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千断


 一瞬でクシアの目前にまで迫ったオーガは、体を超高速で動かしてクシアの体を千断していく。顔を、腕を、指を、胴体を、足を、粘土を切るかのように細切れに切り裂いていく。


 その経過時間にして、ほんの一秒にも満たない出来事。


 文字通りクシアの体がバラバラになり、真っ黒な液体のようなものと一緒にあちこちへと飛び散っていく。


 何もさせなかった。間違いなくバラバラにしてみせた。


「……これで終わりや。せいぜい地獄で後悔し――」


 オーガは疑いようのない勝利を確信していた。


 だが。


「――まさか、この一瞬で忘れたのか?」


 背後から聞こえてくる、際限なく強化されたオーガの聴覚が捉えたのは……まぎれもなくクシアそのものの声だ。


 オーガの超人的な反射速度よりも早く、オーガが自身の後ろに立っていると認識するよりも早く――


「俺の闇の方が、アンタの自己治癒能力よりも上回ってたんだぜ?」


 ――オーガの腕と足が、崩した積み木のようにバラバラと千切れた。


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