機転
「へへっ、やっぱりなぁ……てめぇら、何のために盗みを働いてんだ?」
クシアはけらけらと笑いながら、何を思ったのか盗賊二人相手に会話し始める。
「やっぱりあれか? 金のためかぁ?」
レディはクシアが何を考えているのか理解できず不信そうに顔をゆがめたが……何か考え付いたのか真剣な表情に変わり、静かに、はっきりとした声で返す。
「金のためというのは間違いではないが、金を集めるのは俺たちのためではない。俺たちは貧民街に寄付するために、裕福な国から宝を盗んでいる」
「……へぇ」
「この世界には明日の生活すら危ういほど貧しい人たちが住む村や町がある。それなのに、裕福な連中は揃いも揃ってその存在を無視してこんなにも豊かな生活を享受している。そういった町や村は彼らからは人々の生活圏とは見なされず、最悪の場合地図に載ることすらないまま全滅していくというのに……こんな不平等は、あってはならない」
「……」
「だから、俺たちがいる。この世界には悪にしかできない正義があるんだよ。だから……」
レディはクシアを真っすぐ見据えて問う。
「……俺たちのことを見逃してくれないか?」