暗躍する人形
一方、その頃。
「……てワケでさ。わるいんだけど、お願いできるかい?」
一晩で元の姿に戻っていたクシアは、人目のつかない路地裏で誰かと会話しているようだ。
「これを、この絵の少年に飲ませれば良いのですね」
漆黒の闇が佇む瓶を片手に淡々と答えたその人物は、フォニアだった。
「ですが……このヘタク…いえ、このような不正確な絵では、相手を渡し間違えるかもしれませんが」
「大丈夫だよ。実物を見れば多分、誰が見ても分かると思うから」
「だといいのですがね」
「万が一君が間違えても、ま、なんとかするさ」
「クシア様が直接向かわれた方がよろしいのでは?」
「そうしたいのはやまやまなんだけどね。俺はこれから、やらなきゃいけないことがある」
「……はぁ。はいはい、承知しました。やっときまーす」
フォニアは心底めんどくさそうに手をひらひらとさせながら、その場を歩いて去っていこうとすると。
「あ、待ってフォニア」
クシアが一言かけて引き留め、続けていった。
「できる限りでいい。今日は可能な限り、ルフナと一緒にいてくれると助かる」
「………………御意」
フォニアは一言だけそう言うと、そのまま歩いてどこかへと行ってしまった。
「さて、と」
クシアが一人小さく呟いた次の瞬間には、その体はみるみる別人の姿へと変化していく。
「一足先に仕掛けさせてもらおうか」




