表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/107

準備完了

各貴族家にはそれぞれ騎士団が置かれている。

概ね領地に比例して規模がデカくなる。

概ねなのは例外があるからで、人口千人に満たない領地に、人口以上の騎士が詰めている事もあるからだ。

希少な鉱物が採掘される鉱山とかがある領や、敵国と隣接する防衛の要衝とかがそれに当たる。

他にも色々あるが、基本は領民の数が物を言う。

税収で賄える以上の軍を置く事は、当たり前だが基本は出来ない。

だが魔物が跋扈するこの世界では、領民を守るのは貴族の義務の一つでもある。


バーゼル伯家騎士団は、一個連隊と魔術師団一個中隊を擁する。


部隊単位はどこもほぼ同じで、班、小隊、中隊、大隊、連隊となっている。

四人一組で一班。

四班に隊長と副長二人で小隊。

四個小隊で中隊。

四個中隊で大隊。

四個大隊で連隊。

隊長と副長二人ずつなのは、連隊まで一緒だ。


班長が小隊長に昇格する時に、自分の班の二人を副長に任命して、残り一人を班長に据える。

上のポストに上がる度に同じ班の者を引き上げるのが通例なので、班員の絆は深い事が多い。

能力不足だと追い越されるので、努力は大事だけど。


バーゼル伯家騎士団は千三百人余を有する、国内の貴族の中では中の上位の戦力だ。


一応、バーゼル伯領の人口は、公称六万と言われている。

アイツの知識からすると人口比に対して、常在戦力はやや多めだ。


ちなみにこの国の正規軍の王国正騎士団。

総勢二万人を超える大軍団だ。

四個連隊からなる、通称蒼翼騎士団。

同じく四個連隊の、通称緋翼騎士団。

四個連隊の近衛騎士団。

四個連隊の魔術軽騎士団という魔術師達の部隊。

魔術軽騎士団は魔術の研究もしているので、騎士団扱いだけど実働部隊は半分。

それぞれを副騎士団長が指揮を取っている。


バーゼル伯は、各村の守護騎士を二人から三人と十人前後の警備隊を、騎士団とは別に雇入れている。

その資金はどこから出ているのかと言うと、税収以外の部分が大きい。

具体的には魔物から取れる素材、主に魔石からだ。


バーゼル伯領内は北部と南部で景色が違う。

領中心部の領都周辺から南に広がる草原、北の湖沼地帯と山林。

そこに住むさまざまな魔物を騎士団が狩り、他領の魔物討伐にも出向く。

それによってバーゼル伯家騎士団は、自給自足に近い形で維持されている。

討伐主体の冒険者達とは、あまり仲良くなかったりするが、家騎士団の性質上は仕方ない事かもしれない。


ぱっと見は穏やかに見えるバーゼル伯領は、大型の魔物こそ少ないが、国内有数の魔物の生息地なのだ。



あの後すぐ、グレンさんは退出して行った。

書類仕事があるとかでブツブツ言いかけた時、マイラさんが一言、「支部長」と呼びかけた。


錯覚だとわかっているのに、何故か物理的に冷気を感じてしまうような声。

グレンさんは丸めかけた背筋を伸ばして足早に出て行った。


怖い。

かわいい系の顔立ちなのに、別種の怖さではあるけどあのムカデより怖い気がする。

「腕っぷし皆無なのに、この迫力出せるのはちょっと異常だよな。」

ミリア姐さんが同意を求めてくるが、ここは笑顔でスルーする事にした。


その後は依頼の手続きを済ませ、ミラさん、ザラさんと顔合わせもした。

この辺りでは全くいない事もないけど珍しい、獣人の兄弟で狼人族だった。

兄のミラさんは口数が多い糸目。

弟のザラさんは口数が少ない糸目。

髪型は一緒。

短めにした、偶然だと思うけどアイツの知識で言うウルフ。

髪色も暗いグレイで一緒。

狼人族にしてはかなり小柄らしく、俺達と身長は変わらないが、背中の厚みが段違いで鍛えられているのがよくわかる。

雰囲気は違うけど、ぱっと見では見分けがつかないくらいそっくり。

でも双子ではなく五歳、離れているらしい。

多分だけどミリア姐さんより、どちらも年上。

案外三十過ぎなのかもしれない。


簡単に打ち合わせもした。

主に必要な物資の事で、虫除けについても聞けた。

キアナの葉で問題ないが、ウーガの枝はいらないと言われた。

夜間は村でテントを張るらしい。

夜間は探索に向かず、元々夜行性のムカデを含めた魔物が活発に動くようになるからだと言われた。

確かにそりゃそうだ。


俺達の分のテントはミラさん達が用意してくれる事になった。

目安として六人用のテントを持っているとか。

姐さんは一人用のテントを持って行くらしい。

姐さん曰く、

「アタシは全然気にしないけど、アンタらが気にするだろ。」

と、ちょっと顔を赤くして言っていた。

これが厳つ可愛いってヤツか。


食事の準備も二人に任せる事になった。

探索ついでに休める場所も探しておくと言ってくれたからだ。

代わりに後で食材に掛かった分を、二人のも含めて請求してくれと申し出たら断わられた。

いらないのかと思ったが、予算を決めて先払いにしてくれとの事で、了承して一旦、五人五日分として大銀貨五枚をまとめて渡した。

もちろんミリア姐さんとアーネスからは徴収した。

姐さんは何も言わずにスッと出してくれたが、アーネスは、

「よっ、太っ腹。」

とか言い出したので殴ろうかと思ったが、ミリア姐さんのゲンコツが先だった。

