自由工作
「まぁ、いいや。それじゃ行ってくるね」
子供はニコニコとした表情で手を振りながら、村の方へと歩いていく。
クシアはてきとうに手を振り返しながら、子供の背中を見送る。
「――――さて」
ある程度子供の姿が離れたところで、クシアは地面にゆっくりと座り込む。
「俺は俺のほうで、色々試してみるか」
そして、素手で地面を抉っては少量の土を拾い上げ、その土に自身の闇を流し込んで変形させる。土クズだったそれは、たちまちガラス製のような瓶の形へと変形した。瓶の形をしているとはいっても、豆粒くらいの大きさしかないが。
(やっぱり、俺がイメージできるものだったら好きなように変形できるみてぇだな。だが、流石にイメージ先に合うだけの質量は必要らしい)
クシアはいつかの、人間を異形の化け物に変えた時の感覚を思い出す。
(人間を大きなムカデみたいにしたことがあったが、アレは体表だけ固く、それ以外を柔らかく、内臓はほとんどない……そんな状態をイメージして作り出したものだ。あらゆるものを変形することはできても、人を人じゃない姿にするのは楽じゃねぇ。人から離れた姿にしようとするほど難しくなる。人間を変形するなら、改造人間を作る方が楽なくらいだ。だが……)
クシアはもう一度、手のひらの上にある小さな瓶に目をやる。
クシアには、土を瓶のような簡単なものに変形するだけのことが、人間を異形の化け物にすることよりもよほど難しいと感じていた。
(人間の時とは違って、随分と形を変えにくい。なんでだろうな? この辺は直感とは違って面白れぇが……流石に不便だ)
クシアは胸元の闇からいつ拾ったかも覚えていないような人骨を取り出し、それを『超人』で強化した手によって粉々に砕いた後、その大部分をそのへんに振りまくように捨てる。
先程掴んだ砂と同じくらいの量になった骨粉を、先程と同じように闇で変形させると――――それは、中指くらいの大きさがあるガラス瓶に変形した。
「こりゃいいや。骨ならたくさんあるし、こっちで作るか」
クシアは胸元の闇から大量の人骨をばらばらと落として、なにかをし始めた――




