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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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顛末

しゃくり上げていた姐さんが、大きく、深く息を吐く。

パンパンと両頬を叩き、もう一度大きく息を吐いた。近くにあった丸椅子を引き寄せると、地べたから座り直して俺達に向き直った。


「どこまで覚えてる、お前達。」

アーネスと顔を見合わせ頷きあってから、正直何に頷いたのかわからないが、答えた。

「吹っ飛ばされて、テントに落ちたところまでです。」

「俺もです。」

「そうか。」

そう言うと姐さんは頷き、暫く言葉を止めた。


「アタシは、動けなかった。」

口から、鼻から、血を吹き出し、錐揉みするように吹っ飛んで行くアーネス。

それを見て姐さんの思考は停止したそうだ。

視線は落下して行くアーネスを追っていたが、見ている物が何なのか、理解出来ずにいたそうだ。


「あのデカいテントを薙ぎ倒すように落っこちて行くアーネスを、馬鹿みたいにただ見ている事しか出来なかった。」

俺が走りだした時も、見えているのに事態を把握出来ていなかった。

淋しげな笑顔を浮かべながら、姐さんはそう言った。


俺があの化け物の頭を叩き割り、グリンと半回転させた時、最初に動きだした人はザラさんだったそうだ。

「門の中に走って行ったんだ。

最初は逃げだしたのかと思ってね。

めちゃめちゃ腹が立って、そのおかげなのか、体が動くようになったよ。

追いかけて張り倒してやるって思って、走り出そうとした時、ジェスターが騎士団のテントに落ちてった。」

ほんの半瞬、ほぼ全員の動きが止まり、視線が二箇所のテントに集まった。

我に返る事が出来たのは、同じように気を取られた騎士の一人が、苦しむように暴れるムカデの下敷きになり、悲鳴を上げたかららしい。


「すぐに指揮を取っていた騎士が、魔術師の一人に指示を出したよ。

岩の槍で動きを止めろってね。」

再び地面に縫い付けられたムカデは、それでも波打つようにして暴れ狂っていた。

篝火だの、拒馬だのを薙ぎ払いながら苦しみのたうち回っていたが、終わりはあっさり訪れた。

「逆さまになった頭を、あの柵みたいなのに叩き付けるように上から打ち付けたら、嫌な音を立ててもげたよ。」

それでもまだ暴れていたそうだけど、徐々に歓声が広がって、ちょっとしてから爆発した。


「そこにザラが戻って来た。

アイザックとアイギスの二人を連れてね。

ヤツの顔を見て、我に返ったとあの時は思った。

けど今思えば違うな。

まだアタシは混乱してたんだ。

だってヤツを張り飛ばそうとしたからね。」

苦笑いを浮かべて、俯きながら姐さんが言った。

アーネスがちょっと吹く。

お前、今は駄目だろ。

「アーネストリー。」

低音で名前を呼び鬼の形相で睨む姐さんだけど、耳が赤い。

溜息を付くと、こちらを振り返った。

「お前もなんでニヤけてやがる。」

顔は怖いけど、でも耳を見ちゃってるからな。

表情と仕草で謝ると、首を振り腕組みをして続きを話しだした。


「あの、現場以外で滅多に声を聞けないザラが叫んだんだ。

お前達の名前をね。

弾かれたように、近くいた騎士がアーネスが落ちたテントに駆け寄った。

指揮を取ってたヤツさ。

アタシもそっちに走ったよ。」

それを見てか、アイザックさん、アイギスさん、二人の治癒術師と、少し遅れて追い付いた他の治癒術師も動き出した。

それに気付いた周りの騎士の何人かも動き出す。


「崩れたテントの中のアーネスは、腹から棒が生えてたよ。

テントやその中にあった物の残骸を掻き分けて、刺さってるそれを引き抜こうとしたら、後ろからアイザックに怒鳴られた。

『無闇に抜くな、死なせたいのか。』ってね。

アイツ、知り合いでね。

昔、ちょっとあった時に世話になった。

で、怒鳴り返そうとしたら、思いっきりビンタされた。

あのゴツい手でさ。

直ぐにガッシリ肩を掴まれて、

『冷静になれ。

お前だってわかってるだろう。

刺した後、抜いた方が早く死ぬ』って。

内容はさ、結構ヤバい事だけど凄く優しそうな声でね。

そう、言われたんだ。」


続けて担架の用意と、殴ってでも人を動かせと言われたそうだ。

「そこから大変だった。

やっと動かなくなった、ムカデを見て歓声上げる騎士達。

へたり込む見習いの小僧達。

遅れて村の中から出て来て、事態の把握が追い付かない冒険者連中。

怪我したり、死んだヤツの名前を呼ぶヤツラ。

それとまだボケっと突っ立ってるミラ。

手始めにアタシはミラをぶん殴った。

アイツを走らせて担架と人を用意させた。

今更になってから、ノコノコと顔を出したグレンを見付けて、とりあえずぶん殴った。

アンタらの事や起きた事を話して、残りの治癒術師と治癒系の魔術が使える連中をかき集めさせたのさ。」

肩をすくめて、

「もう、わっちゃわちゃだったよ。」

と言った姐さんは何だか何時もの雰囲気になっていた。

てか、支部長を「とりあえず」で殴るんだ。

流石は姐さん、真似出来ない。

いや、茶化すような事を考えるのは止めよう。


その後、俺達の事は治癒術師に任せたそうだ。

姐さんも治癒魔術を使えるけど、自分が下手に手を出すより、専門の治癒術師に任せた方がマシだと思ったらしい。

