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誰のために
「そこのお前、止まれ!」
俺が破壊して回ってからしばらくたったとき、そう呼びかける中年の男の声が聞こえてくる。
「あ?」
別に止まる必要もなかったのだが、ちょっとした気まぐれで足を止めてその声がする方を見てみると……そこには、全身を鉄の鎧で包んだ何十、何百もの兵士が俺に向けて剣を構えている姿があった。超法則持ちがこれだけ大勢、同じ姿でかかってくるとも思えない。
「…俺が言うのもなんだけどさぁ、おめーらの国大丈夫か?」
まさか神官ではなく一般兵を差し出してくるとは思っていなかった俺は、あきれたようにそう聞いてみる。
「私だって本当は逃げたいさ……だが、逃げたら処刑される」
「ははっ、思ってたよりも腐ってやがるな。まぁどのみち逃げ場なんてねぇが」
「そう、逃げ場なんてない……お前を倒さない限りは」
その兵士からは、なんとなく覚悟を感じる。
「どうせ死ぬなら、国民のために死んでやるさ」
その覚悟を受けた俺はニヤニヤしながら言い放った。
「心配しなくても、国民もろとも殺してやるよ――――俺のために、な」