二回戦開幕
「逃げてれば……よかっただと……?」
この時、超法則『手法』を取り込んでいるクシアは逃げたところで無意味だということに気付いていた。
「あぁ、逃げてればよかったのさ。これだけ便利な超法則を持ってたんなら、わざわざ俺に敵対しなくても外に逃げることくらいできただろ。テメェの仲間も、テメェらの帰りを待つ連中も、テメェ自身も、死ぬことはなかっただろうなぁ」
気付いていた上で、あえてそう言い放った。
「…………そんな………………」
ワンダの脳内に、ついさっきのレディの言葉が再生される。
『ワンダ……逃げろ』
レディは死んだ。
「あぁ……あぁあ…………」
自身ももうすぐ死ぬ。
自分たちの帰りを待っている子供たちももう、助からない。
「あぁぁあぁ…………」
もし、最初から逃げる選択をしていれば――もっといい選択肢を選べたかもしれない。
だが、その後悔は――あまりにも、遅すぎた。
「あぁぁああああああああああああああああああああ!!!」
ワンダはボロボロの両腕を強く地面にたたきつけ、地に伏せて悔しそうに泣き叫ぶ。
「ククク……最高だぜ、その姿。もっと眺めていてぇところだが――」
クシアはワンダの全身を貫くような槍のような闇を放出し、一瞬にして絶命させる。
「どうやら、そうも言ってられなさそうだ」
そして、ゆっくりと立ちながら後ろを振り返る。
その視線の先には――赤い短髪が特徴的な、若く美しい女性が立っていた。