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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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終わりよくても

「こ、コイツはデカい。」


下馬しながら、誰にともなく村の守護騎士が口にする。


「グーバ、噛まれたりしてないか?

君達も、大丈夫かい?」

気遣わし気にそう声を掛けてくれたが、俺は頷くのが精一杯で、ちょっと声が出せなかった。

騎士さんは手を差し出すと、おっちゃんの手を取って立ち上がらせた。


「いや〜、ニイちゃん達が来てくれなかったら、今頃どうなってたか。」

おっちゃんは尻から土を払いながらそう言うと、死んだムカデを見てブルりと体を震わせた。


アーネスが立ち上がったのを見て、俺も立ち上がろうとしたが、ちょっと膝に力が入らない。

「ほら。」

アーネスが差し出した手を取ると、引っ張り上げてくれた。

俺よりメンタル強いな、コイツ。


「村の者を助けてくれてありがとう。

私はグラース、グラース・オルダ。

村の守護を任されている者だ。」

彼はそう言うと左胸に右手を添え、少し頭を下げた。

この世界の騎士の礼で、守護騎士同士がやっているのを何度か見た事がある。


短く整えられた髭と、低音でなかなかの美声も相まって、カッコいい。

見た目の年齢は、死んだ父と同じ位。

多分三十台半ばってところかな。

「アーネストリーです。」

「ジェスターです。」

俺達が名乗ったところで、武装した警備隊の人達、五人が到着した。


「うわ、でっけえ。」

「なんだ、こりゃ。」


やって来た人達が驚いている。

彼らでも、この大きさのムカデは見た事がないようだ。


「バス、ヤード、済まないが急ぎ村に戻って適当な荷車を。

他の三人は戻るまで、ここで警戒をしてくれ。」

指示を出したグラースさんが、ふとムカデに目をやった。


「この折れてしまった剣は君のかい。」

「はい。」

「そうか。

では村で私の予備の剣から一振やろう。

村に行くのだろう?

どのみち話を聞いて、調書を取らねばならんしな。

ガッシュ、見繕ってやってくれ。」

「いや、悪いですよ。」

「気にしないでくれ、私からの個人的な礼だ。

グーバは酒仲間でな。

もちろん何らかの報酬は、報告の後に出すよ。

領都の詰め所で受け取れるよう、手配しておこう。」

グラースさんはそう言うと馬に跨った。


「アルダー、私は急ぎ領都まで一駆けして、騎士団に報告を入れ、協会に調査と討伐の依頼を出す。

一匹しかいないとは、ムカデの生態からは考え難いからな。

村のこんな近くで、何匹も出られたらたまらん。

バロウズに後は任せると伝えてくれ。」

言い終えるとグラースは馬にひらりと飛び乗り、その腹を蹴って駆け去って行った。


「君達お手柄だったね。

俺はカイン、礼を言わせて欲しい。

グーバさんは俺の叔父なんだ。」

名前を呼ばれていなかった一人が、そう言って頭を下げた。


「イヤイヤ、頭を上げてください。

無視して通るのは村に向かう以上は無理だったし、倒せたのはたまたまですから。」

驚いてそう言うと、カインさんは笑いながら顔を上げた。

五人の中で一番細身で小柄。

言われて見ればおっちゃんに、顔立ちが似てるような気もする。


「そうだ頭部は切り落として持って行くといいよ。

協会で見せたら報酬が貰えるからね。

その後で薬師に売るといい。

協会よりも、高く買ってくれるはずだよ。

あと頭の三つ下の節に、魔石があるはずだから取り出しておいて。」

正直、うへぇと思ったが、やらないのも勿体ない。

仕方なく腰のナイフを抜こうとしたが、投げたのを思い出して手が泳いだ。


「コレ、お前達のか?落ちてたぞ。」

そう言ってナイフを手渡してくれたのは、ガッシュと呼ばれていた、五人の中で一番背の高い人だった。

背恰好は厳ついけど、顔は何だか優し気だ。

下がった眉尻と目元の印象から、そう感じるのかもしれない。


「ちょっと曲がっちまってはいるけど、鍛冶屋に持って行けば直るよ。」

這いずった時に抜けたのか。

せっかくの新品ナイフまで折れなくて良かった。


「ニイちゃん達、俺は先に村に行ってるぜ。

ニイちゃん達が運んで来た荷車も、一緒に繋いで引いて行くからよ。

警備隊の詰め所の前に置いておくわ。」

いつの間にか俺達が運んで来た荷車を、縄を使って牛車に繋いだおっちゃんが、御者台から声を掛けて来た。

そのまま背中で手を振りながら、村に向かって行った。


ふと見るとアーネスは剣を抜いて、頭の節目に突き刺そうとしていた。

「ああ、待って待って、言い方が悪かったね。

毒のある顎肢が生えてる節まで切り取って。

あと剣だとやり辛いだろうから、これを使って。」

それを見たカインさんは、慌てたようにそう言うと、鞘ごと腰から外して少し大振りのナイフを差し出した。

「ありがとうございます。借りますね。」

アーネスは礼を言って受け取ると、解体に取り掛かった。


手持ち無沙汰になってしまった俺は、何気なく辺りを見渡すと、折れてしまったピッチフォークが目に入った。

依頼品、壊しちゃったな。

弁償か、罰金かも。

高揚していた気分が沈んで行く。

赤字って事はないだろうけど、何だかちょっとだけ、ケチが付いた気分になっていた。


その後、荷車を引いて戻って来た警備隊の二人も含め、皆でムカデの死骸を積み込んで村に向かった。

依頼が終わった訳じゃない。

帰るまでが依頼だ、そう気を取り直してアーネスと二人並んで歩き出した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] デカいムカデ。 そのサイズを考えると、結構怖いですね。 守護騎士も警備隊の人達も親切ですね。 どういう風に死骸をばらしたら、 いいかのレクチャーは有り難い。 さて、総額でいくらになるのか?…
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