対立
門番役の男が立っていた箇所を中心に、周囲は一瞬にして壊滅した。ついさっきまで家だったものは瓦礫の山となり、その瓦礫の山からなんとか這い出ようともがいている手がいくつか見える。門番だった男は、立つために必要な意思と心臓を断絶されて立てなくなり、無造作に倒れこむ。
「きゃああああああああああああ!」
「うわああああああああああああ!」
ようやく、今村に迫っている異常事態に感づいた村人たちは悲鳴をあげ、その場から散り散りになっていく。
そんな住人たちをよそに、動かなくなった体の元に一人の男がゆっくりと空から降りてくる。
「……邪魔くせ」
男は、足元の死体を踏みつけ、そのまま潰した。周囲に赤黒い液体が飛び散る。
死体を踏みにじった男の姿は異様だった。全身をボロボロの薄茶色の布で覆い、頭にはその格好に似合わない鉄鎧の兜をかぶっている。兜はまるで悪魔を閉じ込める檻のよ如く、その奥に潜む顔を闇で覆い隠す。彼の両腕からは黒い……真っ黒な、キリのような何かがにじみ出ている。
「……っ、だ、誰か……」
「お母さん、助けて……」
「父さん……母さん……」
「嫌だ、嫌だ……」
四、五人の小さな子供たちが、異様な男に恐怖し、足をすくませ、動けなくなっている。誰も駆け寄ってこない。子供達は既に、親を殺されていた。怯える子供たちを、鎧頭の男は見逃さなかった。
「へっ」
男は子供たちに向かって腕を振りかざし、黒い霧のようなものを子供たちに向けて放つ。黒い霧が子供たちに触れた瞬間、まるで赤いスプレー缶を爆発でもさせたかのように、皆爆ぜて消え失せてしまった。悲鳴を上げる暇さえ与えなかった。
「子供を手にかけるのは流石に気が引けるが……あぁいうのも殺さねぇとだからなぁ――っと」
男は自分に向かって飛んできた白い剣のようなものをひょいっとかわす。
「んだよ、不意打ちとか三流のやることだぜ? ――神官様よぉ」
その視線の先に立っていたのは、全身に真っ白な鎧を身にまとう騎士だった。