まっすぐな川のように その3
「そもそも、僕達のチームが有益な情報を得られたのはチーム分けの偶然によるところも大きいし……なにより、君たちがいなかったら、"他の場所には有益になりえる情報がなかった"ということが分からなかった。
その情報がなかったと分かるだけでも、調査として重要な意味がある。
僕は、皆がいなきゃ拠点を特定することはできなかったと思ってるよ」
嫌味も含みも一切ない朗らかな表情で、ただ純粋にそんなことを言い出すリアクの姿を……他六人はどこか驚いているかのような表情で見ていた。
「……あ、あれ? みんな、どうしたの?」
そんな皆の反応にリアクが戸惑っていると、
「お前って、本当にいい奴っつーか……凄い奴だよな……」
「全くだ。お前には敵わん」
六人は穏やかに笑いながら、再び歩き始める。重くなりかけていた空気が、また軽くなっていくのがリアクには分かった。
「ボルティアはリアクを見習った方が良いわよ」
「なっ…フォス、それお前が言うのか!? そもそもお前が言い出したんだろ!?」
「…ボルティア。こればかりはフォスの言う通りだ。お前はもうちょっと、リアクのように人の心を見るようにした方が良いと思うぞ」
「キースまで!? そりゃどういう意味だよ!」
「それは俺の口からは言えないな。なぁ、エダロ?」
「……そうだな。私でも分かることが分からんような鈍感さは、どうにかした方がいいだろう」
「ちょっと、キースもエダロも何言ってるの!? …っ、ニヤニヤするなぁ!!」
「「別にニヤニヤしてない」」
「さっきから何の話してんだお前ら……?」
「……ボルティア、僕からも言っておく。もう少し人の心を見ろ。少しは察せ」
「ティルボ、お前まで!?」
そんな彼らのやり取りを、リアクは穏やかな表情で眺めながら、一人思う。
この世界には沢山の人がいて、それぞれがそれぞれの想いを抱きながら、今この時を共に生きている。
誰かと仲良くなったからでも、単なる偶然にしか過ぎない出会いの中でも、きっかけはなんでもいい。
仮に成果を挙げられなかったとしても、たとえ能力なんかなかったとしても。
こうやって、誰かと言葉を交わし合い、なんでもない話で笑い合いながら、誰かと共に生きていく。
ずっと……そんな、何でもないけれどあたり前の日常が続いていてほしい。
(だから、僕は……)
リアクがふと目線を街の端へそらしたとき、その瞳が微かに見開かれる。
――――その視線の先で、何者かに拘束されている女性の姿が見えたからだった。




