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あなたでは勝てない
(……な~んか、妙な感じだな。…別に要らねぇと思ってたが、試してみるのはアリだな)
先程の出来事に対して、クシアはどことなく違和感を抱きつつも。
「これならどうだ?」
今度は津波のような闇をトアに目掛けて大量に放出する。
トアの全身は一瞬にして闇の中に飲み込まれ、ついでのように周囲の建物も闇の中に飲み込まれていき――
――しばらくして闇が引いた後。
周囲にあった建物は軒並み消滅しているのとは対照的に、トアはなにもされませんでしたとでも言わんばかりにピンピンとしている。
「へぇ」
その光景を彼女の後ろから見ていたクシアは面白いものを見たかのような声を漏らす。
(……なるほどなァ)
そして、クシアが何かに気付いていた、その時。
「…もう、いいでしょう」
彼女は懐から剣を取り出しながらクシアの方をみてぽつりとつぶやき――
「あなたでは、私には勝てません」
――その言葉の直後、クシアの心臓に向けて投げられた一本の剣が、信じられない速度で突き刺さった。