしたが、大きな疑問が出来た。

おそらくコイツ等は地球の神ではないのだろうが、たかが一般人の俺の知識や才能が、別の星の一個人に渡る事になんのメリットがあるのかと。

他にも細々あるが最大の疑問はそこだった。」

「まあ、たしかに。」

「返って来た返事は、秩序と発展と面白さだそうだ。」


一瞬の間が開いて、俺の口を突いた言葉は他でも無い、

「何だ、それ。」

だった。


推定神々は続けて言ったそうだ。

曰く、混沌としているが一応のバランスは取れている世界。

だが何かの拍子に天秤が大きく傾く事もあって、その時は大きな混乱が巻き起こるらしい。


文明レベルが上がると神々の影響力は落ちるが、そこに生きる生命が幸福感を得られれば、神々が持っている力自体が薄れる事は無いらしい。

文明レベルが下がり影響力が増えるような事になっても、生命が幸福感を得られなければ神々の力が薄れてしまう。

ベストなのは文明レベルが下がって、尚且つ幸福感が増す事だがそれはあり得ない。

何故なら知的生命体は進歩する事を覚えたから。


知的生命体は全生命の一割どころか、一厘にも満たない数しかいないが、生命力以上に精神力が高いのでバランスブレイカーになりやすいらしい。

更には知性を持たない生物が進化して、知性を持つに至る可能性も無ではないらしい。


知性を持たない獣なんかは、腹が満たされる、眷属が増えるといった事で、頭で理解していなくとも本能が幸福感を感じ取っている。

だが、知的生命体は文明レベルどころか生活レベルが落ちると不幸に思う。

停滞ですらそう思う者すらいるくらいだ。

特に知的生命体の多数派である人族は。

だから生物の幸福感を考えるなら少しずつ発展していて、且つある程度安定している世界が望ましい。


だが、良い方面にも悪い方面にも天才が生まれる。

天才と言っても天が与えた才能ではなく、自然発生的に、秩序の天秤が傾く程の。

それをある程度修正するのが加護であり、神々が作ったバランスシステムらしい。


だが。

それでも例外が生まれる。

加護だけでは補えなさそうな事態が起きる前に、他所の世界から知識と才能を譲渡してくれそうな死者に頼み、それをちょっと盛ってからこちらの世界の魂に移すとの事だ。


「バランスが大事。」

一柱の神がドヤ顔で言ったらしいが、その顔にイラっとしたらしい。


分かったのは神々が万能では無い事。

それはソイツが住んでいた国の宗教観に似ていたから、すんなりと理解出来たそうだが、それと同時に胡散臭さも感じたらしい。


「言っておくけど、命を弄ぶなんてしてないわよ。

少なくとも私は、生きとし生けるものを愛しているし、事故や災害、食物連鎖、そういった諸々の自然の摂理がなければ無に等しいわ。」


「苦しみがあるから幸福が輝くとは言わない。

苦しみなんてない方がいいかもしれないが、だが進歩や発展もまた望めない。」


「変わらずずっと幸せって理想だけど、努力や活力なんかは失われちゃうよね。」


「言うて、あんたらがそう作った結果だろ?」


「違う」「違うよ」「違うわ」「違うぞ」…………。

コイツの返しに、語尾だけ変えた、「違う」が一斉に飛んで来てたじろいだらしいが、ぱっと見が最も年長の神の言葉でさらに混乱したという。


「儂らは管理神。

創世神は更に高位の次元におられるので、儂らにも観測も感知も出来ない。

別の平行三次元には変化の無い幸福に満ちた星もあるにはあるが、どちらがより良いかは、正直分からん。

儂らの管理外だからじゃが、比べる事にも意味はないからの。

何なら次の転生先に指定してやってもよいぞ。

それくらいの干渉なら我らにも出来なくないからのう。」


混乱。


その後に来たのは、よくわからない冷静さだったらしい。


「イヤ、出来るなら元の世界がいい。

理由はよくわからない。

でも更によくわからない世界に生まれ変わるのは、なんとなく嫌だ。」

「それは承諾と受け取っていいのかな?」

「ああ、それに断ったら困るんだろ?」

