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許すことはできない
(こりゃどういうことだ……?)
想定外の事態を前にして、俺は足を止めて意識をそちらに向けてしまった。
「おっと」
その隙をつくように龍が鳩尾を狙って拳をふるうが、俺はそれを間一髪のところでかわす。
その直後に体を撫でた風の強さからして……さっきのは当たっただけで間違いなく死ぬ重さがある。…殺す気できているな。
「……君にどんな事情があるのかは分からない……だけど」
俺に向けて戦う構えを見せた龍の表情からは、悲しみと怒りが混じっているかのような感じがする。
だが、それ以上に……
「君を許すことは断じてできない。七大司祭としても、国の長としても――そして、あの子の父親としても」
それ以上に強く感じ取れたのは、一個人に向けられるにはあまりにも大きすぎる殺意だった。




