虚法空間
「……やったのか」
デノスは澄み渡る青空を呆然と眺めながら呟く。
「…………勝った」
トアも最初はあっけにとられていたが、次第にその表情が明るくなっていく。
「勝ったのね……私達」
そしてトアは全身の力が抜けたかのように地面に寝っ転がる。
「だ、大丈夫か、トア!?」
デノスが慌てて立ち上がり、トアに手を伸ばす。
「大丈夫よ」
トアは満足そうな笑顔を浮かべながら、その手を取って起き上がる。
「しかしまさか、本当にうまくいくとはな……」
デノスの超法則は『死』。触れたものを無条件で死に追いやるというもの。この触れたものというのは人間に限定されないということはトアもデノスも知っていたことだ。
トアが考えていた最後の手段とは、自身が作った空間をデノスの超法則で殺すというものだった。人間に限らず生物を殺すことができるのなら、超越的な力とはいえ人間から生み出される超法則も殺せるのではないかと考えていたのだ。確証はなかったのだが。
結果的にその賭けは成功した。
超法則で生み出された空間を殺すことで、その空間は一時的に現実世界の法則にも超法則にも属しない……あらゆる存在を消滅させる『虚法空間』となったのである。