遊び心
「っ……なんでそれを知って」
「道理で最初から突っ込んでこなかったわけだ。脚力や腕力がなくなったら詰み、勝ち目がなくなるからなぁ。まぁもう詰んでるわけだが」
「くそがっ……」
オーガは忌々しそうにクシアをにらみつける。その体は既に脚力と腕力を失っており、オーガは何もすることができなかった。
「一方、俺の闇は体を切断されても全て元に戻せるんだ。何回も見てきただろ? そして、戻せるのは俺の体に限定しない――お前の体も、都合よく戻せるんだ」
そのセリフの途中で、段々とクシアの体が黒い泥のように変化していき、その形を失っていく。それと同時に、段々同じセリフが前の方からも聞こえてくる。オーガがその異変に気付き、再び顔を前の方に向けると、いつのまにかそこで膝を曲げて座りこむクシアの姿があった。
「マジでどういうつもりなんや」
自分の体以外にも元に戻せるとはいえ、なんで自分の体を元に戻したのか。
オーガには分からなかった。
もっとも、この後すぐに嫌でも理解することになるのだが。
「どうするつもりかって、最初に言っただろ?」
目の前にいるクシアはそう言いながら、水鉄砲のような闇をオーガに向けて放出する。
その闇はオーガの体に触れて一瞬とどまり――
「テメェは簡単には殺さないってな」
――オーガの腕を水風船のように爆発させた。