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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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帰還と報酬と待ち時間

市街門が見えた時、心底ほっとした。


荷馬車の荷台。

はっきり言って、苦行だった。

揺れるわ何やで、毛皮を何枚か重ねて敷いていたけど尻が死んだ。

動き出して直ぐに、交代で食事にしたが大正解だった。

小一時間も経たずに尻が痛み始めたから、間を空けていたら食事どころではなくなっていたと思う。

アーネスと半分に分けた、ベーコンと腸詰め。

イエロさんが言っていた通り、美味しかったな。


ちなみに積荷は大量の古布、それと毛皮だった。

ファングボア以外の毛皮も、家畜のも含めて何種類かあった。

あとは酒樽が何個か。

中身はミードらしい。

この辺ではエールもあるがミードが主流で、果実酒はエールよりも更に作ってないとか。


アイツの知識によると、ミードは世界最古の酒。

蜂蜜を薄めるだけで出来るから手間がかからないらしい。

蜜の味で酒の味も変わるので、同じ地域でも何種類も味があるらしい。

今度飲んでみよう。

俺たち、成人したし。


道中は尻の痛みを除けば、いたって平和だった。

またムカデが出るのを警戒してはいたが、杞憂に終わってホッとしている。


一度だけ脇からラムボアという、猪系の魔物が出て来た。

それをオコナーさんは御者台に座ったまま、槍で眉間を一突きにして仕留めた。


俺達は、「かっけぇ」と感動していたが、何事もなかった様に穂先を腰から下げた布で拭っていた。

直ぐに馬車を止め、俺達も手伝う様に言われて血抜きや解体をした。


道の真ん中だと、血の匂いに惹かれて他の魔物が集まってしまうので、少し草むらの奥に入ってやった。

草むらに入ったとはいえ、あまり変わらないとは思う。

でも道でやるよりはマシだし、血抜きしたまま吊り下げたりして移動すると、自分達が危ない。

しかも肉の鮮度も落ちる上に、街に魔物を呼び寄せる行為として禁止されてもいる。


ちなみに俺にもアーネスにも、獣の剥ぎ取りの経験はない。

運ぶのを手伝った後は、周囲を警戒しつつ見学させて貰った。

その後で切り出した肉や内臓等を、ボレアの葉で包んだりもした。


ボレアの葉はよく肉屋でも使っている大きな葉っぱで、この草原でもあちこちに生えている。

他の葉で包んでいるのは見た事がない。

理由は知らない。

勝手に殺菌作用とかの効果があるんじゃないかと思っている。


オコナーさんは口数は少ないけど、丁寧に教えてくれた。

傷跡や槍捌きから怖そうとか思っていたけど、普通にいい人だった。

終わったらオコナーさんが銀貨を一枚、二人で分けろと言ってくれた。

毛皮も肉も内臓も、そして骨も売れるので、解体を手伝った手間賃との事だった。

道中の獲物はオコナーさんの取り分らしい。


結局、行きは五時間掛かった道のりを、解体や何やありながらも、四時間掛からずに戻って来れた。

まだ日没前。

本当に助かった。


門で二人に別れを告げてお礼を言うと、俺達は急ぎ協会に向かった。

受付には顔見知りの、長めのボブがよく似合ってるお姉さんがいたので、割符を渡して依頼の精算をして貰った。


「はい、依頼料の銀貨三枚ね。

それより聞いているよ、バカでっかいムカデを倒したんだって?

頭部を持って来てるでしょ?