「金はたとえ少額でもキッチリしな。

いくら幼馴染でも金で関係が壊れるなんて、肉親、恋人、関係なんざ問わずに、そこら辺に転がっている話だよ。」

と諭され、

「ゴメンな、ジェス。」

とか言いながら、涙目で財布を出していた。

ついでに昨日の昼飯代も払ってくれた。


そのやり取りの間、鏡合わせの動きで自分の尻尾を撫でるミラさんとザラさんの表情が、やけに生暖かい感じだったのが、印象に残っている。


そこで買い出しに行くという二人と別れ、ミリア姐さんに見てもらってハンマーを選んだ。

片側が尖っているタイプで何回か振ってみて、振り上げた時に体勢が崩れない重さの物にした。

選んでいる時に、空振った隙が大きい事、振り下ろしは縦に真っ直ぐ振る事、振り上げは牽制をメインにする事等のアドバイスをもらった。


他に必要な物はないか聞いてみたところ、換えの靴は絶対に必要だと言われた。

靴が破れたり、穴が開いたりすると、小さな虫や小石が入り込み易かったり、単純に足が疲れ易くなったりする。

何かで中まで濡れたりすると靴擦れが酷くなったり、足腐りと言われる症状を引き起こしたり、そこまで行かなくても不快感から、更に疲れ易くなったりする。

靴に気を使わないヤツは早死するとまで言われた。

足腐りとはなんぞと思ったが、聞いてみればアイツの知識の塹壕足の事だとわかった。


塹壕足とは、湿った冷たい靴下やブーツを長時間、履いていることによって起こる。

足が青白くなり、じとじと湿って、腫れているのに冷たくなる。

時には水疱ができて、それがつぶれ、感染症を起こすこともある。

治療せずに放っておくとやがて壊死を起こして、最悪の場合は切断になる。

温めると霜焼けの様な感じで赤くなり、触れると痛みを感じるらしい。

しかもそれが長ければ数週間続く。


そうなる前の軽傷なら温めて乾かすだけでいいが、霜焼けの様にお湯に浸けて温めるのはダメなんだとか。

予防は単純に靴と足を乾かし冷やさない事。

十六度以下で十三時間が発症の目安らしいが、靴や靴下が濡れていると、当然冷える。


塹壕で戦った兵士が多く発症したからこの名前だけど、二十一世紀の雨の野外イベントで罹った人がいるくらいで、けして珍しい病気ではないらしい。

野外活動が多い冒険者が罹り易いのも納得だ。


予備の靴を買っておいて正解だった。

靴下も何枚か買い足そう。

水虫になっても嫌だからな。


あとは水袋は二つあった方がいいとも言われた。

村を拠点にするから水の補給は簡単だけど、一日野外活動になるから一つでは不安だそう。

当たり前の事に気付いてなかった。

暑くも寒くもない時期だが、長時間の野外活動は脱水を起こしかねない。

納得だ。


あとは衣類用に小さめの鞄があると便利だとも言われた。

理由を聞くと、馬車での移動の時はクッションにしておくらしい。

なるほど。

あの尻の痛みを軽く出来るのか。

買おう。


打ち合わせや何だで、昼はとっくに過ぎていた。

ミリア姐さんはまだもう少し協会に残ると言うので別れて、俺達は遅めの昼食を取る事にした。

屋台の串焼きの匂いに釣られたとも言う。

大振りの串焼き肉を二本ずつ買って、街の中心にある噴水の縁に腰掛けて食べた。

肉はトカゲの魔物肉。

鶏肉に近いけど、柔らかくて肉汁たっぷり。

この辺りでは鶏肉より遥かに人気がある。

アイツの世界と違い、こちらの鶏肉は卵を産めなくなった雌を潰した物が多いので、安いがあまり美味しくない。

塩と香草で味付けされた串焼きは、普通に美味かった。


聞いておいた買い物を済ませ、昨日から行きたかった公衆浴場にも行った。

すっきりさっぱりしてから、鍛冶屋で修理してもらったナイフを受け取った。

宿に帰る頃には、日が落ちかけていた。


先に荷物の用意を済ませて、少し早いが食事を取った。

ステーキと野菜のスープと黒パン。

ステーキに掛かってた、ちょっと酸味がある茶色いソースが美味かった。


その後で宿の主人に翌朝が早い事を告げると、朝食はどうするか聞かれた。

どうするかとは、と思ったけど食べて出るのか、持って行くのかという事だった。

持って行きたいと言うと二人で、大銅貨一枚掛かると言われた。

手間賃と容器代らしい。

夜明け前なのに大丈夫なのかと思い聞いたが、仕込みをしているから大丈夫だと言われた。

ついでに水も頼んでおく。

買ったばかりの水袋と古いの、いつの間にか部屋に取りに行っていたアーネスが渡した。

料金を先払いし、明日から何日か戻らない事も伝えた。

料金は役所持ちだから知らん顔をしようかとも思ったが、仕込み等の手間を掛けさせるのが申し訳なかったので言っておく事にした。

部屋に戻ると、すぐに寝た。

寝過ごす訳にはいかないからな。


翌朝、二人ほぼ同時に目覚めた。

窓を見たが夜明けにはまだ時間がありそうだ。

すぐに準備を整え部屋を出ると、受付で朝食と水袋を受け取り宿を後にした。

夜明け前の、少しだけひんやりした空気が気持ちいい。

俺達は頷き合ってから歩き出した。


今日からは、戦場だ。

計算がおかしいかも。

一応何度も計算しているので大丈夫だと思いますが、いかんせんポンコツなもので………。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