闇と光
「キサマこそ……無抵抗な子供を手にかけて、心が痛まないのか!」
顔は白い鎧で見えないが、どうもひどく憤慨しているらしい。
「わりぃなぁ、俺はお前らのこと殺すしかねんだわ」
「……っ! おのれっ、神より賜りし超法則を、虐殺のためにつかうとは……!」
この世界には魔術などの類は存在しない。魔法もなく、この世界の住民はほぼすべてが、特別な力など何一つ持ち合わせていないただの一般人だ。
ただし、そこには一つ例外がある。
それこそまさに、目の前の白い塊が口にした「超法則」。現実世界の法則を超越した特別な力のことを、この世界ではそうまとめているんだそうで。誰でも使えるわけではないこと、人知を超えた力を行使することが可能であることから、その力を持つものは神の寵愛を受けた、などと本気で信じられているらしい(笑)。
「超法則をもちながら神官にならない奴は死刑なんて、笑っちまうよなぁ? こんな小さな村にお前みたいなのがいるのも、そういうことなんだろ?」
超法則を持つものは国に仕え、国の指示に従う神官となることが義務とされている。神官になってやらされる仕事は、大抵の場合国を離れて村や町の用心棒。神官(笑)。
「力を持つものが、弱きものを救う責務を負うのは当然のことだ。ましてや虐殺のために使うなど、言語道断! 貴様はここで、私が処刑する!」
聖騎士様はご立派なことを吠えながら白い炎のように白い剣を空に出現させ、俺に向けて飛ばしてくる。
「はいはい、責務ねw……ほいっと」
俺は黒い闇を腕から放出し、その白い剣を打ち落とそうとした。
――だが。
「……は?」
その白い剣は闇を切り裂き、俺の体を一直線に貫いた。