命を賭ける
「……そんなことは考えもしなかった。本当にできるのか?」
デノスがトアに聞かされた最後の手段とは、今までの超法則の常識からは考えられないような話だった。だからこそ、今のデノスにはそれが上手くいくとは思えなかった。
「分からない。でももう、これしかない」
そしてそれはトアも同じだ。
だが、トアの超法則では、デノスの超法則では、カースに対抗することができない。カースは今もなおゆっくりとこちらに近づいてくる。このまま何もしないでいては、二人仲良く死ぬだけだ。
「それが上手くいかなかったら死ぬぞ、お互い」
「…私は昔、この国に来るまでずっと変わってると言われながら、いろいろされながら育ってきた。それでも、この国の人たちはもっと変わってる人ばっかりで……私のような存在でも笑って受け入れてくれたの」
「トア……」
「私はこの国のことが、この国の人たちが好き。だから、皆を、この国を守りたくて神官になった。あんなのに全部壊されるくらいなら、私の命なんか捨てたっていい。だから――」
トアはデノスの目を真っすぐに見据え、悲痛な表情で懇願する。
「――お願い、デノス。私に、命を賭けて!」
それは、デノスからすればあまりにも勝手な願い。
それでも。
「いいだろう――君が悲しむくらいなら、私も命を捨ててやる」