選択の裏側で
一方その頃。
一本の道だけが広がる道路の上を、一台の馬車が通っている。
「――はい。たまたま近くを通りかかったので気付けたのですが……港町ピスカと、その近くにあった小さな村は壊滅……いえ、あれは消滅といったほうがよいのでしょう」
その馬車の中に乗り込んでいるうちの一人、黒い長髪と白い軍服が美しい一人の少女が、両手に握った灰色の箱に向かって話していた。
『消滅……か』
「えぇ。何一つ残っていませんでした。あれは……獣や災害に襲われた跡ではないでしょう。超法則を持つ第三者の仕業と思われます」
『なるほどね。…君たちは至急、国に戻りなさい』
「無論です。今まさに馬車でそちらに」
『君たちは優秀で助かるよ』
「もったいなきお言葉です」
『それじゃあね。僕もいろいろ動かないと』
「はい。それでは……はい。失礼します」
黒髪の少女は灰色の箱をゆっくりと床に置く。その少女とは別に、今度は肩まで届く長い茶髪をしている体格の優れた男が声を出す。
「そっちはどうだ?」
その呼びかけに対し、黒と派手なピンクが目立つセミロングの少女が弱弱しく返す。
「わ、私の超法則をかけてみたんですけど、元々の状態がひどくて……た、たぶん、五感は治っていません」
その少女の奥で横になっている男は、小さな声でずっと同じことを呟いていた。
「あの男――――――絶対殺したる」