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役割 その一


 マルスにとってはあっという間に思えるくらい短く、亡霊にとっては気が遠くなるくらい長い時間が経過した頃。


「――――――――……終わった?」


 大穴のフチに座り、魂を操って遊んでいたマルスの元へ、クシアがゆっくりと近寄ってくる。


「うん、終わったよ。全員殺ったと思う」


 マルスは魂弄りを辞め、のんびりと腰を上げる。


「村の連中、ここの底に避難基地を作ってたみたいでさ。そこに皆隠れてたんだよね。オジサンの記憶を見なきゃ気付かなかったかも」

「死人の記憶も見れたのか…便利だな、お前の超法則」

「まぁね。あーでも、いろいろ条件? 的なのがあるっぽいんだよね。魂って死んですぐは新鮮なんだけど、長くたつほど腐る…っていうのかな。記憶がどんどん消えて人格だけが残るようになるみたいでさ。取り込んですぐじゃないと記憶までは見れないっぽい」

「へぇ…どういう理屈なんだろうな?」

「さぁ? でも別にいいじゃん。死人の記憶なんて、こういう時以外は価値ないっしょ」

「…そうだな」


 クシアは胸元の闇から手のひら二つ分程度の大きさの箱を取り出し、マルスに渡す。


「?」


 マルスは不思議そうな顔をしながらもその箱を受け取り、開ける。

 箱の中には、黒い液体のようなものが入った瓶らしきものがびっしりと詰められていた。


「なにこれ?」


 マルスが間抜けな声で問いかける。


「お前を正式に駒として認めてやる。だから――こっからは別行動だ」


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