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迫る死期
「……」
焦りを隠せていない表情で黙り込んでしまうトア。
カースは大きな口を横に歪ませながら、ゆっくりと二人に近づいてくる。
「あなたの超法則は、『歪み』の所有者そのものには作用できない。だというのなら、闇を放出しながらあなたに直接触れてしまえばいい。あなたはそこから動けないまま、アタシを殺すこともできないまま、二人仲良く死ぬのよ」
悪魔に死の概念がない――その言葉が本当だとするのなら、デノスの超法則はあの化け物には通用しない。デノスはトアとは同僚のような間柄であることもあって、彼女の超法則のことをある程度は知っている。だからこそ、彼女もまたこの状況には対処できないことをデノスは知っていた。
「くっ……」
このままでは、二人揃って死ぬ――デノスの表情からも焦りが見え始める。
「さぁて、覚悟はいいかしら?」
二人の死期は止まることなく、ゆっくりと、確実に近づいてくる――