雑魚
女は苛立ちを隠せていない表情をしつつも俺の言葉に黙って従い、銀色の槍を構える。
「…あぁ、それでいい」
俺は小さく呟きながら、漆黒の槍を構えた。
両者の間に沈黙が流れる。だが――その静寂の時間はほんの一瞬だけだった。
「っ!」
先に動いたのは俺の方だ。『柔鉄』を使って槍を盾に変形することで相手の視界を遮った。
だが、相手も反応が早い。銀色の槍で盾状の闇を一直線に貫いてくる。
「――つくづく、テメェは」
「なっ……!?」
だが、その盾はおとりだ。盾に変形したときにはすでに柔鉄を手から離し、その盾で作った死角から距離を詰めていたのだ。
盾が貫かれたことを確認した俺は即座に盾を再構築し、貫かれた穴を塞ぐことによって――女は自身の柔鉄を、すぐには動かせなくなる。
「くだらん誘いに引っかかる」
その一瞬の隙を突いて女の顎に右の拳をぶつけて女をひるませたのち、首元を掴んでその体を放り投げる。そして、盾にしていた柔鉄を解除した後すぐに柔鉄を再起動し、再び漆黒の槍を作り直す。
「やっぱお前は雑魚だわ」
俺はそう言いながら、女に漆黒の槍を勢いよくぶつけ――その体を吹っ飛ばした。
この程度の相手なら、柔鉄だけで十分だ。




