本当の闘いの始まり
華の目の前で、龍の首が宙を舞う。
「父、上……?」
龍の背後に立っていたのは、竹の刀を手にしたクシアの姿だった。
「いやぁ~~お疲れ。まさかここまでうまくやってくれるなんてなァ、感謝するぜ」
クシアはへらへらと笑いながら、竹の刀をいらなくなったゴミのように放り捨てる。
(え……まさか、アレが竹君が言っていた侵入者? でも侵入者なら竹君が――)
唐突すぎる出来事を前にして、逆に冷静になった華はある違和感に気付く。
あの時、竹は『侵入者を手にかけたところを龍に誤解されて殺されかけた』と言った。そして龍は、死ぬ間際に『竹君を殺そうとした』と言っていた。
竹とは幼いころからの付き合いだ。だからこそ華は、彼が特異体質も超法則も持っていないことをよく知っていた。
そんな竹が、特異体質も超法則も持っている龍の殺意から逃げ切っている――?
「おーい、聞いてるか? ……まぁいい。どうせお前も殺すしな」
「……あなた、竹君に何をしたんですか」
ある可能性に気付き始めた華の声が一段低くなる。
それは、今となってはどうして考えなかったのか不思議でならない、超法則をもってすれば出来てもおかしくないある可能性。
「ん? ただのバカだと思ってたが、変なところで勘がいいな? いいぜ、教えてやるよ――」
そう言ってクシアは胸元の黒源から、バラバラになった竹の死体をボトボトと華の目の前に落とす。
「お前が言う竹君ってヤツも、お前の家族も、龍の野郎も――――全員、俺が殺した」
愉悦に満ちたその声と同時に、その部屋は強い風に押し出されるようにして破壊された。




