方針転換と次の標的
都市国家ミライは壊滅……否、消滅した。どこまでも広大な平地の上に一人、クシアは昼寝でもするかのように寝っ転がっている。
『…うまくいったようね』
そこへ、クシアの脳内に聞きなれた声が聞こえてきた。
「よぉ。復活できたみてぇだな、カース」
『まぁね。とはいえ一度死にかけたわよ。アンタにも当たっていたら本当に危なかったわ』
冷静な声でそう話すカースに対し、クシアはケラケラと笑いながら返す。
「心配するな。どのみち俺にアレは当たらねぇ」
『そりゃ今回はよけられるからよかったけれど……気を付けてよね? いくら私でも、アンタでも、同時に虚法空間に触れたら流石に死ぬわ』
「それもそうだな……なんか考えとくよ」
『そうして頂戴。…ところで、次はどこに向かうつもり?』
クシアはゆっくりと上半身を起こしながら、胸元に手を突っ込む。ドロドロになった闇の中から地図のようなものを取り出し、それをしばし眺める。
「義賊連中が言っていた『地図に載らないような町や村』っつーのは気になるが……まぁそこはもう放っておいても自滅するだろ。だが、地図に載っている国はここからだとどこも遠い」
クシアは自身の足をじっと眺めながら続ける。
「世界法典を使ってみてはじめて分かったが……かなり大量の闇を消耗するみてぇだ。感覚だけでみると全力を出せるまでに三日以上はかかっちまう。…世界法典はしばらく封印するべきだな」
クシアは試しに闇を放出しようとしてみるが……今は超法則を全然使えそうになかった。
「こんな状態の俺じゃ、一番近い国に移動するだけでも一日はかかる」
『それは厄介な話ね』
「そう、厄介だ。あれだけ発展していた国を全壊させた以上、周辺国は当然としてあちこちの国が気付き始める。もうバレないように破壊していくことは不可能だ」
もっとも、それは小さな村や町を狙い続けても同じこと。どのみち隠し通すことなどできない。
「だからこそ、次に狙う国は強い力のある国にするべきだろうな。もう隠し通せない以上、国同士で連携を取られるリスクは否定できねぇ。だったら強い国から潰していくべきだ」
『なるほどね。その理屈でいうと、次に狙う国は――』
「――――月体国だ」