龍を倒せうるのは
華は膨大な殺意を込めて、それでいて卓越した剣術と超人的な身体能力をもって、龍を殺そうと剣をふるい続ける。
(っ、ダメだ……今の華は何を言っても聞かない!)
こうなると説得が通じないことを理解していた龍は、華に反撃することが出来ないまま攻撃を躱し続けることしかできなかった。
(だが…華は私と同じ体質を持っている! 手加減ができる相手ではない!!)
龍やその血を引く者、及び龍の親戚一族は、体のつくりからして普通の人と異なる。
通常の人類と比較して筋肉と神経が異常なまでに発達し、常人ではどんなに鍛えたとしてもあり得ない身体能力を発揮する。特異体質――というよりも、人種からして異なるといったほうが意味合い的には近い。
つまり、龍や華をはじめ、近からずとも遠からずとも彼らの血を引く者は、超法則を使わずに超人的な動きをすることができるということだ。
さらに言えば、華は龍の一人娘でもあり、武人である龍の教えの元で育ってきた娘でもある。父の元で武芸も習っていた彼女には卓越した剣術も備わっており、並大抵の一般人ではまず勝つことができない。
超人的な身体能力と武道の心得を持つ華は、超法則を使えない前提において――
(仕方がない。出来ればやりたくなかったが……一度華を、動けなくする)
――唯一、龍を殺せうる存在でもあったのだ。




