夢 その六
おどろおどろしい大きな建物の扉を勢いよく蹴り開け、その中へと飛び込む。ここのカギが開けっ放しになっていることは既に調査済みだ。俺はすぐに扉を閉めてカギをかける。
「――msucy、sury、sewbpmsjsbojsurywuyrsxp!?」
「si、siydunsayjs!?」
「……nii、pibigsusnwfs」
「uobisrdyjs?」
「uo。sbpmsjsbujsurysbmfs、jiyrywpurwnidubi」
扉越しから聞こえてくる複数の声は、動揺しているかのような声から始まり、次第に諦めを感じ取れるような声色へと変わっていく。
俺は目についた階段を駆け上がり、視界に映った窓のようなところのそばまで寄って外の様子を覗き込む。そこからは、さっきまで俺を追いかけていた連中が背を向けて去っていく姿が見えた。
(……やっぱりな。街の連中がやけにここに近寄らねぇと思ってたが、どうやらここはいわくつきの建物らしい。それもとびっきりの、な)
街の連中はこの建物に近寄らないどころか、この建物の周辺すら恐れていることを知っていた。この建物の周辺には他の建物が建ってすらいない。
ポツンと建っていて、人の気配がまるでない異質なこの場所に、俺が目を付けない理由がなかった。
「……とはいえ、もう盗みはバレちったみてぇだし……これからは夜の警備も強化されるだろうな。となると盗みもできなく…いやそれ以前に、ここじゃ食べ物も買えなくなるかな。さぁてこれからどうする――」
そう独り言しながら後ろを振り返ると――至近距離に、真っ黒な化け物の姿があった。