ほら、見せて。」

アーネスが背負子を降ろして、ボロに包んで吊っていたムカデの頭を出す。

アーネスが用意している間にお姉さんは、大きな四角い銀盆を用意していた。


「本当に大っきいわね、これ。

鑑定に回すから時間を貰うわね。

明日の昼以降なら、討伐報酬を受け取れる様にしておくから。

このまま買い取りしても?」

俺達は顔を見合わせると、首を振った。

「オッケー、薬屋に持ち込みたいのね。

ただ、鑑定次第では強制買い取りになる事もあるから、それは了承してね。

理解したらコレにサインと血判を。」

お姉さんがムカデの頭を乗せた銀盆を脇にずらし、書類とペンと、持ち手の玉が付いた針を出した。

俺達はそれを受け取ると、サインして血判を押した。


血判は協会では日常的に行われていて、物騒なイメージはない。

商人も契約書に血判を押すらしい。

アイツの知識では東洋の文化で、西洋文化では用いられてなかったらしい。

もっともアイツの知識の西洋文化と、こちらの世界では似てるところも多いけど、違いも多い。


「コレの買い取りを。」

アーネスがそう言って鞄から取り出したのはムカデの魔石だ。

赤ちゃんの頭くらいのサイズ。

色が濃いのでわかりにくいが、赤みが強い紫で向こうが透けて見えている。

「あら、魔石も大きいわねえ。

色も濃いし、透明度もある。

多分、かなり良い金額を提示出来ると思う。

コレも鑑定になるから明日取りに来て。

こっちは朝一でも大丈夫よ。」

「いや、昼に一緒でいいや。

それでいいよな、ジェス。」

「ああ、いいよ。」

「それじゃ、これにもサインと血判を。」

そう言いながら、お姉さんは書類と六角形の窪みが付いた、台形状で掌サイズの道具を取り出した。

俺達がサインして血判を押すと、それをさっき血判を押した書類を重ね、その上に道具を置く。

「会員証を。」

俺達は革紐でペンダント状にしている会員証を、胸元から取り出し首から外した。


会員証は、魔石を子指の第二関節位の長さと太さの六角錐に加工して、留め具を付けた魔道具だ。

冒険者の名前、性別、年齢、ランク、契約等が記録されているらしい。

加護も記録されるけど、祝祭の後に初めて使うと記録されるので、俺達はまだだった。

通常の依頼とかでは達成時にしか使われないが、今回のような後で支給される報酬がある場合は、ダブルチェックの意味も込めて書類と一緒に使われる。


ちなみにランクが変わると色も変わる。

一は無色透明。

駆け出しは色無しとも言われるけど、これから来てる。

俺達の二は、淡い水色。

三は淡いピンクで、四が赤。

五は紫。

六が透明。

一とは違い淡く光っていて、覗き込むと虹色に輝いているらしい。

アイツの知識のダイヤモンドみたいなモノと想像してる。

滅多に六ランクはいないので見た事はない。

確かこの街の協会には、最高でも五ランクの冒険者しかいないはず。


ちなみに会員証は世界共通らしい。

情報や技術が伝わり難いこの世界で、世界共通ってかなり凄いと思う。

種族国家とかには、閉鎖的なところもある。

魔物だってあちこちにいるのに、どうやって広めたのだろう。


とはいえ協会がない国も、もちろんある。

登録時の講習で習うのだが、この大陸の三分の一を占める南西の魔族国家のザーベック。

大陸東側の紛争地帯にある幾つかの国と、南方の海上に点在する言われている、島国の内の幾つかがそうらしい。


国ではないが一年の大半が雪に覆われているという、北方大陸南岸の大きな集落にも協会がある。

集落の近くには希少な金属の大規模な鉱脈と、とても珍しい魔宝石という、宝石が魔力を溜め込み魔石化した物が採掘出来る洞窟が存在しているらしい。


話を戻す。

取り出した会員証を窪みに嵌め込むと、書類のサインと血判、会員証が淡く光った。

魔道具から取り外すと、二人の会員証がどちらも薄ピンクになっていた。


「これ壊れてない。」

俺がそう呟くと、お姉さんが笑いながら言った。

「本来なら今回の依頼を含めた二回の依頼達成で上がる予定だったの。

でも今回は遭遇戦だけど、討伐は討伐だから三以上の依頼を達成したとして、実績になって記録されたのよ。

何もおかしくないわ。」


ふと隣のアーネスを見ると、やけにキラキラした笑顔を浮かべていた。

この顔を見るのも何か久しぶりだな。

でもな、アーネス。

ランクが上がるって事は、国に取り込まれて自由が無くなるのに一歩近づいたって事、気付いてますか?


あと昼飯代は後で貰うからな。

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