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死角


「そろそろ決めます」


 華は小さくそう呟くと、さっきまでよりさらに速くクシアとの距離を詰めてくる。


「…やっぱり、まだ手ェ抜いてたんだな!」


 クシアは太い闇を放出するのを止めて、今度は津波のような闇を放出した。その闇は彼女の全身を容赦なく覆いつくそうとする。


 だが、彼女は白い斬撃を連射し、闇の津波を部分的に切り裂くことで死角を作りながら移動し、クシアの視界に捉えられることがないまま背後へと回り込む。


「しまっ――」


 背後に回られることは想定外だったといわんばかりに焦りだしたクシアが、慌てて華に向かって闇を放出しようとするが。


「遅い!」


 華は目にもとまらぬ速さで剣をふるい、その斬撃でクシアの体をサイコロステーキのように細切れに切り裂いて吹き飛ばした。


 バラバラに吹き飛ばされたクシアの体はチリになって空中で消えていく。それと同時にクシアが放出していた津波のような闇も、ゆっくりと消滅し始めた。


(勝った……のか?)


 闇は消えていっている。目の前のクシアは確かにこの手で切り刻み、目の前で消滅していくところを確認した。なのに――華の感触から違和感が消えない。


(……!!)


 しばらくして、華は闇が消えていく中で背後に残り続けている強い気配に気づく。


「死角をつくって動くのは、お前だけじゃねぇってことさ」


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