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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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出発

集合場所の南門に着くと、既に開門され出発の準備が始まっていた。


俺達が着いてすぐ、荷台に革製のカバーが掛けられた二頭立ての荷馬車三台が出発していった。

その前後と馬車間を、騎乗した騎士見習い達が護衛として隊列を組んでいた。


その直後。

どう見ても一般人に見える男性四人と、治癒術師八人が馬車に乗り込み、更に八人の魔術師が統一された軽装備を身に着け、短杖を手にして、別の馬車へと吸い込まれた。

どちらも先に出発した荷馬車と同じように、前後を騎乗した騎士見習い達が護衛して行った。


それを見て一瞬、遅れたかと思ったが、周りには馬車に荷を積んだり、一塊になって打ち合わせをしているような冒険者達がいてホッとした。


門の側でグレンさんとマイラさん、それと見た事がない協会の職員二人とミネリア姐さんが、何やら硬い表情で話している。


なんとなく声を掛けそびれていたら、姐さんがこちらに気付いて手を振った。

グレンさん達に軽く手を上げるとこちらに、小走りで向かって来た。

アーネスも笑顔で駆け寄って行く。

「おはようございます。」

と挨拶するアーネスの頭をくしゃくしゃにしながら、

「朝から声がデカいんだよ。」

と言って姐さんは苦笑いを浮かべた。

アーネスはあれか、犬か?


「おはよう。お前達、ちゃんと食って来たかい?」

「持って来ました。」

「時間はまだあるから、今食べちまいな。寝られるなら馬車の中では寝て行くといい。」

寝られるかはわからないけど、とりあえず食事は済ませる事にした。

適当に腰を下ろして、用意してもらった食事にかぶり付く。

用意してもらった朝食は、アイツの知識のピタのようなパンに、炒めた鳥と野菜を詰めた物だった。

塩と香草とちょっとだけ酸味がある味付け。

うん、美味い。


「食いながらでいいから聞きな。

村に付いたら先ずは野営の準備だ。

村の警備隊の訓練場を開放してもらえる事になっている。

広くはないけど一応、うちら冒険者だけで使っていいそうだ。

騎士団と魔術師団は、今日から門の外で野営するらしい。」

大丈夫なのか、それ。

てか魔術師団ってさっきの?

「魔術師団ってバーゼル伯お抱えの?

何かマズい状況になってるんですか?」

「ああ、違うよ、ジェスター。

竜血の頭のバーンズの提案に、水流の光の魔術師のインゴが同意して、提案を受け入れた騎士団の隊長達が連名で上に通したんだとさ。

その提案てのが、頭を潰す戦法でも行けるけど、土魔法で下から串刺しにするのが楽だってね。」

なるほど。

それで魔術師団が動いたのか。


アーネスも質問があるようだ。

「姐さん、さっき魔術師とか治癒術師と一緒にいた人達ってなんですか?」

それは俺も気になってた。

「ああ、ありゃ料理人だね。

騎士団と見習いの小僧達、魔術師団に治癒術師合わせて百人近いからね。

他領とかならともかく、隣村だから何人か雇って手間を省くんだろうさ。

荷馬車の半分は食料と水と薪だ。」

それ以外は、鎧の可動部に差す油や磨く為の砂と空樽とボロ布。

諸々の修理や設営に使う工具類。

予備の武器類。

石鹸やタオル等の衛生用品。

医薬品。

着替えなどの衣類とからしい。

さほど太くない丸太もかなりの本数、積まれていたのが見えた。

あの丸太、何に使うんだろう。

それにしても料理人ね。

その分の労力も討伐に回したいのだろうか。


ちなみに、この国では基本四年目以降の騎士一人に騎士見習い一人が付き、従卒の役割をしている。

何で四年目からなのかは知らない。


騎士は基本、自分の事は自分でやるが、鎧のメンテナンスや装備品の準備等を、騎士見習いが「手伝って」いる。

見習いに丸投げするのは怠慢だとされているからで、特に剣のメンテナンスをさせるのは駄目な騎士の典型らしく、「剣を預ける騎士」は怠け者を指す隠語にもなっている。


見習いにとっては、実地訓練の意味合いが強い。

戦場にも出るが、戦闘への参加はあまりせず、予備や状況に合わせた武器を渡したり、弱った敵の止めを刺したり、伝令に走らせたり等の側面支援を担う事が多い。

ヤバくなれば当然戦うが、乱戦状態での騎士の背中を守るのが普通だ。


騎士が自分に従いた見習いを死なせるのは、同情の対象でもあるが、恥と見做される事も多い。

逆も同じなので、絆は思いの外強い。

アイツの知識の従卒とは若干意味合いが違うけど、役割は日本海軍の従卒に、違いは多いけど似てるかもしれない。


隊長クラスでは自分で雇った従者がいる事もある。

流石に小隊長クラスでは珍しいが、こちらは事務要員で戦場にはあまり出ない。

陣を張った時の連絡役や書類仕事等で同行する事も無くはないけど、直接戦う事はほぼないらしい。


話を戻す。


「大分話がずれたね。

ええとそれで、ああそう、設営が終わったら、簡単に打ち合わせをして、水の補給をしたら早速仕事だよ。

ミラとザラが来たら戦闘を含めた段取りの確認する。

先に言っておくけど、引き時の判断はアタシがする。

絶対に従いな。

いいかい、絶対にだ。」

ゴクリと飲み込みながら頷く。

眼力、ヤバい。

怖い。


「ミリア、お前達、待たせたみたいだな、って飯の最中か。」

「おはよう、ミラ、ザラ。

アタシ達の乗る馬車はあれだ。

コイツらの荷物も一緒に積んでやってくれ。」

「あいよ~。」

脇に置いていた荷物をミラさん達が持ち上げる。

「いや、悪いですよ。

食べたら自分達で。」

「気にするな。てかお前達。予備の武器は。」

「協会で借りたハンマーを使いますし、剣は持ってますから。」

「そうかい?

