復讐
龍は七大司祭としての戦いの経験があってか、華のその姿を見ただけで気付いてしまった。華が本気で、自身を殺そうとしたことに。
「華…一体、何を……!?」
龍からしてみれば、自身の娘がいきなり自分を殺そうとしたのだ。動揺するのも無理ないだろう。
だが、華の姿、声、表情――そのすべてが鬼迫に満ちている。尋常ではない。
「父上。一つだけ、確認させてください……何故竹君を殺そうとしたのですか」
「…な、何故って」
龍からすれば、そんなの明白だ。
「何故って、そんなの決まっているだろう! 塔内の人間を皆殺しにしたからだ! 華のお母さんも殺された! 俺も殺されかけたんだぞ!!」
龍は娘に向かって感情的に叫ぶ。
「…………殺されかけた、だと?」
華の脳裏によぎったのは、彼が死ぬ間際に放ったあの言葉。
『忘れ物を思い出して、塔に戻ったとき……侵入者と遭遇したんだ。僕が来た頃には、ソイツに……ソイツに、皆、殺されていた』
『それが許せなくて、僕は……その侵入者を手にかけてしまったんだ……きっと、その罰が当たったんだろう……その直後、君の父親に見られて……誤解を解けなかった』
「竹君が殺したのは塔内の侵入者だけだ!! 家族の仇をとってくれた彼を手にかけただけじゃなく、殺されかけただと!! そんなの、父上が勘違いして殺そうとしたからだろうが!!!」
華は今までにないくらい激しく感情を爆発させる。
「は……!? は、華、お前何を言って……!?」
龍は真っ赤な刀を片手に部屋にいた竹の姿を目撃しており、竹に殺されそうになったことも疑いようのない事実。龍からすれば、今の華の言葉は意味不明なものでしかない。
「もういい……もういい! 父上が罪を認めないというのなら……」
「待て華、俺の話を――っ!?」
龍は殺意が込められた横なぎの一撃を咄嗟に躱す。
「……私が父上を殺す。今度は私が、竹君の仇をとってやる」




