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一瞬
トアはほんの一瞬だけ、デノスの方を見たまま目を見開いて呆けていたが。
「……ありがとう」
そうつぶやきながらそっぽを向くように俯く。その口元は微かに緩んでいた。
「二人で最期を語り合うのは結構だけれど、もうそろそろ殺しちゃってもいいかしら?」
カースは二人が話している間もなおゆっくりと距離を詰めてきている。余裕の表れなのだろう、カースは闇を大量に放出しつつもなかなかとどめを刺そうとしない。
「……チャンスは一瞬しかないわ。うまくやってよね」
「任せろ」
デノスはそういうと、トアの斜め前に立って構える。
「ん? 何かするつもりね……そうはさせないわ!」
カースは急に速度を上げて二人に迫る。
「もう遅い!」
トアは二人を守る歪みを解除し、まっすぐに伸ばした腕の手のひらからカースを貫くように伸びる細い円柱をイメージし、その領域を歪めることでデノスにも見えるようにする。
その瞬間にも、カースが放出していた闇が二人に迫る。それでも二人は怯まない。
「今!」
トアの叫び声と同時に、デノスはトアがイメージした円柱に触れ、超法則『死』を発動させる――