猛攻
次の瞬間、物凄い豪風と共に男の姿がその場から消える。
クシアはあきれた様子で全身から闇を噴出させる。闇に触れた人間は、超法則などで防御しない限り消滅してしまう。つまり人間にとってこの闇は、触るだけで死に至る猛毒そのものというわけだ。クシアに対し近距離戦を仕掛けることは、身を守る超法則がない限り自殺行為に等しい。
だが、男はクシアを直接狙っていたわけではなかった。クシアの周りを超高速で移動し、四方向からほぼ同時に大きな瓦礫を手に掴んで飛ばしてみせたのだ。
さらにそれとほとんど同時に、男は町の外れにあった大きな塔を、まるで根っこからそのまま引き抜いたかのように片手に掴んで、クシアの真上からそれを投げ落としたのである。
四つの大き目の瓦礫とほとんどそのままの姿の塔が前後左右と上から一斉に襲い掛かる。その衝撃と男の常軌を逸脱した移動速度により、耳を破壊しかねない轟音が鳴り響き、すさまじい暴風が吹き荒れる。普通の人間だったら、とても耐えられる攻撃ではない。
……普通の人間であれば、の話だが。
「ハハハっ、おもしれぇ」
闇を身に纏っていたクシアの体には、傷一つついていなかった。