「イヤ、そこまで困らない。

タイミング的に最初に声を掛けたのが君だっただけ。

他にも候補は何人もいるし、君のように才能に気付かないで眠らせたままの人は、何処の世界でも当たり前の様に居るんだ。」

「えっ、困らないのかよ。

てか俺って結構、多才だったのか?」

「戦闘センスとか魔法の才能とか、あっても使い所も少ないし、そもそも魔法は、技術として発展しなかった地球では使えないでしょ?」

「まぁ、戦闘センスなんかは、軍とか治安維持とかなら使えたかもだけど。

でも君自身の将来像と乖離していた。

性格的にも喧嘩とかするタイプでもなかったようだしな。」

「そういう所謂、有事の才能は地球で輪廻の輪の中にいるなら必要無いだろう?

戦争とか、紛争とか、そこら辺とは今後は無縁な転生をするしね、君の場合。

一応言っておくけど、そこには我々の関与はないよ。」

「ああ、そういう。

わかった。

ところで知識って言うけど、たかが一般人の知識にそこまで価値ってあるか?

専門的な研究とかしてた訳でもない、本当にただの一般人だぞ。」

「知識や才能の譲渡をしてもらうのは、一部の例外を除くと、短くても百年以上は間が開いてるんだ。

前回は君達で言う三百年前だった。」

「それと魔法の技術が発展した事、魔物が生息している事で釣り合いが取れた結果、文明そのものは発展が遅れているのだ。」

「どういう事だ。」

「簡単、かつ君達の言葉風に言えば「脳筋」が多いと言う事だ。」

「日常、非日常両面で、なまじ魔法があるだけに力技でこなそうとする。

技術の発展が伴えば相乗効果で、より簡単になる事も、考える事すらしない者が圧倒的に多い。」

「加えて魔物がいるので、情報や技術の伝播が妨げられたり、生まれたばかりの技術が失われる事もある。」

「だから君にとっては一般知識と言える技術だったり常識が、こちらでは発明に匹敵する様な技術や、全く新しい考えになり得るのだ。」

「だからと言って文明レベルが高くても、世界のバランスが崩れ掛けておる地球のようになられても困るのじゃ。」


そう言われて、一応の納得は出来たらしい。


「なるほどね、じゃあ最後に一つだけ頼みがある。」

「叶えられるかどうかは別だが、言ってみな。」

「譲渡先の人?と話しがしたい。

一度だけで構わない。

あ〜いや、会えないんだっけ?」

「オッケー、生身じゃなきゃ一回だけなら出来る。

ただ、ちょっとだけ転生が遅れるけどいい?

具体的には、5年位。

時間軸がちょっとズレてるからそれ位なのと、ある程度理解力が育ってからじゃないと、こっちの子も混乱だけならいいけど、壊れちゃうかもだし。

あっ、体感時間は秒だよ。」

「壊れるって………、あ〜、何か言っちゃダメな事とかあるか。」

「ない。」

「ここでのやり取りとか、言ってもイイものなのか?」

「問題ない。」

「イヤ、やっぱダメなんじゃ。」

「ん~、こっちの世界の常識と照らし合わせて、口に出すと危険だって事は理解出来るハズだし、言った相手によっては、おつむの心配される位で終わるさ。」

「わかった、じゃあ話させてくれ。」


「という訳で、俺はお前と会って話してるって事だ。」

「何がそれほど重要じゃないだ、めちゃくちゃ重要じゃねえか!」

GW中は隔日で、一話か二話上げて行きます(予定は未定)

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― 新着の感想 ―
[良い点] あはっ、こんにちわ! これから転生して、新しい人生を歩むんですね〜〜! どんな人生になるんでしょうね!また来ます
[良い点] 転生前の前振りが長いですね。 でも転生の条件などを細かく設定している辺りに 作者様の拘りを感じます。 普通のなろう作品はこの辺適当なんですけどね。 ここからどのように転生するか、楽しみです…
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