結局俺達はその場で応急処置が施され、この治療用のテントに運びこまれた。

「お前達が運び出されて行く時、騎士連中が、歓声を上げてたヤツらが全員、急に大人しくなって、一斉に最敬礼してたよ。

多分だけど、手遅れだと思ってたんだろうね。」

ほぼ絶望的。

諦めてなかったのは、おそらく三人だけ。

治療に当たった、アイザックさんとアイギスさんの二人。

そして姐さん。


「よくわかんないけど、何か、大丈夫って思ってたよ。

自分に言い聞かせてだけなのかもしれないけどね。

でもね、大丈夫だってね。」

なんだろう。

嬉しい。

色々あるけど、俺がズレてるだけなのかもしれないけど、自分の、俺達の、何かを信じてもらえた。

それがたまらなく嬉しかった。


「アレの頭とか魔石とかは、お前達の物として保管されてる。」

「え。」

「え、じゃなくて。

止めの一発はジェスターだろ。

アレ、見たけど、いくらになるかわからんくらい、バカみたいにデカい魔石だったよ。

この辺りにあんなデカいの抱えた魔物は出ないから、アタシも金額の予想出来ないわ。」

それは嬉しいような、問題あるような。


「姐さん。」

アーネスが偉く真剣な表情で呼び掛け、

「俺達以外の、その後の討伐状況は?」

と視線を向けた姐さんに、声を押さえる様に疑問をぶつけた。

確かに、今はそっちが気になる。

アーネス、意外と冷静だな。

「順調、といえば順調だね。」

肩をすくめてそう言った姐さん。

でも、直ぐに姐さんも真剣な表情になった。

「順を追って話すよ。

まず、あの戦闘で死者がそれなりに出たから、騎士連中も再編制された。

直接殺られたのが四人。

飛んで来た柵に当たって、打ち所が悪かったやつが一人。

見習いも一人死んだ。

重症だったやつも何人かいるし。」

姐さんは一旦、言葉を区切ると深く息を吐いて続けた。

「アタシら冒険者にも犠牲が出たんで、犠牲が出たパーティは離脱が認められた。

あそこには水流の光が全員と、竜血のリーダーのバーンズとマルクスがいたけど、死んだのは水流の光のヤツだ。

アントンっていう結構気の良いヤツだったんだけどね。

知の輪の連中も何人かいてね。

連中の一人も、あの柵みたいなのにぶち当たって治療を受けてたよ。

アタシは水流の光と組んで動いてくれってグレンから言われたけど、水流の光の方から断られたんだ。

リーダーのザックスとアントンは、アンタ達のように幼馴染でね。

ザックスのヤツ、見てられない位、憔悴してた。」

姐さんが言葉を切った後の沈黙が重い。

それを振り払うように、アーネスが絞り出すような声で問い掛けた。


「それで討伐数はどれくらい?」

「三日でかなり狩ってるって言うか、ジェスが無茶な事を言ったから、それに便乗した感じでね。

領都や隣の村の方からも火を放って追い込んだのさ。

相当広い範囲が焼けて、かなりの数が丸焼きになったんだ。

そっちの対応にほぼ全員掛かりっきりだね。

ミラとザラは、そっちで騎士団と一緒に探索に当たってる。」

すいません、無茶を承知の上で敢えて言ったんです。

更にその上を行く無茶をしたのか。

確かに一方から焼くよりは間違いが少ないだろう。

村や領都の被害は無いと思いたい。


「安心しな。

ある程度範囲を絞ったのもあって、領都や他の村もだけど被害は出てないよ。

魔術師隊のヤツラと結界魔術を使えるヤツラが交代で、丸二日頑張ったからね。

あと風魔術で風向きを弄ってもいたね。」

よかった。

寝てたから心配すら出来てなかったけど、それを聞いて少しだけ安心した。

「昨日、この時期にしては珍しく弱い雨が降ってね。

火が弱まったから水魔術が使えるヤツラが総出で、完全に消し止めたよ。

火を放った中心辺りは焼け残っちまったけどね。

ついでに死骸探しもしたようだけど、発見場所にかなり偏りがあったんだ。」

産卵した場所が、大雑把に把握出来たって事だろうか。

「初日にアタシらが当たった村の北東が、遭遇数が多い。

次いで川を挟んだ辺りさ。

他の所からもぼちぼち狩れてたから、夜間かアタシらが来る前に散ったんじゃないかって予想してたんだ。でも丸焼けのムカデは、殆どが村の北東に集中してたんだ。」

なるほど。

「昨日、川にそって北東に、だいたい百サナちょっと、アタシ等が探索したすぐ向こうのエリアに、浅くて濁った細長い湖があるんだけど、その畔で抜け殻や卵の殻、共食いの跡とかが見つかったよ。

ジメジメしてて、魔物じゃなくてもムカデが好きそうな所でね。

そこは水場だから燃えてなくて、上手いこと見つけられたんだ。」

川の側の細長い湖。

アイツの知識の三日月湖ってヤツか?

何にしても、痕跡があったって事は、野焼きもあって追跡もしやすくなるだろう。

「悪い情報もあるんですよね。」

同じ様な事を、アーネスも思っていたのだろう。

その言葉に姐さんは渋い顔をして頷いた。

2024/05/24 追記

増えて来た人名の確認と管理をしようと、見返していたら

やってました。

竜血のリーダーの名前、食い違っていました。

以後気を付けますです



お読みくださって頂いている方、ありがとうございます。

モチベにつながるので、ブックマークを是非お願いします。

「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………。


次回 帰還指示

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