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鬼ごっこ
それから、少し時間が経過した後。
「待てェェッ!!」
そこには、トアが激しく激高しながら、すさまじい速度でクシアを追いかける光景が繰り広げられていた。
「待たねぇよ、バーカ!!」
一方、追いかけられている側のクシアはどこまでもバカにするような大声でトアを挑発しながら、至る所に闇をばらまいては破壊の限りを尽くしていた。
クシアはあっちこっちに方向を変えながら高速道路の車並みの速度で移動し続けている。トアはまるでウサギがジャンプするかのように低く鋭い飛び移動でクシアを追いかけているが、なかなかクシアに追いつくことができない。
移動速度だけなら、僅かにだがトアに軍配が上がる。それでも追いつけないのは――
「――ッ!!」
時折クシアがトアに向けて闇を放ってくるからだった。自身に向けて闇が放たれたとき、トアは身を守るために移動を止めざるを得ないのである。
「……やっぱりな?」
突然、クシアがおもむろに動きを止め、トアの方に振り返る。
「テメェの超法則……空間を大雑把にしか歪められないんだろ!」