まあ、コイツは柄も鉄製だからなんとかなるか。」

そう言って馬車に向かって行った。

見ると俺達以外も乗るようだ。

「アタシ達の他に、三人組の斥候をやるパーティが乗る。

御者台に二人乗るから狭くはないだろうさ。」

視線に気付いたのか、姐さんが教えてくれた。


同じような馬車が他に六。

全部二頭立てだ。

どうやら馬車だけ用意して、自分達で乗って行くようだ。


「そういえばグレンさんと、マイラさん、あと知らない職員さんとかも現地に行くんですか?」

「ああ、ヤツラは現地で報告を受けたり、買い取りや鑑定をするのに同行するんだ。

それにアンタらが倒したヤツも頭以外は村だろう。

それを見ておくのもあるんだろうね。

まぁ、アンタらが殺ったのと同じようなサイズの魔石が取れるとなると、支払いはこっちに戻ってからになるだろうけどね。」

なるほど。

俺達は最後の一口を放り込むと、尻を払いながら立ち上がった。

水をゴクゴクと数口飲んで、腰に括り直した。


「そろそろ出発だ。

打ち合わせは馬車でしよう。」

人自体は集まったようだ。

積み込みを終えて乗り込んでいる人も多い。

俺達は姐さんに促されて、馬車に乗り込んだ。


中にはすでに人がいた。

見た事がある若い女性冒険者で、多分歳は俺達と同じ位。

長い黒髪を一房の三つ編みにしている。

たしか採取や探索をメインにしている人だ。

会員証をピアスにして耳にぶら下げている。

色は薄ピンク。

俺達と同じ三だ。

ピアスにする人は珍しいな。

腕組みしながらチラリと視線を向けられたが、すぐに目を閉じた。


御者台にもすでに二人いて、一人は長い短く切り揃えた金髪の男性で、獣人同様、この辺りでは珍しいエルフだ。

もう一人は赤髪を長めの坊主頭にした、細身の女性だ。

二人とも、顔は見た事がある。


姐さんが女性冒険者の隣。

俺達は向かいに座った。

その人は目を閉じたまま拳を上げると、姐さんが拳を合わせていた。

どうやら親しいらしい。


開いていた窓の外が、少し明るくなった。

どうやら屋根の四隅の松明に火が点けられたようだ。


ミラさん、ザラさんが乗り込んで来た。

ミラさんが俺の隣、ザラさんは姐さんの隣に、衣類用の鞄を渡してくれてから座った。

受け取って尻に敷いて座り直す。

チラッと見えたけど姐さんの鞄には「開けたら殺す」って書いてあった。

わかり易いけど怖い。


「さて、兄弟は分かれて前がミラ、後ろをザラが索敵。

発見次第合流して単体なら撃破、複数なら応援を呼び待機。

ここまではいいかい。」

前置き無しで始まった打ち合わせだったけど、特に問題なかったので頷いた。

「問題なのは抱卵中や育児中のメスだ。

普通、ムカデ系のヤツはオスメスの個体差は殆どないが、子や卵を守っているメスは凶暴な事で有名だからね。」

アイツの知識と同じだ。

魔物でも一緒らしい。


「孵化した幼体を守っている場合は、アタシ達では対処しきれない。

卵を守っているだけだとしても、アーネス達が倒した個体が幼体だとしたら、産卵したメスは最低でも五倍のデカさがある。」

ちょっと言葉が出ない。

その可能性を考えていなかった。

知識はあったのに。


「一応、最悪の想定だ。

お前達が倒した個体が成体で、番の片割れって可能性も十分ある。

余所からはぐれ個体が流れて来ただけの可能性も高い。

だが、最悪を想定しないのは自殺行為だからな。」

「逆に考えれば、二か月と言われる子育てが終わって、幼体が動き出していると考える事も出来るのか。」

「そうだ。

他のムカデ系の魔物の生態と照らし合わせると、年明けの雨季に卵を産んで、それが孵り、散り始めている可能性が一番高い。」

そしてメスが複数いて、まだ子育てを終えていない可能性もあるのか。

メスが複数なら想定される個体は、百どころでは済まない。

基本、群れを作る魔物ではないのが救いだが、騎士団に加え魔術師団が出てるとはいえ、対処しきれるのだろうか。


その時。

ガタリと揺れて馬車が動き出した。


ここまで来て退くわけにはいかない。

すでにめげ始めた気持ちに蓋をして深呼吸をする。

会話を聞きながら、戦闘時を想定して頭の中でシミュレーションを始めた。

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