魂
彼がなぜ、あのような異形の姿となってしまったのかは分からない。だが、一つだけ断言できることがある。
彼は被害者だということ。
幼いうちから両親を亡くし、いたずらな運命と一部の悪意に弄ばれた結果、どうすることもできないまま歪んでしまった子供。
それが、彼だ。
私は――――彼が村を追放されたあの日からずっと、後悔し続けている。
あのとき、私が神官規則を無視してでも子供たちを止めていれば、あんな結果にはならなかった。
私は踏み込めなかったのだ。自分の可愛さに負けて、子供を守る選択を取ることができなかった。
今、彼は村人たちを皆殺しにしようとしている。
でも、彼は元々そんな人間ではなかったことを、私は知っている。
彼はまだ幼かっただけで、運命に弄ばれた結果歪んでしまった被害者だったことを、知っている。
神官規則には、「管轄下の人間に危害を加えようとする者が現れた場合、国の許可を待たず被害が出る前に殺すこと」という定めがある。
だがもう、そんなこと、知ったことか。
神官規則なんか、関係ない。
私は、同じ過ちを繰り返さない。
子供が間違った道を進もうとしているのならば、それを矯正し導くことが大人である私の役目だ。
それより大切なことなど存在しないのだから。
君も含めて、もう誰も死なせない。
意地でも君を行動不能にして――――真っ当な人間に戻してみせる。




